4:沙海に夢む星見の賢者




 鏡面が水面のように揺れる。
 何も映さなかった闇色に、景色が映る。


 荒涼とした砂漠。静まりかえり、温度を感じない風景。
 やがて男が現れる。
 一人は質の良い布を纏った位の高そうな男、一人は明らかに襤褸を纏った下男。

 下男から情報を受け取った男は、さらに砂漠を駆けていく。
 飛び去っていく光を追って、馬を走らせた。

 やがて光の行く先に洞窟が現れる。
 肉食獣の顔をした洞窟は、険しい表情で来訪者を見下ろしていた。

『よいか、ランプだ。ランプを取ってくるのだ』

 男は狡猾な笑みを浮かべて、誰かに指示を出していた。
 その相手まではよく見えない。

 ただどうしようもなく、不安を感じる光景だった。


 鏡面が揺れる。
 映っていたものが溶けて消えていく。


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