2章『脱獄ランデブー』
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階段を降りてしまえば、今までとはまったく異なる景色へと変わる。白い大理石ではなく、灰色の石を重ねて出来た壁と、暗く湿った空間を、頼りなく照らす松明。ゆうしゃは後ろ手に縛られ、押されるようにして歩く。周りは自分よりも背の高い、全身を甲冑で覆った男たちばかり。少しでも遅れようものならば、後ろから乱暴に突かれ、何度か転びそうになる。
やがて、鉄格子が並ぶ部屋へとたどり着く。その一番端の牢へと連れて行かれ、グレイグはゆうしゃの縄を外し、背中を押す。転ぶのはなんとか耐えるが、振り返る頃には牢の扉は閉められ、無情にも鍵がかかる音がする。
格子の向こうで、グレイグがゆうしゃを見下ろしていた。威圧感のある、鋭い眼差し。ゆうしゃはせめて負けないようにと、にらみ返す。
「イシの村か…。お前の言ったことが真実どうか、3日もすればわかるだろう。3日もすれば、探索へ向かったホメロスが戻ってくる。災いを呼ぶ悪魔の子よ。お前の命もそれまでと思うが良いだろう」
グレイグはそう言い放ち、牢を後にする。
「まって、村の人たちに何をするつもり!!」
ゆうしゃは手を伸ばして追い縋るが、牢の鉄格子に阻まれて手は届かない。声は届いているはずなのに、堅甲な背中は振り返るつもりなどないのだとわかった。
3日もすれば。グレイグはそう言っていたが、一体何をするつもりなのか。デルカダール王はゆうしゃを災いを呼ぶ者だと言った。何かの間違いだとしても、王の目は本気だった。であれば、【災いを呼ぶ者】を育てた村に、将軍を差し向けるなど……胸騒ぎがした。
急いで村へ、いや、村へ行けなくても、何かの手段で連絡を……。得たいの知れない恐怖に煽られ、無駄と解っても鉄格子を力一杯揺らす。もちろん、ゆうしゃの細い腕なんかでは鉄格子を曲げることも外すことも出来ない。
……何かないか。辺りを見回せば、用足しのためのものか、据えた臭いを放つ壺があった。普段なら絶対に触りたくないそれを、構わず大きな錠前目掛けて叩き付ける。しかし、薄い壺はすぐに割れて、破片がぱらぱらと床に落ちた。苦し紛れに手の中に残った残骸をぶつけても、錠前はびくともしない。
「おい、何してんだ?」
薄い闇の奥から声が聞こえた。どうやら向かいの牢にも人がいるらしい。だが、いまのゆうしゃには返事をする間さえ惜しかった。錠前を掴んで揺らす。もしかしたら何かの拍子で外れるかもしれない。
「落ち着きな。じたばたしてもどうにもならんぜ」
ガン!! 怒り、恐れ、焦り、色んな感情をない交ぜにして、ゆうしゃは拳を鉄格子にたたきつける。もちろん、そんなことで牢は破れるはずがない。
「やれやれ、騒々しいな。うるさいヤツが来たもんだ」
ゆうしゃはようやく、向かいの牢を見た。同じような鉄格子に阻まれた部屋の中、誰かがのんびりと座っていた。僅かな灯りしかないこの場所で、その姿をよく確認することは出来ないが。声の感じからすると男だ。
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