7−4:虹色の旅路
………
カフェの扉の向こうに、悠の背中が消える。無言で見送った面々が、気まずそうに顔を見合わせた。
『ハシバ氏荒れてるな~…………当たり前だけど』
「常々思うが、ヤツのマレウス様への無礼な態度はどうしても許せん!若様は何故あのような者に温情など向けられるのだ!」
『マレウス氏がどう思ってるかは知らんけど、少なくとも封印上書きのダメージとか、この夢の状況とか、ハシバ氏のストレス源にはなってるよね。「よかれと思って」だとしても』
「そっ……れは……」
『ハシバ氏に、マレウス氏がいなけりゃこんな事にはなってない、って考えが浮かぶのも無理ないよ。まぁそれ以上に「全部自分のせいだ」ってあの子は思ってるんだろうけど』
「え……?」
『ハシバ氏、ここに来てから飲み物しか飲んでないでしょ。グリム氏と並ぶ食欲の権化のくせに、すっごい落ち込むと自分を責めて、その食欲も無くなるんだよ』
全員の視線が悠の座っていた席に向けられる。唯一その席に届けられた紅茶の入っていたカップが、事実を示していた。
タブレットのスピーカーから溜め息の音が漏れる。
『ヴィル氏相手ならハシバ氏で楽勝かと思ったけど、考えが甘すぎたかな。ヴィル氏の態度に結構ダメージ受けてたっぽいし』
「……無理も無い。あの時のヴィルの表情、オーバーブロットする直前と同じだった」
ルークがぽつりと呟く。
「思い出してしまったのだろう。……彼の絶望を、あの時の様子を」
「……そっか。ユウクンはヴィルサンがオーバーブロットした現場に居合わせたんですよね」
「……その時の話、なのか?」
シルバーが疑問を口にする。同席者の視線を浴びつつ少し考え込んでから、意を決したように顔を上げた。
「以前、ユウが言っていたんだ。『ヴィル先輩の夢が叶うのを邪魔したのは自分だから、自分には彼に助けを求める資格など無い』と」
「……それは本当かい?」
ルークが険しい表情で尋ねれば、シルバーは迷い無く頷く。
「とても嘘には聞こえなかった。だが詳しい事情を話す事もなかった。訊く事も出来ないまま、ここまで来てしまったが……」
「それって、ユウクンはヴィルサンがオーバーブロットしたのも自分のせいだと思ってるって事?」
「話を聞く限り、そういう事だと思うが」
視線は事情を知っているであろうルークに向けられる。ルークの方は変わらず険しい表情で考え込み、やがて深々と息を吐いた。
「……誤解の無いように言っておくが、ヴィルのオーバーブロットは決して、ユウくんだけが原因で起きたものではない」
「勿論、解っている」
面々が了解を示すのを確認してから、ルークは口を開く。
「……確かに、最後の引き金を引いたのはユウくんだと言えなくもない。単純な時系列だけを見れば、だが」
「どういう事、ですか?」
「ヴィルが呪いを込めた差し入れを手にネージュくんの楽屋を訪ねた時、最初に行動を起こしたのは私だ。……その時すでに、ユウくんはそこに来ていた」
「ユウのヤツ、メシも食わねえで用事があるっつって飛び出していっちまったんだ。オレ様もついてってやったんだゾ」
「そうだったんだね。……私は己の嘆きに囚われ、周囲への注意が疎かになっていたんだ。ユウくんたちが既に来ている事にも気づけていなかった」
ネージュを逃がし、呪いの込められたジュースは駆けつけたカリムが叩き落として、ヴィルの呪いの直接的な被害者は出ずに済んだ。
しかし、変質したジュースを見てグリムが悲鳴を上げた事で、ヴィルは悠が一部始終を見ていた事に気づいてしまった。
「もしあの時、ユウくんが先に来ている事に私が気づけていたら、私が冷静に足を止め、彼が先に行動していたら……ヴィルのオーバーブロットは防げたかもしれない」
「ルークサン……」
「私は彼の愛する人の前で、彼の醜い部分を暴いてしまった。ヴィルが一番、醜い所を見せたくなかった相手に、全てを見させてしまった」
