第一章 力と宿命
***
映像が消え頭がすっきりしたシルフィは軽く辺りを見回す。
「今の映像は?」
『世界の始まり。そして事の発端の映像よ』
星、世界、神、賢者、邪導師、破滅、平和。それぞれの映像が全てシルフィに映された。正直、今の映像を全て信じている訳ではない。ただ、最初に言っていたフェンの「本当の事」という言葉が本当にそうなら、これからこの世界に起こる事はただ事ではないと感じた。
「邪導師を封印してから長い長い時が経った。危険な事に封印の力が弱まりつつあり、邪導師の暗黒の力によって魔物達が激増し世界を蝕んでいるわ。最悪な事態、邪導師が復活する前に選ばれし者達の力で永遠に封印してほしいの」
足先の感覚が無くなる。いくら頭の弱いシルフィにだってフェンの言葉の意味は理解できた。そして今、世界で起きている危機についても。けれども彼女に疑問が浮かび上がる。どうして自分、力の強い姉でもいいじゃないか。いつまで? 復活の時は?
ぐるぐると思考が回り頭が爆発しそうになったシルフィは頭を抱えフェンに尋ねた。
「どうやって?」
するとフェンはにっこり笑うと細い腕を動かしシルフィの胸元へ指さした。促されるように目を向けると体に見慣れない字が刻まれていた。
「な、なにこれー!?」
青い字で刻まれた紋章。いつの間に刻まれたのだろうか。慌てて指で擦るが皮膚が赤くなるだけで後は変化しない。
「まずそれはあなたが選ばれし者である証の紋章」
どこか誇らしげに言うフェンに「へぇ~」とシルフィは答えた。
「ちなみにいつ現れたのかというとさっきあなたが初めて魔法を唱えた時。ようするに賢者の力が芽生えた時よ」
「え、何で知って…」
「見てたから」
「…見てたって?」
「さっきの戦い」
頭を殴られた衝動に駆られる。
さっきの戦いを見ていた? あの恐ろしい魔物や巨大な親玉との戦いを?
頭が真っ白になったが途端に怒りがこみ上げる。今でも聞こえる町の人達の悲鳴。魔物の笑い声。ウィルマの壮絶な戦い。傍観していた時、膨れ上がる怒りをぶつけた。
「なんで助けてくれなかったの!?」
「え?」
「近くにいたなら…「信じていたから」」
怒りで声を荒げる最中、フェンはお構いなしに口を挟んだ。それはとても澄んだ声、凛とした声でシルフィの怒りを抑えるように発した。そして怒りが嘘のように消えたシルフィはフェンの言葉に少し驚く。何を言っているのかと思った時、隣にいたウィルマが口を開く。
「シルフィ、最初にあたしがフェンに言っていたんだ」
更に驚いたシルフィは弾かれるように姉へと顔を向ける。それは少し申し訳なさそうな顔。ウィルマはシルフィが選ばれし者だという事。そして世界を救う宿命がある事をすでに知っていた。だから今まで黙っていた事に申し訳ない気持ちを抱いていた。
「あたしは全て知っていた。近々、あの親玉が来る事も。そしてフェンもやってくる事も」
「どうやって知ったの?」
「フェンを通じてさ」
ね?とフェンとウィルマは顔を見合わせる。
不思議だった。姉とフェンが知り合いだった事。
「簡単に言えばあたしとフェンは姉さん繋がりで知ったんだよ」
「ミュリエル姉さん!?」
「そう、ミュリエルとは良い友達でね。そこからウィルマと会ったのよ」
「そうなんだ!」
やっとウィルマとフェンとの謎が解けてどこかすっきりしたシルフィ。まさか長女、ミュリエルから通じて仲良くなったとは思っても言わなかった。
「話を戻すけどわたしはあなたを信じていたからずっと見させてもらったわ。賢者の力が目覚めるのをね」
「……賢者の力」
「あなたは魔法が使えなかったわね。それは元からではなく賢者の力の影響もあるの。
賢者の力は計り知れないわ。あなたは今までその力を制御できる器が育っていなかったから、そのせいで魔力を封じ込め、器を育てる事に力を注いでいたのよ」
「そう、だったんだ」
「でもね、魔法が使えるようになったからと言って賢者の力が使える訳ではないの。今、あなたの賢者の力は目覚めたばかり。そして種から葉っぱが出たような感じよ。
あなたは今はただの魔導師なの」
映像が消え頭がすっきりしたシルフィは軽く辺りを見回す。
「今の映像は?」
『世界の始まり。そして事の発端の映像よ』
星、世界、神、賢者、邪導師、破滅、平和。それぞれの映像が全てシルフィに映された。正直、今の映像を全て信じている訳ではない。ただ、最初に言っていたフェンの「本当の事」という言葉が本当にそうなら、これからこの世界に起こる事はただ事ではないと感じた。
「邪導師を封印してから長い長い時が経った。危険な事に封印の力が弱まりつつあり、邪導師の暗黒の力によって魔物達が激増し世界を蝕んでいるわ。最悪な事態、邪導師が復活する前に選ばれし者達の力で永遠に封印してほしいの」
足先の感覚が無くなる。いくら頭の弱いシルフィにだってフェンの言葉の意味は理解できた。そして今、世界で起きている危機についても。けれども彼女に疑問が浮かび上がる。どうして自分、力の強い姉でもいいじゃないか。いつまで? 復活の時は?
