それがいけなかった。
何故ならハヅキは惚れやすく、
相手の言動を自分の都合の良い形で解釈するという
恋愛でポンコツを通り越してバカになるという悪癖があったからだ。

「え、そ、それってデートのお誘いということですか？！！」

「ぇ？」

「アオキさんって見かけによらず積極的なんですね…でも、私そういうの嫌いじゃない…むしろ……好きかも♡」

「あ、いや、そういうつもりでは…」

「良いんですよ！誤魔化さなくても、貴方の言いたいことは分かってますから…私って罪な女だわぁ♡…バトルで魅了しちゃうなんて…」

「だから違うんですが……」

「これは重症だねぇ」とやり取りを見ていた苦笑いする女将さんの声が若干白目を向いているアオキの耳を通り過ぎていった。

結局食事はしたが、正直アオキはあの時程飯の味が分からなくなったことは無いと後に語った。
ハヅキのアオキへの質問攻めと自己紹介のマシンガントークは食事中尽きることなく繰り広げられて
（食べ方や所作はきちんとしていて下品ではないから尚更タチが悪い）
食事が終わってから、アオキがお会計をさりげなく支払った時も

「スマートなやり口……かっこいい……」
と褒め言葉なのか分からないことを並べて終始メロメロ状態であった。

1番困ったのはアオキが逃g…帰ろうとした時だ。連絡先を交換しましょうと来たものだからあしらうのが大変だった。
プライベートなことはちょっと…と言ってもお互いまだまだ知らないことだらけですからこれから沢山知っていきましょうね♡と返されて暖簾に腕押し。

適当な断りの言葉が見つからなくて、女将さんに助けてくれと目で訴える。
それに気づいた女将さんが、
「あんた、これが本当に恋愛感情かどうかわからないじゃない。次にまた偶然出会うことがあればその時にでも連絡先交換してもらったら？」とその場しのぎではあるがそんな感じで宥めてくれたおかげで

「た、確かに！！分かりました、アオキさん次に会えた時は教えてくださいね！私会えるのを楽しみにして、ジムチャレンジ頑張りますから！！」

では！と大きく手を振って宝食堂を飛び出して行った。
嵐が過ぎ去ったような静けさが漂う中、何とかなったとアオキは胸を撫で下ろした。
暫くはジムチャレンジ以外ではここに来られないなと思いつつも、これでとりあえずは大丈夫だと安心しする。

自分より強いジムリーダーはまだ沢山いるし、万が一リーグに挑戦することになっても
チリやポピーがいるしなんとかなるだろうと。


しかし、アオキは舐めていたのである。
この女のバトルの強さを。