「……あの時、オレ様が驚いて叫んじまったから、ヴィルに気づかれて……そしたら、ヴィルが怖い顔で笑いはじめて……」
グリムが怯えたように身震いする。
『あー、なるほど。さっきは「ヴィル氏の悪事の一部始終をハシバ氏が目撃、ヴィル氏が自暴自棄になってオーバーブロット」っていう当時の展開を途中まで再現しちゃってたワケか』
『だからユウさんは自己防衛本能が働いて、別人のフリをしたんだね。同じ展開にしないために』
「……もっともらしい言い訳をしおって」
忌々しげに吐き捨てているが、セベクの視線は悲しげに揺らいでいた。
「……事情は理解した」
シルバーは真剣な表情で頷いている。
「ユウは自分を責めている様子だが……俺には彼に悪い所があったとは思えない」
「いや、ルーク先輩が駆けつける前に、ヤツが行動を起こせばよかったのではないか?ルーク先輩より先にその場にいたのだろう?」
「おう。でも、子分は静かにしてろっつって、ヴィルとネージュの様子を見てたんだ」
「その時にさっさと間に入っていれば、事態は未然に防げただろう。……ユウもそう思ったからこそ、悔いているのだろうが」
「……ユウくんは、ヴィルを信じたかったのだろう。例え長年のライバルでも、害する事はしないはずだと」
ルークが呟くように言う。
「二人はずっと惹かれ合っていた。『VDC』の合宿で距離は更に近づき、優勝していれば……いや、何事もなく大会を終えていれば、きっと二人は結ばれていた」
誰もがルークの言葉に黙って耳を傾ける。
まだ互いを知らない入学式から物語は始まった。
悠の愛らしい顔立ちと凛とした佇まい、ざわめきの中でもよく通る澄んだ声に才能を見出したヴィルは、身分を隠して悠の支援者となった。
悠は当時ほぼ孤立無援の状況で、与えられた顔も声も知らない支援者の温情に感謝を抱き、いつしかそれは恋心に変わっていった。
二人は日々交流を重ね理解を深めた。才能が二人の接点となり、境遇への理解が互いの支えとなって、近しい人間から見れば傍にいるのが当然と思えるほど、二人の幸福は目前にあった。
「だがあの日、ユウくんがネージュくんと出会ってしまった」
世界一となる舞台を前に、ヴィルはかなりの緊張状態だった。ずっと対抗心を燃やしてきた相手との直接対決に、複雑な思いがあっただろう。
そんな時、よりにもよってリハーサルの直前、ネージュが悠の手を引いて会場に到着したのを見てしまった。
出会いも暴漢に絡まれていたネージュを悠が助けるという劇的なもので、その後のネージュの行動は、まるで悠と結ばれようとしているかのように運命的に見えた。
録画データの確認依頼の際に絡まれた悠を今度はネージュが救い、楽屋に帰る道中で話し込んでいたという。事後にSNSでの目撃談から繋ぎ合わせただけの情報でも、仕組まれているのではないかと疑うほど出来すぎた展開だった。
無論、ただの偶然であり、現実には悠の方はネージュへの苦手意識が強くある。
「同じ事が起こっても他の誰かだったなら、ヴィルが揺らぐ事など無かった。……相手が悪かった」
決定打となったのが、不利を悟らされたロイヤルソードアカデミーのパフォーマンスだ。
自分のプライド。叶えたい恋。どちらも奪おうとするネージュへの嫉妬と憎悪。
最後の一線を越えるには十分すぎた。
「誰も、何も悪くない。……何もかも、不運だったんだ。あの日は」
「……ルークサン……」
『栄光を奪っていくライバルの排除、と同時に、叶わない恋の成就。なるほど「幸せな夢」だよね』
「今からでも互いが一歩踏み出せば、二人は結ばれる事が出来る。決して叶わない恋ではないんだ」
「誰からどう見ても両思いだし、ヴィルサンの事を応援してる寮生もいっぱいいるんだけどね」
「ユウは負い目があるから言わないのだとして、ヴィル先輩は何故、想いを告げない?」
「……ヴィルはオーバーブロットした時に、ユウくんを殺そうとしたんだ」
