7−5:虹色の旅路 後編


「オイ、あんたら」
 不意に声をかけられて振り返ると、見知った顔がそこにあった。いや実際はだいぶ視線を上げたけども。
「横に広がって道を塞いでんじゃねぇ、邪魔だ!」
 銀色の髪に、天辺が黒くなった三角耳。思わず見上げてしまう長身と、相応に鍛え上げられた肉体。
 サバナクロー寮の一年生、ジャック・ハウルがそこにいた。その周囲には、夢の主である事を示す鳥を模した光が舞っている。
 僕たちが道を空けると、ジャックはさっさと走って行ってしまった。運動部棟を通り過ぎて駆け抜けていく。多分、行き先はコロシアムだ。
「何ですか?ジャックさんの周りに飛んでいた、白く光る鳥は」
「あいつがこの夢の主だという目印だ。すぐに追いかけよう!」
 慌ただしく後を追う。ジャックの脚が速いおかげで、後を追いかけている事がバレずに済みそう。
「放課後って事は部活?あれ、でも陸上部ってコロシアム使うっけ?」
『今日は場所を変えて、特別な練習でもするつもりなのかもしれないね』
 そういう事もあるのか。運動部っていろいろあるんだな。
「アイツ、たまに昼メシを一緒に食う時は、デュースと『もっと速く走りてぇ』とか『今はナントカ筋を鍛えてる』って話ばっかしてるし……メチャクチャ足が速くなってる夢だったりして。にゃははっ!」
『とにかく、後を追ってみよう』
 気づけば生徒の姿が随分増えている。グラウンドでは陸上部らしき人の姿もあったから、ますます疑問が浮かぶけど、まぁ見た方が早いだろう。深く考えるのはやめた。
 フィールドへ出る所で身を隠しつつ覗きこむと、マジフトの練習が行われているようだった。放課後のチャイムからそこまで時間が経ってない気がするけど、準備運動どころか、既にだいぶ熱が入ってる雰囲気。
「どうやら、マジフト部が練習をしているようだな。もしや、転部している夢……?」
「いえ、彼らをよく見てください。運動着が全員サバナクローのものだ。そして今の季節は秋。という事は、おそらく……」
「サバナクロー、全員集合!」
「うっす!!」
「ちんたらすんじゃねぇ!」
 結構距離があるけど、それでも聞こえてくるくらいよく通る声。しかも凄く良い声。
 遠目から見える限り、中心にいるのはキングスカラー先輩だ。もちろん近くにブッチ先輩らしき人影もある。
 オルトのカメラと集音マイクで集めた情報がシュラウド先輩のタブレットに表示された。やっぱりキングスカラー先輩とサバナクロー寮の生徒たちがいる。
「来週に迫った寮対抗マジフト大会……本番の舞台であるコロシアムで練習できる回数は限られてる。一分一秒無駄にするな!」
「うっす!!」
 キングスカラー先輩の厳しい声に対し、体育会系特有の聞いてるのか聞いてないのか怪しいけど元気だけは良い返事が応える。
 そんな様子を見ていたブッチ先輩が、ふと笑みを浮かべた。
「レオナさん。ここに立つと嫌でも思い出しちまいますねぇ……去年のマジフト大会の事」
「ああ……俺たちサバナクローは、マレウス率いるディアソムニアに初戦で敗退。あの日の悔しさは忘れられない」
 キングスカラー先輩が静かな声で語り出せば、寮生たちはそれを黙って聞いていた。正直異様な光景なのだが、ツッコミを入れてくれる人はいない。
「だが……今の俺たちは、あの時とは違う」
 そう言って闘志を露わにすれば、寮生たちの空気もじわじわと変わっていく。
「一年かけて牙を研ぎ……ついに竜の首に飛びかかる『準備』は出来た。そうだろう?」
 サバナクローの『王』の演説に、寮生たちの気分が高揚していく。
「これは一生に一度のチャンスだ。世界をひっくり返すためのな」
