序章『未来は知っている』
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結局、メタルスライムは物陰に隠れつつゆうしゃ の後を追うこととなった。幸い、朝が早いこともあり、人影はまばらで、見つかることなくゆうしゃ の家にまでたどり着くことが出来た。
……なんで、ついてきちゃったんだろう。スライムはゆうしゃ に見えないように溜息をついた。本当は逃げるタイミングはいくらでもあったのだが、あの無垢な顔で押されてしまうと、どうしても断ることが出来なかった。
「おかあさぁーん!! スライム飼って良いーー!!?」
この馬鹿ーーー!! と大声で叫びたくなった。扉を開けて開口一番にゆうしゃ は家の中に向かって叫んだ。
「やれやれ、朝っぱら何を言ってるんだろうねぇこの子は……」
家の奥から、恰幅の良い女性が出てくる。笑顔がやたらと印象的な、素朴ながらも清潔感のある、田舎の女性といった感じだ。ゆうしゃ の母、ペルラだった。ペルラは玄関に佇む一匹のスライムを見て目を丸くする。
「おやまぁ、珍しい色のスライムだねぇ」
「けいけんちだよ!」
「その話やめて!」
「まぁまぁ! 最近の魔物は口達者なんだねぇ」
「あのね、私にじゅもんを教えてくれる先生なんだよ! 飼っても良い!?」
「先生に対して飼うはないだろう、ゆうしゃ 」
「えっと、じゃあメタすけ」
「えぇー!! やだよそんなださい名前!!」
「いいじゃん、メタすけ。それかけいけんち」
「……メタすけでいいです」
「あっはっは! すっかり仲良しじゃないの! よしよし、それじゃあご飯にしよう。手を洗っておいで」
「あ、あの!!」
メタルスライム改め、メタすけはペルラに向かって叫ぶ。
「い、いいんですか! 僕、魔物なのに…!!」
「いいんだよぉ、スライムも犬も牛も変わらないって」
「い、いいのかなぁ……」
ペルラは魔物が民家の中にいるという異常事態に、本当に何も思っていないようであった。大きな身体をゆさゆさと揺らし、食事の準備を始める。採れたて野菜のサラダに、湯気の立つスープ。ゆうしゃ は何も言われていないが、自主的に食器の準備を始めている。親の教育がよく行き届いているようだ。
「おはよう、二人とも」
奥の部屋から、ペルラとよく似た体型の老人が出てくる。
「あっ、おじいちゃん、おはよう!」
ゆうしゃ はサラダの入ったボウルをテーブルにおいて、祖父に駆け寄る。
「おじいちゃん、メタルスライム飼って良い?」
「メタルスライムとな?」
老人は玄関から動けずにいる一匹のメタルスライムを見る。メタすけはぷにゃり、と身体を揺らした。老人は目を細め、頷いた。
「お前は色々なものを拾ってくるのぅ……毎日毎日、いつでも楽しませてくれるわい」
「メタすけ、ここ座って!」
ゆうしゃ は部屋の奥から椅子を持ってきてテーブルに並べた。メタすけの身体に合うように、クッションを重ねて椅子の高さを調節する。
「はい、どうぞ!」
にっこり笑って勧められては、断る事なんて出来なかった。メタすけは観念したように椅子に飛び上がり、食卓に着く。
「いただきます!」
「たんと召し上がれ、おかわりもあるからね」
ペルラはにこにこと笑う。分厚く切られたベーコンと、たっぷりの根菜が入ったスープ。誘惑には勝てず、メタすけは顔を埋めるようにしてスープを平らげるのだった。
▽