2:果てを望む砂塵の王



「ふなぁ~~~~ん!!ゴロンニャ~ン!!ニャビニャビ……」
 まず耳に入ったのは不可解な音だった。頭の上に何か乗っている。
 顔の上に登ったグリムをどかして脇に置いた。それでも目覚める気配はない。カーテンからは朝日が降り注いでいる。
『おはよう、そろそろ起きて支度しなよ!』
「おはよう。……グリムも起きて」
「むにゃむにゃ……おこりんぼリドルをこらしめてやったんだゾ……グリム様の力、思い知ったか……」
「いつの話だよ」
 この世界にやってきてまるまる一ヶ月が経過した。未だ帰る方法は見つからず、手がかりすらなく、グリムたちとの共同生活も続いている。
 すぐ帰れる、と希望を抱いて、気を紛らわすものと割り切って学校生活を送っているが、そんな半端な気持ちではどうにもならないくらいに授業の内容が重い。問題児が多いとはいえ一応名門だし、『魔法』という元の世界にはない要素が更に難易度を上げてくる。そもそも、元々勉強があまり得意じゃない。ただでさえ常識が違うのに、ちょっとした事でつまずいては時間をかけて補う事を繰り返していた。
 おかげで住環境の整備も思うように進まない。退去の日が判らない事も整備の手を鈍らせていた。
 もう少ししたら布団から出るのも億劫な気温になるだろう。グリムの毛皮と体温は暖房として魅力的だが、毎日のように頭や腹を枕にされてしまうので、いい加減個室を綺麗にしてやるべきだ。猫一匹には広いだろうけど、寮は全室自分の物だと言い張ってるし、本人は喜ぶだろう。
 季節の進行を感じるほど気持ちは焦る。出来ることは何もないというのに。

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