6−1:影闇に揺蕩う悲嘆の暗渠
………
静かな世界でグリムは目を覚ました。
気温は低くないけど冷たい部屋の中、普段よりも清潔だけど硬いベッドの上にいる。
「こ、ここはどこだ……?」
首元に違和感を覚えて前足を触れさせると、全く知らない固い何かがはめられていた。学園長からもらった魔法石も、お気に入りのリボンも無い。ひっかいても外れたり壊れたりする様子は無い。
記憶を辿ろうと考えて、おぼろげながら酷い記憶にぶち当たる。
空腹を満たすためにコロシアムを彷徨って、探しにきた監督生を敵と間違えて攻撃した。
前足に残る肉を裂く感触。相棒の身体を抉った爪に目をやり、グリムは震える。
「オレ様……なんであんな事を?」
前足には汚れ一つ無い。血なんてどこにも付いていない。でもその臭いを思い出しそうになり、恐ろしくなって必死に頭を振る。
しかし悲観的な思考は止まらない。
「……ユウの事を引っかいたから、こんな所に連れてこられたのか?」
いつの間にか檻に入れられていて、気づいたら運ばれていた。暴れても檻が壊れたり手放されたりする事はなく、やがてオンボロ寮に連れてこられて、見慣れた顔を見つけた。
彼らはグリムを捕らえた侵入者の仲間と戦っていた。悠はグリムの顔を見て、驚きと安堵を見せていた。再会が嬉しかったのはグリムも同じだ。
だけど合流は叶わなかった。オンボロ寮の建物が崩れだし、侵入者たちはグリムや捕らえた者を連れてさっさと脱出したのだ。建物の崩れた大きな音は、グリムの耳にも聞こえた。
離れる直前の光景をグリムは思い返す。
エースもデュースも、エペルもいた。侵入者と戦ってボロボロになっていた。
悠も必死で戦っていた。『最強の子分』が敵に負けていた事より、その隣で一緒に戦えなかった事にグリムは無念を感じていた。
「もしかして、もう一生、ここから出られないのか……?」
水色の瞳に涙が溜まり、あっという間に溢れ出す。毛皮を濡らしシーツを濡らし、それでも止まらない。
「イヤなんだゾ……オンボロ寮に……帰りたい……」
いつもはうっとおしくてたまらない、自分を撫でる手が恋しい。
重いと文句を言う割に、いつも肩車や抱っこをしてくれる優しさが恋しい。
とんでもない音痴だし怒る時はやたら響いてうるさいしマジギレしてる時は低くて怖いのに、褒めてくれる時は柔らかくて心地よく感じるあの声が恋しい。
寒い夜も暖かくて、優しくて安心する匂いがして、腕の中に潜り込んだら何も言わずに受け入れてくれる、あの温もりが恋しい。
『グリム』
「……ユウ……」
頭の中で、一緒に過ごした思い出が駆けめぐる。このまま二度と会えないなんてイヤなのに、抗う術も無く『許されないのではないか』という漠然とした不安もやたら色濃い。
冷たいベッドの上で慣れた温もりを探しながら、泣き疲れたグリムはやがて眠りに落ちた。
………
静かな世界でグリムは目を覚ました。
気温は低くないけど冷たい部屋の中、普段よりも清潔だけど硬いベッドの上にいる。
「こ、ここはどこだ……?」
首元に違和感を覚えて前足を触れさせると、全く知らない固い何かがはめられていた。学園長からもらった魔法石も、お気に入りのリボンも無い。ひっかいても外れたり壊れたりする様子は無い。
記憶を辿ろうと考えて、おぼろげながら酷い記憶にぶち当たる。
空腹を満たすためにコロシアムを彷徨って、探しにきた監督生を敵と間違えて攻撃した。
前足に残る肉を裂く感触。相棒の身体を抉った爪に目をやり、グリムは震える。
「オレ様……なんであんな事を?」
前足には汚れ一つ無い。血なんてどこにも付いていない。でもその臭いを思い出しそうになり、恐ろしくなって必死に頭を振る。
しかし悲観的な思考は止まらない。
「……ユウの事を引っかいたから、こんな所に連れてこられたのか?」
いつの間にか檻に入れられていて、気づいたら運ばれていた。暴れても檻が壊れたり手放されたりする事はなく、やがてオンボロ寮に連れてこられて、見慣れた顔を見つけた。
彼らはグリムを捕らえた侵入者の仲間と戦っていた。悠はグリムの顔を見て、驚きと安堵を見せていた。再会が嬉しかったのはグリムも同じだ。
だけど合流は叶わなかった。オンボロ寮の建物が崩れだし、侵入者たちはグリムや捕らえた者を連れてさっさと脱出したのだ。建物の崩れた大きな音は、グリムの耳にも聞こえた。
離れる直前の光景をグリムは思い返す。
エースもデュースも、エペルもいた。侵入者と戦ってボロボロになっていた。
悠も必死で戦っていた。『最強の子分』が敵に負けていた事より、その隣で一緒に戦えなかった事にグリムは無念を感じていた。
「もしかして、もう一生、ここから出られないのか……?」
水色の瞳に涙が溜まり、あっという間に溢れ出す。毛皮を濡らしシーツを濡らし、それでも止まらない。
「イヤなんだゾ……オンボロ寮に……帰りたい……」
いつもはうっとおしくてたまらない、自分を撫でる手が恋しい。
重いと文句を言う割に、いつも肩車や抱っこをしてくれる優しさが恋しい。
とんでもない音痴だし怒る時はやたら響いてうるさいしマジギレしてる時は低くて怖いのに、褒めてくれる時は柔らかくて心地よく感じるあの声が恋しい。
寒い夜も暖かくて、優しくて安心する匂いがして、腕の中に潜り込んだら何も言わずに受け入れてくれる、あの温もりが恋しい。
『グリム』
「……ユウ……」
頭の中で、一緒に過ごした思い出が駆けめぐる。このまま二度と会えないなんてイヤなのに、抗う術も無く『許されないのではないか』という漠然とした不安もやたら色濃い。
冷たいベッドの上で慣れた温もりを探しながら、泣き疲れたグリムはやがて眠りに落ちた。
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