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第二章 運命の悪戯か

「おんりゃああ!!」

 ドスな声を効かせ勇ましい声を上げたシルフィは勢いよくヴォルフを突き飛ばした。 高々と後方に吹っ飛ばされたヴォルフは一度地に降り立つと再びこちらへ向かう。シルフィは息を落ち着かせると魔力が強まり出す。淡い光に包まれると彼女は片掌を前に突き出すと掌に魔力が集まり光が強まった。

『アクア・トルネード』

 高速で回転する水流が放たれヴォルフに命中する。魔物は甲高い悲鳴を上げると地へ叩きつけられた。シルフィの二度目の魔法。

「すごい!」

 シルフィはすでに楽に魔法を使えるようになっている事にフェンは驚いた。たいてい魔力が目覚めたばかりは不安定で上手く魔法が発動しない事が多いケースが多いのに、彼女はものの見事に魔力をコントロールしていたのだ。魔法を命中したヴォルフはまた起き上がる。ダメージは大きいが一発で倒すことができなかった。ふらつく足で起き上がると地を蹴り出す。

「まだまだ!」

 シルフィは目に力を入れ魔物に狙いを定める。魔物は大きく口を開け牙を向いた。彼女は力強く槍を一直線に突き出す。矛先は魔物へと進み、串刺しとなった。奇声を上げた魔物は命尽きたのか黒い煙を放ち消え去る。その時、後方から悲鳴に似たフェンの声が飛び交った。

「シルフィ危ない!」
「っ!?」

 弾かれるようにシルフィは振り向くと鋭く光る魔物の牙が襲い掛かってきた。反射的に槍で防御し魔物の攻撃から身を守る。とっさに槍で防御する。しかし真上に近い方向から攻撃され、シルフィは体制が崩れると地面へと倒れこんでしまう。が、槍は上手く防御したまま。

「ていやぁっ!!」

 ここでも彼女の馬鹿力が発揮される。軽々とヴォルフを押し返し魔物は宙へ投げ出された。男性でも押し返すことはやっとのやっとだろうに。
 
(どこまで怪力なの…?)

 味方であるフェンは彼女の計り知れぬ怪力に恐怖を感じた。宙に投げ出されたヴォルフは地面に降り立つとシルフィをかく乱させようと目にも止まらぬ速さで走りだす。姿がいくつにも見えシルフィは目を忙しなく動かす。攻撃しようにも本体がどれなのか分からない。ヴォルフの本体がかく乱させながら彼女に突進する。それを防御できなかったシルフィは当たってしまう。

「うっ!」

 再び魔物はシルフィの周りを駆け出す。これではやられてしまう。そんな時フェンが口を開いた。

「落ち着いて集中して、必ず本体が分かるわ」
「お、落ち着いてって言われても」

 うろたえるシルフィ。だが、脳裏にソルフィアの武術稽古の言葉が浮かぶ。

『焦るな、敵の心を見定めよ』

 静かに目を閉じたシルフィは肩の力を抜く。全て を無にさせ感覚だけを特化させるように。魔物の足音が鮮明に聞こえる。次第に真っ暗だった視界に魔物の走る姿が現れる。複数にかく乱させている魔物が本体だけ見えるようになった。

 開眼させると勢い良く槍を突き刺した。悲痛な叫びと共に槍が突き刺さった魔物、とどめをさすシルフィは槍の矛先から青白い魔力の光弾を放った。光に包まれた魔物は浄化され消え去った。

「…すごい、すごいよシルフィ!」

 息をするのも忘れるくらいだった。超初心者だと思っていたのに。フェンは茫然と見ていたがシルフィの勝利に思わず声を上げた。

「………やったー!」

 シルフィは間を開け敵の姿が無くなったのを確認すると弾けるように嬉しがった。大喜びで嬉しがる彼女に思わず笑ってしまった。もしかしてこの子にはもっと秘めた力があるかもしれない。フェンはそう期待せずにはいられなかった。
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