4:沙海に夢む星見の賢者
………
誰もが寝静まった夜。
小さな影がゆらりと起きあがる。無意識に鼻を動かしながら、ふらふらと部屋を移動していく。
大きな部屋で足を止めた。ところどころヒビの入った地面を這い蹲り、匂いを探る。そして一際大きなヒビの中心近くで動きを止めた。
「………見つけた、黒い石……」
食欲を誘う香しい匂いがグリムの鼻をくすぐる。堪えきれない、という様子でそれを口に放り込んだ。かみ砕き、味わい、飲み込む。
「これは……スパイシーでありながら深いコクのあるまろやかなお味……」
普段は味わえない至福のひととき。口の中で解けて蕩けるその味に浸る。あまりに一瞬で消えてしまう、その味がすでに恋しい。
「…………もっと食いたい。黒い石が、もっと欲しい……ヒヒヒ」
普段とは違う不気味な笑みを浮かべて、グリムはふらふらと来た道を戻った。寝ていた部屋に戻ると、人間が寝ている方のベッドに潜り込む。
鼻を動かすと、もうすっかり馴染んだ優しい匂いがした。腕の間に身を潜り込ませると、人間の手がグリムの頭を撫でる。身を委ねていると石への食欲が消えて、眠気がずっと強くなった。
寒い夜が遠のいていく。グリムは抗わずに夢の世界に落ちていった。
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誰もが寝静まった夜。
小さな影がゆらりと起きあがる。無意識に鼻を動かしながら、ふらふらと部屋を移動していく。
大きな部屋で足を止めた。ところどころヒビの入った地面を這い蹲り、匂いを探る。そして一際大きなヒビの中心近くで動きを止めた。
「………見つけた、黒い石……」
食欲を誘う香しい匂いがグリムの鼻をくすぐる。堪えきれない、という様子でそれを口に放り込んだ。かみ砕き、味わい、飲み込む。
「これは……スパイシーでありながら深いコクのあるまろやかなお味……」
普段は味わえない至福のひととき。口の中で解けて蕩けるその味に浸る。あまりに一瞬で消えてしまう、その味がすでに恋しい。
「…………もっと食いたい。黒い石が、もっと欲しい……ヒヒヒ」
普段とは違う不気味な笑みを浮かべて、グリムはふらふらと来た道を戻った。寝ていた部屋に戻ると、人間が寝ている方のベッドに潜り込む。
鼻を動かすと、もうすっかり馴染んだ優しい匂いがした。腕の間に身を潜り込ませると、人間の手がグリムの頭を撫でる。身を委ねていると石への食欲が消えて、眠気がずっと強くなった。
寒い夜が遠のいていく。グリムは抗わずに夢の世界に落ちていった。
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