7−3:蒼炎の砦

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 ■■月■■日二十一時十八分、LODエリア9ー40より緊急魔法災害警報入電。同時刻に通信終了により警報停止。
 発信元IDは魔導ヒューマノイド・ORTHO。現在LODエリア9ー40内、賢者の島に滞在中。
 魔法機動隊・賢者の島駐在所への連絡を試みるが通信障害により失敗。警察、消防、船舶関連の民間事業者など、賢者の島内部の施設に対し連絡を試みるも同じく通信障害により失敗。
 衛星からの観測によって賢者の島上空の撮影に成功。島全体を正体不明の物質が覆っていると確認。表面の解析によって何らかの魔法によって生じたエネルギーフィールドであると推測。
 現地調査を行ったカローンの報告により、エネルギーフィールドを目視で確認。カローンに搭載されたプロテクトをエネルギーフィールドの出力が凌駕しており、突入は困難。オートパイロットのカローンを接近させた所、周辺を覆う茨とおぼしき物質によって内部に取り込まれ、その後通信途絶。内部で機能停止したものと考えられる。
 目視確認の範囲で家屋等の損壊は見られず。また活動しているものも見られない事から、内部での破壊活動及びその兆候は無いものと見られる。
 エネルギーフィールドは時速約六キロから九キロの速度で領域を広げ、周辺海域を侵食中。黎明の国政府へ、賢者の島周辺の住民の避難を急ぐよう通達。
 テスト用通信衛星からのログを確認。引き続き注視。

 関係各所への連絡と情報の集約、それらの指示を担い、『S.T.Y.X.』の所長は息つく暇さえ無い。
 息子との連絡も取れない。コールだけは続けているが、通信障害で全く繋がらない。高確率で賢者の島の内部、ナイトレイブンカレッジにいるであろうと予測はつくが、だからこそ親として心配な気持ちもある。
 自分と同じくナイトレイブンカレッジに子どもが通っている部下に、賢者の島での魔法災害の発生を話すのも正直気乗りしなかった。だが彼らには知る権利がある。何より機動隊と情報処理班の主力である人物だ。彼らの力は事態解決に必要となるだろう。
 もっとも、いつも気丈な女傑である彼女が、話を聞いて卒倒したのは予想外だった。今は夫が医務室に付き添っている。
 不幸中の幸いか、まだ有人でエネルギーフィールドを突破する手段は見つかっていない。エネルギーフィールドの情報も足りていない。彼らの出番はもう少し先だろう。その時に動けるよう、休んでもらう事も必要だ。
 本来であれば、魔法災害の被害者の関係者は、当該事案に関わるべきではない。だが組織の責任者である自分たち夫婦がまずその例外となっているし、今回の災害の規模はそんな悠長な事を言っていられないものだと予感がしている。平凡な役職者の勘、だが。
 戦力という意味では、賢者の島の中には二つも伝統ある魔法士養成学校があり、その片方、ナイトレイブンカレッジの生徒の中には、『S.T.Y.X.』本部で起きた緊急事案に対処し収めた者たちがいる。内部の状況が不明なので安易に期待はできないものの、彼らの存在を完全に無視する事も難しい。勿論、本当に彼らに頼るしかなくなった時の話ではあるが。
 思考は巡らせるが、『天才』のように一足飛びに真相に近付くような真似は自分には出来ない。ただ事実から先の展開を推測し、必要な対処を先んじて講じておく。それが精一杯だ。
 流れ星が落ちてくる、その時を待つ。

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