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第一章 力と宿命

 奇声に近い悲鳴、悲痛な叫びが絶え間なく聞こえる。その合間から魔物の声が響き渡り街は悲惨な惨状に代わっていた。

 街の至る所には人型の魔物が蔓延り、戦える街の住民、そして精鋭部隊が応戦していた。部隊は広範囲の魔法を使いこれ以上街へ近寄らないように放っていたが無数の魔物が襲い掛かり徐々に押されていたのだ。

 街へ来る間も何回か魔物に遭遇したシルフィとウィルマ。彼女は得意の速攻で魔物を瞬殺し、シルフィも自ら前に出て魔物と戦い自信をつけてきた。危ない場面はウィルマが助け、とどめはシルフィにさせており上手く連携をし戦っていた。

 街に着いた途端、シルフィの目に飛び込んできたのは燃える火の海に包まれた街と不気味に笑う魔物。そして親玉であろう、街よりも大きい人型の魔物が斧を振り回し咆哮を上げた。衝撃派となった咆哮は街の窓ガラスを次々に割り始め住民達を吹き飛ばす。襲い来る衝撃波にウィルマはバリアーを張りシルフィを守る。

「大きい…」

 見たことが無いほどの大きさに唖然と口を開くシルフィ。その大きさから似合う斧の攻撃は凄まじく、あっと言う間に建物が皆粉砕していく。

 精鋭部隊は次々と周りの魔物や親玉を攻撃していくが親玉に関しては何のダメージも与えられていないよう。ウィルマはシルフィにバリアーを張り続けると親玉へと武器を構え走りだす。

 住民の間を縫うように走り抜けると、今まさに親玉が振り上げた斧が落とされる時彼女の薙刀と交じり合った。刃がぶつかる音が木霊する。親玉の動きを止めた姉に住民、精鋭部隊は驚いた声を上げている。勿論シルフィも。

 巨大な斧の刃を薙刀のみで受け止めているウィルマは魔力を使い押しのけた。バランスを崩した親玉はそのまま後ろへと倒れ込んだのだ。

「すごいウィル姉ちゃん!」

 シルフィは姉の雄姿に興奮した様子で褒める。住民も「すげぇえ!」「何だあいつ!」「たった一人で押したぞ!」と歓声を上げていた。精鋭部隊は目の前の光景に信じられないというように驚き「あ、後に続け―っ!」と再び攻撃を開始した。
 元々高い魔力を持ち武術の能力も長けてたウィルマだが皆がてこずっていた魔物をこれほどまでに簡単に倒すなんて、シルフィは心底姉を誇らしげに思えた。

 バランスを崩し倒れた親玉を見据えるソルフィアだが、何かに察したのか眉間に皺を寄せた。ゆっくりと起き上がる魔物からうっすらと立ち上る禍々しい紫のオーラ。そしてさっきとは違う親玉の空気に強く警戒する。親玉の変わりように気が付いた精鋭部隊、街の住民はどよめき始める。そしてその変化はウィルマにまで伝わったのだ。

(なに、この空気…)
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