ぐるぐると思考が回り頭が爆発しそうになったシルフィは頭を抱えフェンに尋ねた。
「どうやって?」
するとフェンはにっこり笑うと細い腕を動かしシルフィの胸元へ指さした。促されるように目を向けると体に見慣れない字が刻まれていた。
「な、なにこれー!?」
青い字で刻まれた紋章。いつの間に刻まれたのだろうか。慌てて指で擦るが皮膚が赤くなるだけで後は変化しない。
「まずそれはあなたが選ばれし者である証の紋章」
どこか誇らしげに言うフェンに「へぇ~」とシルフィは答えた。
「ちなみにいつ現れたのかというとさっきあなたが初めて魔法を唱えた時。ようするに賢者の力が芽生えた時よ」
「え、何で知って…」
「見てたから」
「…見てたって?」
「さっきの戦い」
頭を殴られた衝動に駆られる。
さっきの戦いを見ていた? あの恐ろしい魔物や巨大な親玉との戦いを?
頭が真っ白になったが途端に怒りがこみ上げる。今でも聞こえる町の人達の悲鳴。魔物の笑い声。ウィルマの壮絶な戦い。傍観していた時、膨れ上がる怒りをぶつけた。
「なんで助けてくれなかったの!?」
「え?」
「近くにいたなら…「信じていたから」」
怒りで声を荒げる最中、フェンはお構いなしに口を挟んだ。それはとても澄んだ声、凛とした声でシルフィの怒りを抑えるように発した。そして怒りが嘘のように消えたシルフィはフェンの言葉に少し驚く。何を言っているのかと思った時、隣にいたウィルマが口を開く。
「シルフィ、最初にあたしがフェンに言っていたんだ」
更に驚いたシルフィは弾かれるように姉へと顔を向ける。それは少し申し訳なさそうな顔。ウィルマはシルフィが選ばれし者だという事。そして世界を救う宿命がある事をすでに知っていた。だから今まで黙っていた事に申し訳ない気持ちを抱いていた。
「あたしは全て知っていた。近々、あの親玉が来る事も。そしてフェンもやってくる事も」
「どうやって知ったの?」
「フェンを通じてさ」
ね?とフェンとウィルマは顔を見合わせる。
不思議だった。姉とフェンが知り合いだった事。
「簡単に言えばあたしとフェンは姉さん繋がりで知ったんだよ」
「ミュリエル姉さん!?」
「そう、ミュリエルとは良い友達でね。そこからウィルマと会ったのよ」
「そうなんだ!」
やっとウィルマとフェンとの謎が解けてどこかすっきりしたシルフィ。まさか長女、ミュリエルから通じて仲良くなったとは思っても言わなかった。
「話を戻すけどわたしはあなたを信じていたからずっと見させてもらったわ。賢者の力が目覚めるのをね」
「……賢者の力」
「あなたは魔法が使えなかったわね。それは元からではなく賢者の力の影響もあるの。
賢者の力は計り知れないわ。あなたは今までその力を制御できる器が育っていなかったから、そのせいで魔力を封じ込め、器を育てる事に力を注いでいたのよ」
「そう、だったんだ」
「でもね、魔法が使えるようになったからと言って賢者の力が使える訳ではないの。今、あなたの賢者の力は目覚めたばかり。そして種から葉っぱが出たような感じよ。
あなたは今はただの魔導師なの」