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第一章 力と宿命

 街から少し離れた地に一件の家がある。そこから昼食の匂いがにじみ出ていた。シルフィとウィルマは対面に座り、食事を取っている。テーブルの上には姉よりも明らかに量が多いシルフィの食事が目立っていた。

「おいひー!」
「行儀悪い」

 頬張るシルフィは満面の笑みを浮かべる。それを一睨みするウィルマはピシャリと言い放つ。食べ終わってから話しなさいと注意するがシルフィは空返事で次々と口に運ぶ。

 妹は大食いだ。しかも体に入ったものは一体どこにあるのかと疑うくらい太らない。毎回の食事量は自分よりも量が多い。あっという間に食事を終えたシルフィは満足そうに「ごちそうさま!」と手を合わせた。

「そうだ、ミュリエル姉さんから手紙が来てるよ」
「え? お姉ちゃんから!?」

 テーブルを離れたウィルマは棚から一枚の封筒を持ってくる。満面の笑みを浮かべ嬉しそうな顔をするシルフィは今にも読みたそうに手を伸ばしていた。ウィルマはそんなはしゃぐ妹に「はいはい」と呆れ気味に渡すとシルフィは早々に封筒から手紙を取り出した。

『親愛なるウィルマ シルフィへ

 吹き抜ける風が心地良く、
 ふと故郷を思い出します。
 いかがお過ごしでしょうか?
 体調は崩されていませんか?
 こちらは新緑香る季節は終わり、少々日差しが温かくなり過ごしやすくなってきました
 わたしは転勤命令が下り、あちこちに移住しています。周囲の人達は変わっている人が多く笑顔が絶えません。時には危険な任務もありますが皆、協力し合い日々の仕事をこなしています』

「ふふ、お姉ちゃんからの手紙本当に久しぶりっ!」

 数年ぶりに来た長女ミュリエルの手紙にシルフィは含み笑いをする。

『わたしが故郷を離れてから十数年、ウィルマ。あなたには本当に迷惑をかけました。今日までシルフィを元気に、愛情込めて育ててくれてありがとう。
 そしてシルフィ。あなたが幼い頃、家を出てしまったのでわたしの事を覚えていないでしょうが、わたしはいつでもあなたの事を想っています
 
 今日は17歳の誕生日、おめでとう。いつも特別な日を一緒に迎えられなくてごめんなさい。あなたとってこの日からかけがえのない、宝物と思えるような事がたくさん起きるでしょう。
 忘れないで、いつも笑顔でいる事。そして時に思いが力に変わる事。わたしはずっとあなた達2人の事を遠い地から見守っています
 
 ミュリエルより』


手紙を読み終えたシルフィは丁寧に封筒に戻し大事そうに胸に抱える。

 シルフィにはウィルマの他に長女、ミュリエルがいる。シルフィがまだ生まれて間もない頃、ミュリエルは弱10歳にして相当強大な魔力を持っていた。その事からミュリエルは一族の特殊部隊に入ることになった。まだ小さかったシルフィは当然、ミュリエルの事を覚えていないが数年に一度、彼女から手紙が届き、繋がりを保っていた。
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