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短編

「━━疾く我が前から失せよ、痴れ者!!」
地を這う様な低く怒気を含んだ声が静かな廃墟内に響く。到底眼前の少女が出したとは思えぬその声を皮切りに戦いの火蓋が切られた。
いつも見かける修道女の黒い服装ではなく、全身を金の鎧で身を包んでいるアーチャー。あの姿こそ本来の彼女…つまりは本気の状態だろう。
アーチャーの真正面を覆い尽くす様に黄金の環が幾つも現れる。その金の光から射出された武器は豪雨の如くセイバーに襲いかかる。
「っ!?危ない!!」
咄嗟にセイバーは傍らに立っていたマスターを物陰へと押し隠し、そのまま風王鉄槌(ストライクエア)の風圧で第一波を凌ぐ。
休む暇を与えんとばかりに第二、第三波の宝物の嵐がセイバーへと牙を向く。寸での所で躱し、その姿を現した聖剣で弾きながら耐え忍ぶ。
彼女の宝具、『王の財宝(ゲートオブバビロン)』による戦場の制圧力はかなり厄介だ。特にこの場所の様に狭く動ける範囲が限られている所は尚のこと。
こうして発動されてしまっては無理を承知で突撃をする他はじっと耐えるしかない。だが、その耐え続けるのにも不安があった。
まず第一にマスターへの被害だ。今はまだ物陰に潜んでもらっている為、武器の雨の被害に合わずに済んでいるが、アーチャーがいつ彼女に標準を合わせるか分からない。
その二にこの廃墟の耐久性だ。ただでさえ彼女の『王の財宝』はコンクリート製や鉄製の建物であっても破壊してしまう程の威力を誇る。今にも崩れ落ちそうなこの建物がこの嵐に長時間耐えられるはずが無い。
そして最後、セイバー自身の体力が持つかどうかだ。サーヴァントだし、騎士として鍛錬を積み上げた体だから人よりは体力に自信はある。あるが、それでも限界というものは存在する。
このままで居ては彼女の『王の財宝』の攻撃を受け流し続けるのが困難になってくるだろう。
だか、怒り狂うアーチャーの猛攻は激しさを増していき、セイバーをその場に縫い付け、1歩たりとも動く事を許さなかった。
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