ルークの答えに緊張が走る。
「彼を独占するために。……これ以上誰にも傷つけさせないために、と」
『オーバーブロットした魔法士は、理性を失った怪物も同然。欲望と妄執の塊となり果てる。……まぁ、順当なトコっすな』
「ヴィルはその事を後悔し、己の暴力性を知って自信を失っている。彼が元の世界に帰る事を目標としている事を言い訳に、聞き分け良く振る舞って逃げている」
「……そうだ。ユウクン、元の世界に帰るつもりなんだよね。……ずっとそう言ってるし」
「ああ……現実はなんて非情なんだ。世界を超えて出会い愛し合う二人を、悪戯に引き裂いていく……」
ルークが盛大に嘆き顔を俯ける。何とも言えない空気に互いに顔を見合わせる。
『あー……まぁ、二人の事は今は置いておくとして。ヴィル氏を目醒めさせる方法を考えないと』
未だに『イミテーション』の姿を直接は確認できていないが、悠の様子を見るに、ヴィルを目醒めさせる作戦に加えるには不安が大きい。トラウマが刺激されてまともに動けなくなる可能性がある。
で、あれば彼がいなくても行える作戦を考え、悠には『イミテーション』への対応に専念してもらうべきだろう。
そこに高い確率でヴィルが居合わせるだろう、という問題は今は度外視するしかない。
『とりま、寮でヴィル氏と寝食を共にしてたポムフィオーレの人、なんか……んあ?』
『どうしたの?兄さん』
イデアが上げた素っ頓狂な声を拾い、オルトが首を傾げる。
『いや、いま位置情報見てたんだけど……』
『位置情報?……えっ!?』
「一体どうしたの?」
「ええい、画面が見えてない僕たちにも解るように話せ!」
しびれを切らしたセベクが怒鳴ると、イデアのタブレットが地図を映した。霊素などの情報を元にマーキングされた人物の位置情報が、リアルタイムで反映されている。クリスタル・ギャラリアのカフェにいるセベクたちの表示もあるが、注目すべきはそこではない。
『……ハシバ氏、今、ヴィル氏と一緒にいる』
カフェの扉の向こうに、悠の背中が消える。無言で見送った面々が、気まずそうに顔を見合わせた。
『ハシバ氏荒れてるな~…………当たり前だけど』
「常々思うが、ヤツのマレウス様への無礼な態度はどうしても許せん!若様は何故あのような者に温情など向けられるのだ!」
『マレウス氏がどう思ってるかは知らんけど、少なくとも封印上書きのダメージとか、この夢の状況とか、ハシバ氏のストレス源にはなってるよね。「よかれと思って」だとしても』
「そっ……れは……」
『ハシバ氏に、マレウス氏がいなけりゃこんな事にはなってない、って考えが浮かぶのも無理ないよ。まぁそれ以上に「全部自分のせいだ」ってあの子は思ってるんだろうけど』
「え……?」
『ハシバ氏、ここに来てから飲み物しか飲んでないでしょ。グリム氏と並ぶ食欲の権化のくせに、すっごい落ち込むと自分を責めて、その食欲も無くなるんだよ』
全員の視線が悠の座っていた席に向けられる。唯一その席に届けられた紅茶の入っていたカップが、事実を示していた。
タブレットのスピーカーから溜め息の音が漏れる。
『ヴィル氏相手ならハシバ氏で楽勝かと思ったけど、考えが甘すぎたかな。ヴィル氏の態度に結構ダメージ受けてたっぽいし』
「……無理も無い。あの時のヴィルの表情、オーバーブロットする直前と同じだった」
ルークがぽつりと呟く。
「思い出してしまったのだろう。……彼の絶望を、あの時の様子を」
「……そっか。ユウクンはヴィルサンがオーバーブロットした現場に居合わせたんですよね」
「……その時の話、なのか?」
シルバーが疑問を口にする。同席者の視線を浴びつつ少し考え込んでから、意を決したように顔を上げた。
「以前、ユウが言っていたんだ。『ヴィル先輩の夢が叶うのを邪魔したのは自分だから、自分には彼に助けを求める資格など無い』と」
「……それは本当かい?」
ルークが険しい表情で尋ねれば、シルバーは迷い無く頷く。