 寮生たちの表情は期待に輝いている。未来に希望を抱いて、輝かしい明日を信じている。
 そんなキラキラした彼らを校内で見た記憶は僕には無い。誰ですか、この爽やかなスポーツ少年どもは。
「奴らを出し抜くために磨き上げた技術力!何度ディスクを奪われようと食らいついていく体力!獲物を確実に追い詰めるための結束力!」
 キングスカラー先輩の表情は真剣そのものだ。美形がこんな顔で自分たちの努力を認める言葉を語りかけてくれたら、そりゃ同性でも夢中になるだろうって感じ。変な意味じゃなくて。
「そして……胸に燃える野心!」
 逞しい胸に己の親指を突き立てる。その自信に満ちた姿に寮生たちはみんな釘づけだ。
「見せてやろうぜ、俺たちサバナクローの不屈の精神を!」
「ウオオオオ~~~~!!!!」
「テメェら、俺についてこい!次の王はこの俺だ!」
「いいぞー!レオナさん!王様バンザーイ!」
「王様バンザイ!王様バンザイ!」
 フィールドのテンションは最高潮だ。誰も彼もキングスカラー先輩を讃えている。ジャックも嬉しそうに、憧れの眼差しを向けていた。
 仲間たちの様子に、キングスカラー先輩は満足そうに笑う。
「どいつもこいつも気合いは十分みてぇだな。今日は限界までしごいてやる。準備をしておけ!サバナクロー、ファイッ!」
「オオォーーーーーーッ!!!!」
 広いコロシアムを埋め尽くしそうな雄叫びを上げてから、寮生たちは練習を始めるべく散っていった。
『知らん人がおる~~~~~~~~~ッ!!!!』
 タブレットとオルトの接続が切れてすぐ、シュラウド先輩が悲鳴のような声を上げる。
『スポ根漫画に出てくるタイプのレオナ・キングスカラ~じゃん……タ、タスケテ~ッ!怖いよ~ッ!』
「マレウスさんのユニーク魔法の恐ろしさを、真の意味で理解出来た気がします」
「オレ様、怖くて泣きそうになっちまったんだゾ……」
「えぇい取り乱すな、軟弱者ども!あの程度の変化は、これまでの夢の中でもいくらでもあっただろうが」
 そう言ってるセベクもだいぶ引いてる気がする。何とも思ってないのはシルバー先輩とオルトぐらいじゃないかな。いやオルトは『様子がおかしい』とは思ってるだろうけど。
「うぅっ、あのレオナを見てると背中の毛がぞわぞわする。早くジャックを目醒めさせるんだゾ!」
「彼らの話から推測するに、ジャックは寮対抗マジフト大会直前の夢を見ているようだ」
「ええ。そして彼らは前年の敗北をバネに厳しい鍛錬を重ね、真っ向からディアソムニアに挑もうとしているご様子。……現実とは違ってね」
 現実の寮対抗マジカルシフト大会では、サバナクロー寮は他寮の有力選手を負傷させるといった妨害工作を行っていた。更に当日には観客やメディア関係者を暴走させて、ツノ太郎にぶつけようとしていた。
 後者に関してはツノ太郎には痛くもかゆくもなく、前者に関しては負傷させた選手から試合で思いっきり報復を受けるという形で収束している。
「アイツら、悪巧みなんか全然してなさそうなんだゾ」
「ぐぬぬ……サバナクローめ。あの卑劣極まりない事件の事を思い出す度、腹が立つ!」
 セベクが怒りを顔に浮かべる。
「選手候補を負傷させるだけでは飽き足らず、人間どもを暴走させ、マレウス様を押しつぶそうとするなど……なんたる不敬!実に許しがたい!」
「ええ、スポーツマンシップの欠片も無い行為でしたね。マジフト大会運営委員長を務めていた僕も、レオナさんの企みを知った時には衝撃を受けましたよ。非常に遺憾でした。来場者に怪我が無くて本当に良かった!」
 まぁその通りなんだけど。
 でも、あの人だって何も感じなかったワケじゃない。多分、正面から勝てるならそうしたかっただろう。
