4:沙海に夢む星見の賢者



「ユウさん、グリムくん。起きてください」
 肩を揺さぶられて目を覚ます。
 よく寝たような気がするけど、同時に妙な夢も見た気がする。不吉な夢。
「おはようございます。ジェイド先輩」
「おはようございます。……噂の天使の寝顔を見られて役得です」
「噂?」
「一晩堪能した人が羨ましいですね」
「たたた堪能なんかしてないっ!!ちょっと早く起きただけだ!!」
「あ、アーシェングロット先輩もおはようございます」
「おっ、……おはようございます」
 いつものキリッとした感じを取り戻す。ジェイド先輩の笑顔が非常に楽しそうだ。
「今日のアズールは眠そうですね。ヘマはなさらないようにお願いしますよ」
「するわけないだろ」
 じゃれあいを聞きつつ、まだ夢の中にいるグリムの肩を揺さぶる。
「グリム、ほら起きて」
「ふにゃ……オアシスまで行進かぁ?」
「行進しないために早起きをしたんです」
 先輩たちに手伝ってもらって着替えを済ませる頃には、グリムもしゃっきりと目が覚めていた。オクタヴィネル仕様のリボンタイもばっちり。
「そういえば、フロイド先輩は?」
「厨房に行っています」
「朝の行進の準備を始める寮生を捕まえて、朝食の準備に回るように説得しました。今頃はおいしい朝ご飯づくりが進んでますよ」
 ジェイド先輩は楽しそうな笑顔だ。昨日のシーフードピザもおいしかったもんなぁ。スカラビアの料理もおいしいけど、モストロ・ラウンジの食事も美味しいし。
 休みに入る前は食事の心配をするほどだったのに、蓋を開けてみたら食事だけめちゃくちゃ充実してるなぁ。
 それ以外はしんどいけど。
「さあ、行きますよ」
 アーシェングロット先輩の号令に従って部屋を出る。
 目指すはアジーム先輩の部屋だ。


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