営業課所属の人見知りで根暗なOLと非凡のサラリーマンの話【前編】
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カタカタカタカタ
「………ふぅ……あとちょっと……」
「あの…」
「ひょえぇぇ」
情けない声を上げて、ハヅキがバッと振り向くとアオキが後ろに立っていた。
その声に申し訳なそうな顔をしながら、アオキは謝る。
「すみません、驚かすつもりはなかったんですが…」
「わ、私の方、こそ、すみません…て、てっきりもう…上がったのかと思って……」
「いえ、…あの、これ良かったら」
そう言ってデスクに置かれたのはペットボトルのお茶だった。
えっと……ときょとんとしながら、お茶とアオキを交互に見る。
(もしかして差し入れと言うやつ……?)
そんなものを貰ったことがなかったため、嬉しく思いつつも
いつものように緊張でなかなか声が出ない。
「あ、えっと、(お、お礼……早く、い、言わないと)…その、…お茶…」
「……もしかして、お茶は苦手でしたか?」
「え?」
「でしたら余計なことをしました。これは自分で飲んで処理しますんで気にしないでください。」
「ぇ、あ、あのちがっ」
何を勘違いしたのか、お茶が苦手だと判断されてしまい
折角、差し出されたペットボトルはアオキの手の中に戻る。
(私のば、馬鹿、早くお礼言わないから…)
また相手に気を使わせたと罪悪感を抱き咄嗟にお茶を握っているアオキの手を掴んでしまった。
握られたアオキはもちろん、何故か掴んだ方のハヅキもびっくりしている。
「あの…ハヅキさん?」
「あっ、え、と…う、…き、嫌いじゃないで、す…い、頂いて…いいですか?」
「…えぇ、どうぞ」
「あ、ありがとう、ございます」
なんだか仕事の続きをする空気ではなくなったので、少しだけ休憩をすることに。
「す、すみません…私、人と喋るのが苦手で…ちゃんと、話すのに慣れるまで、時間がかかっちゃうんです…」
「そうでしたか。」
休憩所に移動して、2人並んで飲み物を飲む。
面と向かって話すのはまだ緊張するので、ハヅキは貰ったお茶に視線を向けながら自分のことについて語っていく。
それに対して深堀してくる訳でもないアオキの対応に、少し安心しながらいつもより少しだけ長く人と話せたことを喜んだ。
「へ、変ですよね…こんな奴が、え、営業課に配属されるなんて…」
「まぁ上司の考えることは、我々には理解できませんから……ただ」
「…?」
「貴女の作る書類はとても出来が良いです。」
「え…」
「内容は綺麗に纏まっていて分かりやすいですし、期日内にちゃんと提出もされていますね。いつも助かってます。」
ありがとうございます。と続いた言葉に心がふわふわした。顔が熱くなるのを感じながら、「ど、どういたし…まして」と俯きながら返した。
今まで周りからは、してもらって当たり前といった態度がハヅキにとって通常だった為
アオキから言われたことは新鮮で、とても嬉しかった。
「そういえば、さっき作っていた書類を覗いてしまったのですが
あれはあなたの担当ではなかったですよね?」
「え、あ、そ、その……えっと…」
「…まぁ、言わずとも何となく分かります…貴女も大変ですね。」
「は、はい」
「……大丈夫ですよ」
「……?」
「いつかその人達には、それ相応のペナルティが与えられます。」
(だから貴女は気にせずいつも通り過ごしてください。)
そう言ったアオキの言葉の意味を知るのは数日後だった。