6−1:影闇に揺蕩う悲嘆の暗渠



 鏡面が水面のように揺れる。
 何も映さなかった闇色に、景色が映る。


 光が溢れている。
 雲の上、太陽を遮るものが無い場所。
 厳めしい門を越えて、険しい山の上、雲よりも高い場所に神殿が建っている。
 視界が建物の中とおぼしき場所に移った。体格は筋骨隆々ながら、優しい顔立ちの男性が赤子を抱いている。その傍らには女性と、羽根の生えた仔馬がいた。
 誰もが新たなる生命の訪れを祝福している。一人を除いて。

 陰気な大男は、青く燃える髪をしていた。赤子を抱く男性に皮肉を向け、対する男性は明るく前向きな言葉を返す。
 男性には皮肉もまるで効いてないようで、不愉快そうな顔のひとつも見せない。それにますます男の青い炎は暗さを増す。

『ハッ!神が過労死か!おかしくて死にそうだ。願ったりだ……死んでくれたらな!』

 その言葉が意味する『神』が誰の事なのか、彼以外の誰も知り得ない。


 鏡面が揺れる。
 映っていたものが溶けて消えていく。

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