 あの人は賢くて強いから、勝ち目が無いとすぐに理解はしていたはずだ。それでもどうにかしたくて策を絞り出した。その行動の背景には自分のプライドだけじゃなくて、将来を潰されていく寮生たちへの義理とかもあっただろう。
 フィールドのサバナクローの寮生たちは、活き活きとした様子でディスクを追いかけ回していた。縄張り争いもお互いへの不信も無く、ただ輝かしい目標に向かって努力を続けている。
 ジャックもその中に混じって、楽しそうに走っていた。失敗も悔しがりつつ前向きに受け止めて、弱点を克服しようと努力を重ねている。
 こうあるべきだった、というのも解る。こっちが正しい、というのもそうだと思う。
 でもこの光景を見ていると『努力など無意味』と語るキングスカラー先輩の気持ちも解る気がした。
 道を誤ってでもゼロを覆そうとした彼の苦しみは、結局『正しさ』に否定されてしまうんだなって。
 そういうリスクのある事なんだから、仕方ないって言えばそうなんだけど。
「あの事件……サバナクローの企みを内部告発したのは、ジャックだったと聞いている」
「アイツに情報を吐かせるのは苦労したんだゾ。男のナントカとか、ケジメとか、メンドクセー事ばっか言ってよぉ」
「ジャックさんの葛藤は理解できます。いくら転寮制度があるとはいえ、味方を売ったとなれば報復は免れない」
『そうだね……サバナクロー寮が起こした傷害事件が、ジャックさんに大きな心理的負担をもたらしたのは間違いなさそうだ』
 僕がぼんやり考え事をしている間にも、みんなの話は進んでいく。
『先輩たちと一緒にマジフトをしてるジャックさん、すっごく楽しそう』
「アイツ、ナイトレイブンカレッジに入学するずーっと前から、レオナに憧れてたみてぇだしな」
「自分の所属する寮の寮長に……憧れていた相手に、刃を向ける。入学したばかりのジャックにとって、どれほど覚悟がいっただろう」
 ああ見えてまだ一年生。見た目が厳つくて気難しそうな雰囲気だけど、年齢相応に無邪気で素直な一面もある。オクタヴィネル寮の景色にはしゃいだりとかね。
 まぁ、仮に彼がキングスカラー先輩と同じ状況に置かれても、キングスカラー先輩みたいな手段は絶対に選ばないだろうな。もうなんか魂から違いすぎてる気がする。
「彼の正義感と勇気は、賞賛に値するな」
『うわぁ……寮長の強火フォロワーが多いディアソムニアっぽい発言』
「学園の生徒の大半は『先輩は目の上のたんこぶ、後輩は便利なパシリ』と考えていますよね?」
「オレ様の知り合い、寮長と揉めた事ねぇヤツを捜す方が難しいんだゾ」
 改めて治安悪いな。
 決して悪人しかいないワケじゃないんだけど、本当に名門校か?って言いたくなる事は結構ある。それはそれとして。
「寮長との諍いを無かった事に……か。ジャックの見ている夢は、少しセベクのものと似ている気がする」
「じゃあ、ぶん殴れば目が醒めそーだな。早速殴りに行くんだゾ!」
『ちょっと待った。ジャック氏のそばに張り付いてるレオナ氏とラギー氏……おそらく、ジャック氏のイメージの影響を強く受けてる』
 シュラウド先輩から見て、その二人が特にジャックの近くにいる印象のようだ。他のモブも『闇』ではあるからそれなりに多勢に無勢ではあるんだけど、まぁアーシェングロット先輩の時のイソギンチャクどもよりは少ないからマシだろう。
『アズール氏の夢で対決したレオナ氏は、ユニーク魔法を取り上げられて弱体化させられてたけど、今回のレオナ氏はフルスペック状態だと思った方がいい』
『ジャックさんはレオナさんに強い憧れを抱いているみたいだからね。かなり厄介な事になってるかも』
「そうか。ここは願望がそのまま具現化されるイマジネーションの世界。つまり……」
