2:果てを望む砂塵の王




 鏡面が水面のように揺れる。
 何も映さなかった闇色に、景色が映る。


 見渡す限りの原野。広い広い空。
 乾いた風が強く吹き抜けて遠ざかっていく。

 風が吹かなければ静まりかえった世界だけど、不思議と生命の気配があった。遠くもなく近くもなく、躍動する事も無いが絶えず蠢いているような気配。
 それは不快なものではない。生命そのものに正も邪もありはしない。

 やがて岩山の一つに動物の姿が見えた。
 猿のような動物が前を歩き、その後ろを二頭の獅子が追って歩く。その歩みはゆったりと荘厳で、神聖な雰囲気があった。

 尖り演台のようになった岩の先で、猿は獅子の赤子を天へ掲げた。
 祝福するように降り注ぐ陽光。
 荒涼とした光景に、一つの区切りを迎えたような印象があった。


 鏡面が揺れる。
 映っていたものが溶けて消えていく。


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