営業課所属の人見知りで根暗なOLと非凡のサラリーマンの話【前編】
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ポケモンリーグ営業課。
コール音やキーボード音が忙しなく鳴り響くこの場所で、隅の席に座り黙々と書類を作成するOLが1人いた。
前髪も後ろ髪も伸ばしきっていて、度のキツイ眼鏡をかけいるせいで目が小さく見える。服装もオフィスカジュアルだが黒白の地味な色でとても暗い印象を受ける。
そんな彼女の前にドサッと書類の束が置かれる。
ビクッとして見上げると、そこには真反対の陽キャ女子が立っていた。
「ハヅキさぁん、この書類頼んでもいい〜?これ今日中なんだけど、あたしこの後だぁいじな用事があってぇ〜残業出来ないのぉ。ね、いいわよねぇ?」
「……え、えっと………は、はい、分かりました……」
「ほんとぉ?!ありがとう〜!!はづきさんってぇ、いつも優しいよねぇ〜頼りになるぅ」
じゃあお願いねぇ〜と語尾を伸ばして鼻歌交じりに、くるくると巻いた髪を揺らして女は去っていった。
それを見送って小さいため息が出た。
(…大事な用事って……ただの合コンでしょ………それに優しいんじゃなくて、私は都合のいい女なんでしょ?知ってるんだから……)
気の弱い自分を下に見て、仕事を押し付けてくる人は何人もいる。
残業したくない時などはあいつに頼めば引き受けてくれると、営業課の何人かには便利屋扱いされているのも知っている。
(でも、分かってても面と向かって断ることも出来ない私が一番ダメなんだよね…)
昔から、ハヅキは自分から意見をしたり、頼まれたことを断ることが苦手だった。
そのせいで今までも周りからは良いようにこき使われてきた。
そして、現在何の因果か営業の仕事に就いてしまっている。
人見知りで緊張しやすく、コミュケーション能力が皆無な自分がなぜここに配属されたのか理解できなかったが、そこは配慮されたのか外の営業周りではなくリーグ内での書類作成やメール対応などの内容がメインだった為少しほっとした。
それでも周りとの意思疎通は大事なのだが、そう簡単に人の性格は変わらない。
ハヅキは休憩の際も殆ど1人で過ごし、プライベートな話ができるような友人は1人もいなかった。
たまに、話を振られることもあるが気の利いたことが言えず、しかも緊張のあまり声が小さく吃ってしまって相手が聞きとれずにお互い気まずくなり、そこで会話が終了してしまうことがほとんどだった。
(折角話しかけてもらってるのに…会話が下手でごめんなさい…)
としょんぼりしながら、黙々とお弁当を食べる毎日だった。
時間は進み定時になり、それぞれ帰る準備をして席を立つ。
ハヅキに仕事を押し付けた女も時間ぴったりになると真っ先に部署から出ていってしまった。
他の社員が帰る中ハヅキは黙々とパソコンと向き合い、押し付けられた残りの仕事を片付けていく。
そして、1人になってしばらく経った時、
扉が開く音がし振り向くと、そこには先輩のアオキの姿が。
「あ、アオキさん……お、疲れ様です。外回り、からの帰りですか?」
「お疲れ様です。はい、書類だけまとめようと思って。ハヅキさんは、残業ですか?」
「あ、えっと、はい…そうです…」
「そうですか…」
「…………」
「…………」
お互い喋る方では無い為、会話が続かず
無言になる。
(人のこと言えないけどアオキさんも物静かだよね…ちょっとシンパシー感じるというか)
そんな事を思いつつ、チラとアオキを見る。
営業の仕事をしながらジムリーダーと四天王を兼業している非凡サラリーマン。
本人は至って当たり前のようにこなしているけど、普通の人なら裸足で逃げ出すくらいの激務を涼しい顔をして行っているのだから侮れない。
ただの根暗な自分とは似て非なる人だ。
(って、そんなこと考えてないで手を動かさないと…!)
ハッとなりパソコンと向き合いまた集中して、仕事をこなし始めるハヅキ。
それを横目に見つつ、アオキは静かに部屋から出ていった。
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