街角ジェントルさんに一目惚れした話

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『皆の者〜!おはこんハロチャオ〜!!ドンナモンジャTVの時っ間っだぞ〜!』

「あっ、始まったー!」

ナンジャモちゃんの生配信が始まり、パソコンの画面を見ながら椅子に座った。
ライブストリーマーとジムリーダーを兼業しているナンジャモちゃんのファンの私は、配信がある日は欠かさず視聴している。
今日はジムテストの日らしく、1人のアカデミーの子が配信画面に映っていた。
ジムテストも配信のネタにするナンジャモちゃんは流石だとしか言えない。
カメラの位置に気づかずキョロキョロしている少年が可愛らしいと思いつつ、ナンジャモちゃんの説明に耳を傾ける。

『というわけで、街角ジェントルさん!いらっしゃーい!』

その呼び声と共にカメラにINしてきた人物に私は目が離せなくなってしまった。

(か、かっこいい……素敵なおじ様だ…!!)

何を隠そう私は年上のおじ様が好みのタイプなのだ。しかもあぁいう紳士のような人が特にどストライク。

『え!校長先生?!』

『おや、ハルトさん今回のジムテスト参加者は貴方でしたか。』

(アカデミーの先生…しかも校長先生なんだぁ…絵に描いたようなジェントルマン……はぁ〜話し方も優しそうで素敵……)

うっとりしながら街角ジェントルさんを見つめていたら、ジムテストの説明が終わったようでジェントルさんは綺麗なフォームで画面外へ走り抜けていった。



その姿を見て完全に私の心は射抜かれた。




「え?なにあの走り方…可愛すぎでは………??仕草とのギャップありすぎじゃない?????
えっ、好き………生であの人を見たい………遠目でもいいからあのおじ様に会いたい……」
はやる気持ちを抑えられずフラフラ立ち上がり、空飛ぶタクシーを呼んだ。



急がないとジムテストが終わってしまうと思い、タクシーのおじさんに「死なない程度に飛ばしてください!!!!!」と必死の形相で言っておじさんをビビらせてしまったのは、申し訳ないが希望通り飛ばしてくれたおかげで間に合ったみたいだ。
スマホロトムで配信を見てみると、街角ジェントルさんを探すジムテストは最終段階に突入したようで。バトルコートの1部分にフォーカスを当てて、挑戦者に問題を出しているところだった。

(ま、間に合った!!!とりあえず中心エリアへ!!!)

しかし、慌ててスマホ画面を見ながら走っていた為通行人と思いっきりぶつかってしまった。
ドンッ!と勢いよく音がして尻もちを着く。
「いっ!!ご、ごめんなさい!」

「つっ!ったく痛てぇな!!よそ見しながら走んじゃねぇよ!!!」

「ひぇ…!す、すみませんでした……」

ちっ!と舌打ちをしてその人はぶつくさ言いながら、荒々しく足音を鳴らして去っていった。あまりの剣幕に街角ジェントルさんに会いたいという気持ちが萎み、頭が冷静になっていく。
スマホを見るといつの間にかジムテストは終了し、ナンジャモちゃんとのバトルの為に準備中の文字が画面を流れていた。

「……………」
(何やってるんだろ私…恥ずかしい…
いい年こいて、はしゃいじゃったりして…)

はぁとため息をついて、ずっと座りっぱなしでいる訳もいかないし立ち上がろうとしたら

ズキッ

「うっ!痛ァ…なに?」
手を地面について力を込めた途端、右手に激痛が走った。
よく見ると手首が赤く腫れている。さっき転んだ時に変に手を着いてしまったのだろうか。不注意でぶつかって怖い人には怒鳴られるし、怪我するし、街角ジェントルさんにも会えなかった…
そもそももし会えたところで私はどうしたかったんだろうか?
一方的に会って話しかけたところで私はアカデミーの関係者でもなんでもない、ただの一般人なのに。
常識的に考えて迷惑にしかならない、こんなのナンジャモちゃんがよく言ってる厄介リスナーと一緒だ…

自分が情けなくなってきて、だんだん涙が溢れてきた。視界がぼやけて何も見えなくなってきた時に、
頭の上から声が降ってきた。

「大丈夫ですか?」

「うっ……?」


顔を上げるが涙のせいで上手く焦点が合わず、相手の顔がよく分からないが
この声はさっき聞いていたから間違えるはずがない。

「ま、街角ジェントルさん?」

「おや、もしや配信を観られていた方ですか?」

「ぐすっ、は、はい」
泣き顔を見られたくなくて、慌てて目元を拭うがジェントルさんはそれを静止する。

「いけません、擦ったら目を悪くしてしまいます。こちらを使ってください。」
差し出されたのはシルク生地のハンカチだった。断るのも申し訳ないので、それを受け取り目元に当てて涙を拭く。

「…すみません、ありがとうございます。」

「いえいえ、とりあえずここは人通りが多いので移動しましょう。立てますか?」

「あ、それが…」

「…!…ちょっと失礼します。」

右手首が腫れていることに気づいたジェントルさんは、優しく患部を触り怪我の程度を診る。

「これは酷く捻ったようですね、私は医者ではないので後で病院に行ってきちんと診てもらった方がいいと思います。」

「そうですか…」

「とにかく応急処置をしましょう、少し貴女の体に触りますがよろしいですか?」

そういったジェントルさんは、私の肩と背中に手を回して私が立ち上がりやすいように支えてくれた。

こんな状況じゃなかったら、別の意味で泣いて喜んでたところだったのに….


