深紅に思いを馳せて
ああ、最悪だ。
悲劇の主人公にでもなったような、出来すぎた憂鬱が身を襲う。
何事にもトラブルは付きまとうものとはいえ、さすがにこれは出来すぎているだろう。
「ヴィル先輩、最新の予報はご覧になりましたか?」
「ええ、勿論。……本当に最悪だわ」
映画研究会では、勿論、映画を制作する。必要があればロケ撮影に出向いたり、得意な生徒の協力を得てCGの合成に挑戦する事もあった。
今回の映画では季節特有の景色を実際に撮影して組み込みたいとの発案があり、それを叶えるべく予定を立てている。学校行事との兼ね合いもあり、かなりスケジュールに無理があった事は否めない。……少なくとも、代替日の制限はかなり大きかった。何せ時間が限られる景色で、さらに自分たちは学業の都合で自由に外に出られる日が限られている。そこに更に個人的な事情が加わり、候補日はその一日だけになってしまった。
そこに気象条件が加わった結果、その一日も撮影出来なくなってしまったのである。
その日を越えて次の機会を狙おうにも、その頃には景色は完全に変わってしまう。と、なるともう何かを捨てるしかない。
撮影を諦めるか、予定を諦めるか、だ。
「こうなっては仕方ありません。先輩が映画祭に行ってる間に、僕たちだけで撮影を進めます」
「……そうするしかないわね」
と、なると代わりの同行者を選ぶ必要があるな、と思案する。
今回の映画祭でのスタッフと、スタジオツアーの参加者を兼ねる人間を選ばなくてはならない。
かなり大がかりな撮影をする関係上、もう映画研究会から人を動かすのは難しい。と、なれば全く関係のない所から連れてくる必要がある。
ふと顔を上げると、後輩はどこか嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「あら、せっかくのスタジオツアーもナシになったっていうのにご機嫌ね?」
「いえ、そういうわけでは。……まぁでも、先輩は今回の映画祭、他に誘いたい人がいらしたのでは?」
思わず咳払いした。後輩はますます嬉しそうな顔になる。
「あ、アンタね……」
「この機会に是非、映画研究会への勧誘をなさってはいかがでしょう?」
「美食研究会との兼部だって問題ないですし」
「あの外見で殺陣が出来るのは強いですよ。魔法じゃエフェクトは出せても身体捌きは賄えませんし」
「是非フェルミエくんと一緒に主演を務めて頂きたいです」
同行予定だったメンバーがわらわらと集まってきては、クリエイターらしい妄想を口にした。どんどん収拾がつかなくなる。
「ええい、おだまり!」
ぴしゃりと叱りつければ黙り込んだが、みんな揃って笑顔のままだ。何とも言えない感情がこみ上げる。
「撮影の事は僕たちに任せてください。必ず理想の絵を撮影してきます」
「当たり前でしょ。……頼んだわよ、アンタたち」
仲間達が元気良く返事をする。頼もしく思いながら、内心は複雑だった。