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第一章 力と宿命

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邪導師が現れたことを透視していた神。見る見るうちに世界を、命を奪う邪導師を野放しにできなかった。止めなければと思った。しかし神は命の灯が消えそうだった。力は無限にあるが衰退している命では到底邪導師を止めることができない。


神は賢者を呼び集めこう言った。

「今、邪導師という強大な力を持った者が世界を滅ぼそうと人々や生き物を根絶やしにしています。
私の力では到底あの闇を消すことができない。一億年生きた私はそろそろ命の灯火が消えてしまうのです。最後の願いです。あなたたちの力で邪導師を抑え、平和にして欲しい」

賢者達はそれに応じたかのようにその場から消え、光のように速く世界の中心に移動した。壊滅した世界は残酷な光景が広がっていた。

 理性を失い、争い続ける魔導師達。魔物と化した生物は魔導師達を苦しめていた。
 血は流れ、それでも狂ったように武器を持ち魔法を唱える。地には無情にも死体が転がり死の臭いが充満していた。賢者は力を使い魔導師、生物を正気に戻す。正気に戻った魔導師、生物は目に光を取り戻すと惨劇に愕然とした。目を疑うような変わり切った世界に、無残に横たわる友の死に。

 賢者達と邪導師との戦いが始まった。
 邪導師は凄まじい力を放ち賢者達を押していた。しかし神と同等に近い魔力を授けられた賢者は邪導師の猛攻に耐え、ひるむこともなく戦い続けた。強力な魔法が唱えられば相手もその上を行く魔法を放つ。武器を振るえば武器で攻め返す。長い時を経ても戦いの凄まじさは一層強くなる一方。

 時の流れが乱れ、時空が歪み、空気が震え。
 賢者と邪導師がぶつかり合うたび全世界に衝撃波が巡り、空は泣き、大地は奇声を上げるかのように地割れが無数に現れた。自然の命は尽き、大爆発が絶え間なく発生し、大波は脅威を示した。突如、七色の光と暗黒の光が衝突し大きな波動が世界を震え上がらせた。立ってはいられないほどの揺れに魔導師達は襲われ、空の彼方にいる賢者達を見守り続けた。

 嘘のような静けさを感じた。長年の壮絶な戦いは止み、暗黒の闇に覆われていた空は聖なる光が閃光のように地に差し込んでくる。そして輝く星粒が天から舞い始め無数の光が七つの惑星に降り始めた。見たこともない景色に魔導師達は呆然と空を仰ぐ。傷を負い倒れていた魔導師、消滅した魔導師、生物達が大地に姿を現した。数え切れないほどの命が復活する。

 皆歓喜に包まれた。戦いが終わったのだ。賢者が壮絶な戦いの末、見事邪導師を抑えることができたのだ。

 賢者達は戦いに敗れた邪導師を引き連れ、神の元へ戻った。神の目の前に着くと賢者達は目を見張った。神殿の奥に力無く横たわる神の姿。神は今、まさに命が尽きようとしていた。目をうっすら開くとすぅっと息を吐く。最後の力を振り絞り神は邪導師達の足元半径2mに封印の結界を張る。突然、邪導師は鬼の形相で叫び始めた。苦痛極まりない表情を浮かべ必死に結界を破ろうと叩く。暗黒の力を抑え永遠にダメージを与え続ける結界。

 最後のやるべきことを終えた神は静かに息を引き取り亡くなった。賢者も邪導師との戦いで深手を負い命が尽きようとしていた。賢者は惑星に戻ると壊滅した世界を改善した。賢者は世界に数多くいる王の中で七人を選び集めた。王達は賢者を目にしたのは初めてで神聖な姿に立ちすくんでいた。

 賢者は王達にこう語った。

「残念ながら邪導師はまだ生きています。今は結界で抑えていますが長い長い年を経てまた現れるでしょう。その時、私達はもうこの世から存在していません。邪導師を倒す宿命と私達の力を授けます。
 この力と宿命を授かるのはこれから生まれてくる純粋な心を持った者達です。私達の代わりに邪導師を倒してほしいのです。この宿命は残酷です。絶望さえ感じる程辛いでしょう。でも決して絶望で終わらず、必ず大きな巨万の幸せを得ます」

 賢者に重大な話を聞いて王達は酷く動揺した。

 邪導師が生きている、復活する。これから生まれてくる子供に宿命を授ける。賢者さえ倒すことができなかった邪導師を倒せることができるのか。

 無謀だとも思った。しかし平和が戻った訳ではない。真の平和を勝ち取るため邪導師を何とかしなければとも強く感じた。1人の王が「……分かりました。受け取ります」とはっきりと伝えた。

平和を未来の子供達に任せよう。そう願った。
賢者達は大きく頷くと王達に宿り姿を消した。
数年後、新しい神が生まれ、世界を統一した。魔導師達も神を歓迎し敬った。

世界は平和になり、幸せに暮らした』
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