「ジャックさんの憧れにより美化されたレオナさんは、現実よりも更に強くなっている可能性もある……という事ですね」
『そういう事。現にアズールさんだって、自分の夢の中では他の寮長のユニーク魔法をいくつも手に入れて使いこなしていたでしょ?』
「じゃあ、アズールが『闇』をぶっ倒すってのはどうだ?レオナやリドルのユニーク魔法をバンバン使って!」
 グリムがキラキラと目を輝かせて提案したが、アーシェングロット先輩は暗い顔で首を横に振る。
「それが……一度夢から醒めてしまうと、理性が働いて能力がセーブされてしまうようです」
「解るぞ。僕も夢の中ならユニーク魔法を完璧に使えてもいいはずなのに、どうも現実に感覚が引っ張られてしまう」
 どうも夢から醒めた状態で、夢である状況を利用する事は難しいらしい。魔力の消費だって当たり前にあるみたいだし。
 僕も夢の中なら現実の封印なんて関係ないんだから、自分にあるっていう魔力を使えてもいいと思うんだけど、マレノア姫の封印の影響もあるのか全くそんな兆候は見られない。まぁ封印が無くても出来る気しないけどさ。やった事ないし。
『フルスペック且つジャック氏の憧れバフ有りの「闇」レオナ氏と真っ向勝負になったら、こっちのダメージは避けられない』
 多分、向こうが一人でも厳しいぐらいの実力差が予想されてる。時間もかけたくない。
『それにあまり派手な事をやると、運営に気付かれる可能性もあるし……殴り合い以外の方法でジャック氏を覚醒させつつ、「闇」レオナ氏を弱体化させる方法……』
 タブレットから唸り声が続く。
『……いっそ、マジフトの試合をするとか?』
「……ここで!?」
『魔法力全開で戦うフィールドの格闘技とか言われてるけど、一応ルールはあるし。ジャック氏の憧れを体現したレオナ氏なら、反則とか絶対しないでしょ』
「相手が規格外に強いなら、ルールの中に押し込めてしまえと」
『そういう事。その試合の中で、ジャック氏の覚醒のチャンスを狙う』
 魔法を使う競技だから、行動が制限されるワケでもない。ジャックに接触する機会だってたくさんあるだろう。
 スポーツマンにとって試合は『成長の機会』。ジャックはきっと出てくる。そういうシナリオになるはずだ。
「そんな簡単に行くのかぁ?」
「大丈夫でしょう。彼らにとって因縁のあるディアソムニアのお二人がいますから」
「ジャックは向上心ありますからね。寮長の二人いる混成チームと戦えるなんて聞いたら、興味を引かれるかもしれません」
『少なくとも、全く相手をしてくれないって事は無さそうだね』
 オルトが目を輝かせて僕たちを見回す。
『ジャックさんを覚醒させる役目、僕に任せてもらえないかな』
『え、オルト!?』
『挑戦してみたい事があるんだ。ジャックさんが相手なら出来る気がする』
 シュラウド先輩は凄く悩んでいる様子だった。作戦を出す時より唸っている。
『い、いやでも……あまり危険な目には……』
『ダメそうなら無理はしないよ。ちゃんと引き際は見極める。だから、やらせて』
「……まぁ、僕たちも他に具体案があるワケじゃないですし」
 他のみんなも異論は無さそう。シュラウド先輩だけ凄く悩んでる感じがする。
『……だって、オルトはマジカルシフトやった事ないじゃん?』
「えっ!?」
『僕は寮対抗マジカルシフト大会が終わってから編入したから、やる機会が無かったんだ。イグニハイド寮生はインドア派ばっかりだしね』
 言われてみればそうか。シュラウド先輩と一緒にいるからって、シュラウド先輩の代わりに出場とかさすがに認められないだろうし、ヒューマノイドって時点で違う競技になってしまう気もするし。