「とても嘘には聞こえなかった。だが詳しい事情を話す事もなかった。訊く事も出来ないまま、ここまで来てしまったが……」
「それって、ユウクンはヴィルサンがオーバーブロットしたのも自分のせいだと思ってるって事?」
「話を聞く限り、そういう事だと思うが」
視線は事情を知っているであろうルークに向けられる。ルークの方は変わらず険しい表情で考え込み、やがて深々と息を吐いた。
「……誤解の無いように言っておくが、ヴィルのオーバーブロットは決して、ユウくんだけが原因で起きたものではない」
「勿論、解っている」
面々が了解を示すのを確認してから、ルークは口を開く。
「……確かに、最後の引き金を引いたのはユウくんだと言えなくもない。単純な時系列だけを見れば、だが」
「どういう事、ですか?」
「ヴィルが呪いを込めた差し入れを手にネージュくんの楽屋を訪ねた時、最初に行動を起こしたのは私だ。……その時すでに、ユウくんはそこに来ていた」
「ユウのヤツ、メシも食わねえで用事があるっつって飛び出していっちまったんだ。オレ様もついてってやったんだゾ」
「そうだったんだね。……私は己の嘆きに囚われ、周囲への注意が疎かになっていたんだ。ユウくんたちが既に来ている事にも気づけていなかった」
ネージュを逃がし、呪いの込められたジュースは駆けつけたカリムが叩き落として、ヴィルの呪いの直接的な被害者は出ずに済んだ。
しかし、変質したジュースを見てグリムが悲鳴を上げた事で、ヴィルは悠が一部始終を見ていた事に気づいてしまった。
「もしあの時、ユウくんが先に来ている事に私が気づけていたら、私が冷静に足を止め、彼が先に行動していたら……ヴィルのオーバーブロットは防げたかもしれない」
「ルークサン……」
「私は彼の愛する人の前で、彼の醜い部分を暴いてしまった。ヴィルが一番、醜い所を見せたくなかった相手に、全てを見させてしまった」
「……あの時、オレ様が驚いて叫んじまったから、ヴィルに気づかれて……そしたら、ヴィルが怖い顔で笑いはじめて……」
グリムが怯えたように身震いする。
『あー、なるほど。さっきは「ヴィル氏の悪事の一部始終をハシバ氏が目撃、ヴィル氏が自暴自棄になってオーバーブロット」っていう当時の展開を途中まで再現しちゃってたワケか』
『だからユウさんは自己防衛本能が働いて、別人のフリをしたんだね。同じ展開にしないために』
「……もっともらしい言い訳をしおって」
忌々しげに吐き捨てているが、セベクの視線は悲しげに揺らいでいた。
「……事情は理解した」
シルバーは真剣な表情で頷いている。
「ユウは自分を責めている様子だが……俺には彼に悪い所があったとは思えない」
「いや、ルーク先輩が駆けつける前に、ヤツが行動を起こせばよかったのではないか?ルーク先輩より先にその場にいたのだろう?」
「おう。でも、子分は静かにしてろっつって、ヴィルとネージュの様子を見てたんだ」
「その時にさっさと間に入っていれば、事態は未然に防げただろう。……ユウもそう思ったからこそ、悔いているのだろうが」
「……ユウくんは、ヴィルを信じたかったのだろう。例え長年のライバルでも、害する事はしないはずだと」
ルークが呟くように言う。
「二人はずっと惹かれ合っていた。『VDC』の合宿で距離は更に近づき、優勝していれば……いや、何事もなく大会を終えていれば、きっと二人は結ばれていた」
誰もがルークの言葉に黙って耳を傾ける。
まだ互いを知らない入学式から物語は始まった。
悠の愛らしい顔立ちと凛とした佇まい、ざわめきの中でもよく通る澄んだ声に才能を見出したヴィルは、身分を隠して悠の支援者となった。
悠は当時ほぼ孤立無援の状況で、与えられた顔も声も知らない支援者の温情に感謝を抱き、いつしかそれは恋心に変わっていった。
