春に其世を編む
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
四月。世界が新しく回転を始める季節。あるいは誰かを見送った後の哀愁の季節。空はまだ春の匂いに馴染みきっておらず、どこかに透明感を残していた。
桜は確かに咲いていたが、既に淡い花弁を絶え間なく散らしている。開花発表はとうに数週間ほど前の話である。風邪はまだ少しだけ冷たい。
帝光中学校。
その名は私立中の中でも有名校の一つとして知れ渡っていた。学業だけでなくバスケットボール強豪、進学実績、設備の充実――どの観点から見ても申し分のない学校だ。同じ学校になる兄は妹を置いてとうに仲の良い生徒と共に登校して行った。薄情である。
そして現在、真昼は校門の前に立っていた。新調された水色のカッターシャツの襟元がまだ少しだけ硬くて首がこそばい。鞄の中には入学式の案内と、部活動の見学希望調査票が入っている。
調査票の「希望部活」の欄にはまだ何も書いていなかった。
ここでは海の近くでもなく、潮騒も聞こえない。それでも悪くないかもしれない、と思った。新しい場所。新しい三年間。その全てが眩しく映ることを願っている。
校門をくぐる人波の中には色々な人物が居た。肌黒い少年が少女に背中を押されながら歩いていく、遠目ではなんだかよくわからん物をわざわざ手に持って歩いている者、成長が早いのか背が高い子、なんだか人に囲まれてる子……人間が沢山いた。何かを感じる気がして、思わず視線をあちこちに動かす。
それからその中に、ひとり……背は決して高くない。平均程度だろう。けれど周囲の空気だけが、その少年の輪郭に沿ってひと回り澄んでいるように見える。きちんと結ばれたネクタイ。視線は前を向いていて迷いがない。大人っぽい、というのがパッとした印象だった。
真昼が見ているのに気づいたわけでもないだろうにその少年は一瞬だけ、こちらに目を向けた。
凛とした瞳と、目が合った。
ほんの少しだけ会釈をした少年は静かに視線を戻すとまた前を見て歩いていった。
桜が一枚、真昼の肩に落ちた。
これから入学式が始まる。部活動の本格的な見学は明日以降。それまでに調査票の希望欄を埋めなければならなかった。
桜は確かに咲いていたが、既に淡い花弁を絶え間なく散らしている。開花発表はとうに数週間ほど前の話である。風邪はまだ少しだけ冷たい。
帝光中学校。
その名は私立中の中でも有名校の一つとして知れ渡っていた。学業だけでなくバスケットボール強豪、進学実績、設備の充実――どの観点から見ても申し分のない学校だ。同じ学校になる兄は妹を置いてとうに仲の良い生徒と共に登校して行った。薄情である。
そして現在、真昼は校門の前に立っていた。新調された水色のカッターシャツの襟元がまだ少しだけ硬くて首がこそばい。鞄の中には入学式の案内と、部活動の見学希望調査票が入っている。
調査票の「希望部活」の欄にはまだ何も書いていなかった。
ここでは海の近くでもなく、潮騒も聞こえない。それでも悪くないかもしれない、と思った。新しい場所。新しい三年間。その全てが眩しく映ることを願っている。
校門をくぐる人波の中には色々な人物が居た。肌黒い少年が少女に背中を押されながら歩いていく、遠目ではなんだかよくわからん物をわざわざ手に持って歩いている者、成長が早いのか背が高い子、なんだか人に囲まれてる子……人間が沢山いた。何かを感じる気がして、思わず視線をあちこちに動かす。
それからその中に、ひとり……背は決して高くない。平均程度だろう。けれど周囲の空気だけが、その少年の輪郭に沿ってひと回り澄んでいるように見える。きちんと結ばれたネクタイ。視線は前を向いていて迷いがない。大人っぽい、というのがパッとした印象だった。
真昼が見ているのに気づいたわけでもないだろうにその少年は一瞬だけ、こちらに目を向けた。
凛とした瞳と、目が合った。
ほんの少しだけ会釈をした少年は静かに視線を戻すとまた前を見て歩いていった。
桜が一枚、真昼の肩に落ちた。
これから入学式が始まる。部活動の本格的な見学は明日以降。それまでに調査票の希望欄を埋めなければならなかった。
1/4ページ