 目的は別にあるとはいえ、実質ぶっつけ本番でプレイする事になる。それはそれでちょっと気の毒な気もするなぁ。
「オルトはいいの?その、初めてのマジフトがこれで」
『うん、だって友達と一緒に初めてマジカルシフトをするんだ。普通の事でしょ?』
 そう言って無邪気に笑ってくれる。可愛い。
「……じゃあ、現実での初めてのマジフトはまた別カウントって事で」
『ふふ、そうだね!その時は、ユウさんも一緒にプレイしよ?』
「僕ディスク持てないよ」
『大丈夫だよ!現実のマジカルシフト大会でだって楽しそうだったじゃない!』
 ……楽しかったかなぁ?ちょっと記憶が曖昧なんだけど。
『あー……伝説の姫抱っこ事件ね……』
「知らない間に伝説の事件になってる」
『あのレオナ・キングスカラーが怪我した新入生を保健室に運ぶなんて想像つきませんからな。鍵垢でいろいろ紛糾してましたぞ』
「僕はオンボロ寮に手を出した当時、その情報を知りませんでした。イグニハイドの皆さんは僕も把握していない裏垢を持っていると?」
『プロフに律儀にリンク貼ったり鍵も付けてない裏垢なんてアホのやる事でしょ。パンピーに見せられない呟きは徹底的に隠すのがオタクのマナーの基本ですぞ』
「その、情報を秘密裏に渡して頂く事は……」
『お断りします』
「くっ……こんな時ばっかりキッパリと断ってくる……!」
「アズール先輩の策謀は置いておくとして。ひとまず、ジャックの覚醒についてはオルトに預けるという事でいいな?」
『ん、ぐ……うん、まぁ、分かったよ……』
『ありがとう、兄さん!』
 オルトが眩しく笑えば、シュラウド先輩ももう何も言えない様子だ。
「もうひとつ片づけるべき問題がある」
「問題?」
「人数だ。イデア先輩がタブレットで参加するワケにもいかないだろう」
 ここにいるのは七人。ただしそれはタブレットのシュラウド先輩を足した人数。
「……別に勝つ必要は無いよね?」
『ある程度接戦にはなった方が助かるかな。ジャックさんが試合に夢中になる要素はあってほしい』
「なら『S.T.Y.X.』のホログラムでどうにか出来ないですかね?」
『自動で人間とマジカルシフトが出来るレベルのホログラムを突貫で作れと?流石に無理だが?』
「最悪ハリボテでもいいんじゃないでしょうか。シュラウド先輩がガンガン前に出てディスク争いとかしないって事ぐらい解ってるでしょうし」
 チーム競技であるからには、役割分担というものもある。
 今のメンバーをチームとして見た場合に、ディアソムニアの二人がまず前衛に入るのは明白だ。僕は魔法が使えないし、グリムは移動速度は速いものの基本落ちこぼれ。オルトは前衛後衛両方をカバーする役で、アーシェングロット先輩とシュラウド先輩が後衛、と見るだろう。
「シュラウド先輩と敵対した際の最大の脅威は頭脳です。特にアーシェングロット先輩と組んでいるからには、戦力の不足を戦略で補ってくる、と警戒するでしょう。それだけでシュラウド先輩がフィールドに立ってる意味があります」
 記憶が無いとはいえ、ジャックだって僕たちと同じだけの月日をナイトレイブンカレッジで過ごしているのだ。他寮の寮長の事だって入学当初よりは把握している。
 その記憶が無意識に、シュラウド先輩に対する違和感を補うはず。
「仮にホログラムだってバレても『体力育成サボるための実験してんな』ぐらいにしか思われないのでは?」
『ハシバ氏が拙者の理解者すぎて泣きそう』
「泣くのは終わってからにしてください。……いけそうですか?」
 タブレットの向こうでニヤリと笑う気配がした。
『その程度なら秒超えて瞬でいけますわ』

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