二人は日々交流を重ね理解を深めた。才能が二人の接点となり、境遇への理解が互いの支えとなって、近しい人間から見れば傍にいるのが当然と思えるほど、二人の幸福は目前にあった。
「だがあの日、ユウくんがネージュくんと出会ってしまった」
世界一となる舞台を前に、ヴィルはかなりの緊張状態だった。ずっと対抗心を燃やしてきた相手との直接対決に、複雑な思いがあっただろう。
そんな時、よりにもよってリハーサルの直前、ネージュが悠の手を引いて会場に到着したのを見てしまった。
出会いも暴漢に絡まれていたネージュを悠が助けるという劇的なもので、その後のネージュの行動は、まるで悠と結ばれようとしているかのように運命的に見えた。
録画データの確認依頼の際に絡まれた悠を今度はネージュが救い、楽屋に帰る道中で話し込んでいたという。事後にSNSでの目撃談から繋ぎ合わせただけの情報でも、仕組まれているのではないかと疑うほど出来すぎた展開だった。
無論、ただの偶然であり、現実には悠の方はネージュへの苦手意識が強くある。
「同じ事が起こっても他の誰かだったなら、ヴィルが揺らぐ事など無かった。……相手が悪かった」
決定打となったのが、不利を悟らされたロイヤルソードアカデミーのパフォーマンスだ。
自分のプライド。叶えたい恋。どちらも奪おうとするネージュへの嫉妬と憎悪。
最後の一線を越えるには十分すぎた。
「誰も、何も悪くない。……何もかも、不運だったんだ。あの日は」
「……ルークサン……」
『栄光を奪っていくライバルの排除、と同時に、叶わない恋の成就。なるほど「幸せな夢」だよね』
「今からでも互いが一歩踏み出せば、二人は結ばれる事が出来る。決して叶わない恋ではないんだ」
「誰からどう見ても両思いだし、ヴィルサンの事を応援してる寮生もいっぱいいるんだけどね」
「ユウは負い目があるから言わないのだとして、ヴィル先輩は何故、想いを告げない?」
「……ヴィルはオーバーブロットした時に、ユウくんを殺そうとしたんだ」
ルークの答えに緊張が走る。
「彼を独占するために。……これ以上誰にも傷つけさせないために、と」
『オーバーブロットした魔法士は、理性を失った怪物も同然。欲望と妄執の塊となり果てる。……まぁ、順当なトコっすな』
「ヴィルはその事を後悔し、己の暴力性を知って自信を失っている。彼が元の世界に帰る事を目標としている事を言い訳に、聞き分け良く振る舞って逃げている」
「……そうだ。ユウクン、元の世界に帰るつもりなんだよね。……ずっとそう言ってるし」
「ああ……現実はなんて非情なんだ。世界を超えて出会い愛し合う二人を、悪戯に引き裂いていく……」
ルークが盛大に嘆き顔を俯ける。何とも言えない空気に互いに顔を見合わせる。
『あー……まぁ、二人の事は今は置いておくとして。ヴィル氏を目醒めさせる方法を考えないと』
未だに『イミテーション』の姿を直接は確認できていないが、悠の様子を見るに、ヴィルを目醒めさせる作戦に加えるには不安が大きい。トラウマが刺激されてまともに動けなくなる可能性がある。
で、あれば彼がいなくても行える作戦を考え、悠には『イミテーション』への対応に専念してもらうべきだろう。
そこに高い確率でヴィルが居合わせるだろう、という問題は今は度外視するしかない。
『とりま、寮でヴィル氏と寝食を共にしてたポムフィオーレの人、なんか……んあ?』
『どうしたの?兄さん』
イデアが上げた素っ頓狂な声を拾い、オルトが首を傾げる。
『いや、いま位置情報見てたんだけど……』
『位置情報?……えっ!?』
「一体どうしたの?」
「ええい、画面が見えてない僕たちにも解るように話せ!」
しびれを切らしたセベクが怒鳴ると、イデアのタブレットが地図を映した。霊素などの情報を元にマーキングされた人物の位置情報が、リアルタイムで反映されている。クリスタル・ギャラリアのカフェにいるセベクたちの表示もあるが、注目すべきはそこではない。
『……ハシバ氏、今、ヴィル氏と一緒にいる』