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第一章 力と宿命

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まだ何も存在していない命の話から始まった物語。

『漆黒に覆われた空間。幾千、幾億、幾兆。数え切れないほどの光り続けている恒星が散りばめられている宇宙に一つの星があった。青と緑のグラデーションが美しい惑星。見た目通りその惑星は青々しく存在する草花や樹木、自然に溢れ豊かな水に囲まれている。

 広大な緑のじゅうたんの草原、雄々しい鋼色の山脈が厳然として立ち並ぶ。山から流れた流水は長く大きな川を作りだし、下方にはあまねく海を生み出している。風は透き通り常に新鮮な空気が漂う。灰色の雲が空に無情に乗り、冷たい雨を降らす。けれども雲一つ無い青空が広がり日差しを照りつける。また雷雨を呼び、激しい稲妻を打ち落とし自然の猛威が沸き起こる。常に変化を見せる星。

 草原を渡り小山のように思えるほど高い丘を登ると、白を基調とした神殿が待っていた。空に見守られ大地に這うように生える樹木。神殿の周囲には小川が流れ太陽、月の光が神殿に差し込む。

 神聖な雰囲気をまとう殿内は驚くことに生物、動物、人間の気配が無かった。神殿だけではない。この星に生きている生物は存在していなかった。

 だが唯一住んでいる者がいた。
 神殿の奥地の部屋に白のシーツが引いているベッドに腰をかけるただ一人の人物。あらゆる力、無限の力と一億の命を持つ神である。

 神は世に生を受けてから長い長い間独りであった。力を使い自分が生きることができる星を創り住み続けた。しかし時を重ねるごとに孤独を感じ始めた。神は自らの力を使い七人の賢者を創りだした。

 水氷の賢者。火焔の賢者。自然の賢者。天空の賢者。霹靂の賢者。大地の賢者。そして生命の賢者。

 賢者達は神から分けられた力を持った。個々に司る力を生かし一つの世界を創り始めた。時が過ぎるほど世界は盛んに繁栄しやがて人間が誕生した。

 魔力は人間にも渡り魔導師として生き始めた。魔導師は豊かな地、荒廃した荒れ地。山脈。海。火山。草原。様々な場所に住みかを作った。
 のちに強い力を持った魔導師を中心に種族という集団が作られる。異なる種族達が地を奪い合う戦争が起き始めた。欲を満たそうと奔走し続ける魔導師達。領地を奪う戦は絶えず起きていた。

しかしある日を境に世界は崩壊していく運命を辿った。

 強大な力を持つ七人の魔導師達が生まれる。その力は普通の魔導師とは比べ物にならないくらいの負のオーラをまとっている。暗黒の力を持っていた。

 己のことを邪導師と名乗った。全身を包み隠すようにまとう漆黒のローブをはためかせ、布から覗く口元は不気味な笑みを浮かべる。
 邪導師は世界へ移動した。邪導師の一人はおもむろに手を広げる。刹那、世界は黒い光に包まれ異変が起きた。

 穏やかに揺れる海は狂気に震え大荒れ、厳然と立つ山は激しい噴火が起きる。うっそうと生える緑の自然は朽ち果て、広大な天空は不気味に広がる漆黒の雲に覆われる。大気は大きく乱れ、無限に広がる大地は断裂し、生命は命を奪われた。

 そして邪導師から放たれている邪の波動で生物達は心を囚われ魔物と化し、魔導師達に襲いかかった。魔導師達もまた邪の波動で犯された者は心を失い仲間を傷つけ始めた。世界の末端では破壊の音を奏でているかのように、中心へ向かうように滅んでいった。
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