1章『その名は勇者』
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エマとゆうしゃ は誕生日が同じだ。正確には、ゆうしゃ は祖父に拾われた日なので、もしかすると違うのかも知れないが……二人は同じ日、同じタイミングで成人の儀式を迎えることになる。村の人たちは総出で二人を祝ってくれた。
「ゆうしゃ と孫娘のエマ……村で一番の悪ガキ……おほん、やんちゃ二人が無事にこの日を迎えられて何よりじゃ」
エマの祖父であり、イシの村の村長であるダンは感慨深げに溜息をついた。
「イシの村では16歳で成人と見なされる。しかし、儀式を果たすことが出来ねば一人前の大人とは認められぬ。何をせねばならぬかはわかるな?」
「はい、神の岩の頂上で祈りを捧げることです」
胸を張ってエマが答える。ダンは深く頷いた。
「そう。そして、頂上で何が見えたかわしに知らせるのじゃ。そこまでが成人の儀式じゃからな」
「ゆうしゃ 、いいかい、エマちゃんはあんたと違ってか弱いんだからね。あんたがしっかり守ってあげるんだよ」
そう言ったペルラの瞳には涙が浮かんでいた。涙もろいのは昔からだ。ゆうしゃ 苦笑した。
「わかってるよ、お母さん」
「……ゆうしゃ 、あんたが毎日、剣の修行に明け暮れてたのを見てきたよ。おじいちゃんが死んでも、あんたが剣を握らない日はなかった。この村を守ろうと必死にがんばってるあんたを見てきた。あんなに小さかったあんたが、こんなに立派に育って……」
それ以上は、嗚咽に阻まれて言えなかった。ゆうしゃ はペルラの背中を撫でた。ペルラはエプロンからハンカチを取り出し、涙を拭いた。
「泣いてる場合じゃないね。どうせお腹を空かせて帰ってくるだろう娘のために、美味しいシチューをたくさん作らないとね!」
ペルラは背中をさすっていたゆうしゃ の手をやんわり押し返し、逆にゆうしゃ の背を軽く叩いた。
「さぁ、行っておいで! みんなで待ってるからね!!」
にっこり笑った、母の顔。子供の頃と比べて、幾分皺が増えたようにも思う。祖父が死んで、女手ひとつでゆうしゃ を育ててくれた、大切な母。今まで自分を守り、育んでくれたこの村の人たちを、今度は自分が守る番だ。ゆうしゃ は腰に提げた剣に触れ、胸を張った。
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