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第一章 力と宿命

 その後、昼食を終え談笑していると扉を激しく叩く音がなった。シルフィは驚き肩を大きく震わせる。大きな叩く音と共に「誰か、誰かいるか!!」と悲鳴にも似た声が飛んできた。

(だ、だれ…?)

 目を見開き姉に視線を移す。シルフィの不安を悟ったウィルマは落ち着かせるように口元だけ笑みを向ける。ドアへ進み開けると全身血に染まらせた男性が息を切らし立っていた。目に飛び込んできた一族の仲間に2人は驚いた。男は大きく肩で息を吸い小刻みに体を震わせる。

 ウィルマは街の住民だと気がつくと「何があったんだ?」と平静を装い問うた。ただ事ではない状況にシルフィも戸惑い始める。

「ま、魔物が現れたんだっ!」
「魔物?」

 聞き返したウィルマに男は何度も頭を振る。大の男が体を震わせている。大勢の街の住民だったら容易く魔物を撃退できるだろう。そう思ったがこの怪我。どうやら大物かもしれない。

「たくさんの魔物が来たんだ。みんなで応戦したんだがいきなり見たこともないくらいでかい魔物が来て」
(精鋭部隊でも止められない状態なのか?)

 恐らく一族の中で結成された精鋭部隊も戦っているがそれさえも敵わないのだろうか。とんでもない事態だと理解する。


 精鋭部隊ーーー

 一族の中で優秀な人材を集め魔物等を撃退を主にしている部隊。魔力が強いのはもちろん武力も秀でるものがあり、数々の魔物を倒し平和を保ってきた。

「皆戦える者は戦っているが大半は非難している……ここも危ない。お前達も非難しろ」

 恐怖に満ちた瞳はこの場から立ち去りたい一心だと分かる。だが、ソルフィアは住民の言葉をすんなり聞くような人物では無かった。

「いや、今から街へ行く」
「ウィル姉ちゃん!?」

 思わぬ姉の言葉に傍らにいたシルフィは大きな目を更に真ん丸とし声を上げた。目の前の住民の言葉を聞いていなかったのだろうか。今まさにここも危ない状態なのに火種となっている中心部に行くなんて。

「…お前正気か?」
「この際逃げても無駄だ。こちらから動かなければ止められないだろう」
「どうやって!? 精鋭部隊も壊滅状態なのに?」
「さぁな」

 頭が可笑しいとでも言うような顔の住民は「とにかく俺は逃げるからなっ」と住民は走り去っていった。残されたウィルマとシルフィ。

 恐怖で焦りを感じじっとしていられないシルフィは「ね、ねぇ逃げようよ」と姉の手を引っ張る。が、ウィルマは依然真っ赤に燃える街を見据えるのみ。怯え震える妹をに目を遅したウィルマは落ち着かせるようにシルフィの頭に手を置く。

「シルフィ、今からあたしは街へ行く」
「危ないよ、逃げようよ!」
「いや、逃げても無駄だ。もうすでに魔物に囲まれているからな」

 シルフィはハッと周囲を見渡せばどこからともなく人型の魔物が2人の周りに現れ斧を振り回していた。身動きが取れない状態にシルフィはソ小さな悲鳴を上げルフィアの後ろへ回る。奇声を上げながら不気味に笑う魔物に警戒しながらもウィルマは言葉を続ける。

「ここにいても危ない。シルフィも一緒に街へ行く」
「えっ!?」」
「大丈夫。長い間鍛錬を受けていただろ?」
「で、でも…」
「何かあったら必ずあたしが守るから」

 姉の度重なるとんでもない言葉にシルフィは驚きに満ちる。長年鍛錬を受けていたとはいえ、初めてのに近い実線がこの危機的状況なんて無理がある。

 じりじりと距離を詰める魔物達と警戒するウィルマとシルフィ。恐怖で姉の後ろに隠れるシルフィは武器である槍を構え身構えている。魔物が一声上げれば続くように数体の魔物が飛びかかる。迫りくる魔物の攻撃にシルフィは目を瞑ると姉は魔力を放出し一斉に全てはじき返した。

 目を見開いたシルフィは後ろへ跳ね返る魔物を捉えたがくるりと反転しすぐさま魔物は2人に向かう。

『アイス・ニードル』

 氷で形成されたニードルが数本現れるとそのままいくつかの魔物に貫く。命中した魔物は黒い煙を放ち姿を消していく。あっという間の状況にシルフィは茫然と見つめていると「シルフィ!」とウィルマの緊迫した声が発せられる。

「っ!」

 気が付けば一体の魔物が目の前に斧を振りかざしていた。シルフィはとっさに体が動きその長い槍で魔物を叩き落とす。落とされた魔物は鈍い音を立てて転がり隙を見て槍を一直線に突き刺し、貫通した魔物は同じように黒い煙を放ち消え去ったのだ。

 全ての魔物を倒した2人は消えた魔物の気配を感じる。そしてシルフィは自らの手で魔物を倒した事に槍を見つめていた。

「私、魔物倒した」
「言っただろう、大丈夫だって」

 恐る恐る姉の方を見れば褒め称えるようにこちらへ微笑んでいた。1回の勝利だがシルフィにとって大きな自信へとつ繋がる。シルフィは大きく頷くとウィルマと共に街へ行くことを決心した。
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