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短編

「うぅ…あーさー…」
玄関からバタンッ!と大きな音がしたと思ったら次はドタドタと派手な足音。
こんな音が立つ時は決まっている。教会に住む我儘お姫様が”ダイスキ”な王子様にこっ酷く振られた時だ。
足音を辿って見に行くと可哀想な雌猫はソファの隅っこ、体を縮こまらせながらグスリと大きく鼻を鳴らしながら泣いていた。
熟れた柘榴の瞳からは透明な雫が柔らかな白い頬をつたいぼとり、ぼとりと服に落ちて濃い染みを幾重にも作っていく。
涙で潤んだ大きな眼、泣き腫らした赤い目元、きゅっと顰められた眉。何時もの女王様っぷりがなりを潜めたその姿は悲痛そうでありながらもとても綺麗で、思わずあの英雄王という事を忘れて見惚れてしまう。
…こう思ってしまうのも毎度の事だ。情けない事に。
気分屋なおっかない女王様が癇癪を起こし始める前に慰めてやろう、と俺は溜息を1つ零しホットミルクでも出してやろうとキッチンに向かった。
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