近くのベンチまで誘導してくれた上に、冷えたミネラルウォーターを買ってきてハンカチをそれで浸し、腫れた手首に当ててくれた。

「痛くありませんか?」

「あ、はい、大丈夫です。」

「すみません、これくらいしか出来なくて。」

「そんな!悪いのは転んだ私なんですから…むしろここまでしてくださってありがとうございます。優しいんですね…」

「…女性が座り込んでいたら誰だって、心配しますよ」

そんなことない、だってジェントルさんが声をかけてくれるまで誰も私に話しかけてこなかった。
どちらかと言うと、男の人とのやり取りを遠巻きに見ていた人が多かったのもあって
面倒事に巻き込まれたくないと言うふうに、素通りをしていく人が大半だった。

根から親切で優しい人なんだろうな…
やだ、落ち着いてたのにまたドキドキしてきちゃった……。

「そういえば……怪我の理由を聞いていませんでした。」

「えっ…と、それは………」

「言いにくければ、深くは聞きませんよ」

「…………スマホロトムを見ながら走っていたら、人とぶつかりまして……」

我ながら恥ずかしい理由だ。
話を聞いたジェントルさんも少し怪訝な顔をしている。

「それは……感心しませんね。今回は平地で転んだからまだ良かったものの、これが階段や段差がある場所だったら怪我だけでは済まなかったと思います。」

「はい…おっしゃる通りです。」

「これからはよそ見をせずちゃんと前を見て歩きましょうね」

「……はい」

肩書きが校長先生と言うだけあって、妙に言葉に説得力がある。
しょぼんとした私の顔を見てはっとした顔になるジェントルさん

「あ、すみません。つい生徒にするような物言いになってしまいました。」

「いえ、実際問題私が悪いですし…」

「とにかくながらスマホは危ないですからね、やめましょう。」

「はい…」

言い終わると、ジェントルさんがベンチから立ち上がり「では私はそろそろ失礼します。貴女はそのまま病院へ行ってくださいね。」と言って歩き始める。
(せ、せっかく会えたのに、このまま別れたらもう一生会えないかも……)

「あっ、あの!待ってください!!」

慌てて私も立ち上がり去ろうとする背中へ、声をかける。
ジェントルさんは振り返り、私の言葉を待っている。
「えっと……その……は、ハンカチ!!ありがとうございました!!!こ、今度洗ってお返ししますので…よ、良かったらお名前お聞きしてもいいですか?!」

緊張と不安で心臓がバクバクと脈打っている。顔も絶対赤いって分かるくらいには火照っているはず。
このチャンスを逃したくなくて、きっかけを作ろうとはしているけど
「気にしないでください、ハンカチは使い終わったら処分してくださって構わないので」とか言われたらそこでもう終わりだ。

ジェントルさんの顔が見れなくて俯いて、返事を待つ。しばらく間が空いてから、
「クラベルです。」

「えっ?」

「クラベル。私の名前です、もしよろしければあなたのお名前もお聞きしても?」

「あ、そ、そういえば名乗ってませんでしたね、失礼しました。私、ハヅキと言います。」

ハヅキさんですね」

ハヅキさん…ジェントルさん基クラベルさんの口から私の名前を発した時、ビリビリと電流が流れたような感覚に陥った。
一目見た時はナンジャモちゃんと同じく推しに対する感じの気持ちがあったのに、





私、クラベルさんのことを好きになってしまった。




「私アカデミーの校長なので、いつもはそこにいます。なので、もし尋ねられる際はアカデミーでお待ちしております。」

「あ、はい!あ、あとご都合の時間とか聞きたいので良かったら連絡先を教えてください。」
欲張って聞いてしまったが、それもそうですねと気にする様子もなくクラベルさんは自分のスマホロトムを出してくれて、すんなりと連絡先を交換してしまった。

「………(連絡先ゲットだぜ………)」

「では私はこれで。ハヅキさんお大事になさってくださいね。」

「あ……ありがとうございました!!」

優しく微笑んで、クラベルさんは去ってしまった。
その姿が見えなくなるまで私は見送り、再びベンチへ座り込んだ。
チラッと手首に巻いたままのハンカチを見つめながら、

「クラ、ベルさん………」と名前を呟いてからなんだか恥ずかしくなって、足をバタつかせながらしばらく悶えていた。




(この恋はいつか実るだろうか?)





【おまけ:ベンチでの会話】

「……もうひとつ聞いてもよろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ」

「私がジムテストのお手伝いをしている事を知っているということは、配信を見ながら走っていたということでいいんでしょうか?」

「えっ、あっ…はい」
(あなたの姿を見たくて配信見てましたなんて言えない…!)


「ナ、ナンジャモちゃんのファンでして…生配信でジムテストしてるのを見つけて駆けつけちゃいました。」

「それはそれは…熱心な追っかけさんなのですね」

「ん”っ!!!!」

ファンのことを追っかけさんって呼ぶの可愛すぎんか…????
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