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twst短編

身を焦がすような恋をした。

あなたの浮かべる表情のすべてが好きだった。優しくわらう顔や、仕方ないなと苦笑する顔を見るたびに、僕の胸はぐちゃぐちゃに掻き回される。


親しくなるにつれて、あなたはよく笑うようになった。けれどふとした瞬間、あなたはどこか、遥か遠くを見つめていることがある、その静かな横顔が綺麗で、僕は堪らなく好きだった。たとえそのどこかが、僕が存在しない世界だったとしても。


いつからか僕は、貴女の全てを手に入れたくて仕方がない。貴女のの心も体も誰にも渡したくないというこの感情が、恋ではなくて何だと言うのか。









「先輩のそれは、恋ではなくて、ただの執着ではありませんか」









監督生さんの、硝子玉のような黒い瞳が、僕の恋を、否定する。









「先輩はきっと、恋と執着を履き違えていらっしゃる」



冷酷なまでに淡々と、無表情に監督生さんが告げた言葉が、鋭い刃物になって僕の内蔵を抉る。何度も何度も刃を突き立てて、僕の恋を殺そうと、する。
そうして、「告白は、聞かなかったことにします」と、監督生さんは足元へと視線を落とした。


貴女はどこまでも残酷だった。









きっと僕は愚かだった。どこまでも自惚れていた。心のどこかで、僕を選んでくれると思っていた。


貴女は僕を選ばなかった。


貴女がいなくなった世界は、ひどく空虚だ。



僕は貴女が欲しかった。ころころとよく変わる表情が好きだった。願はくは、貴女に僕の隣にいて欲しかった。貴女が選ばなかった想いは、貴女にかける呪いにすらならなかったけれど。





わたしをころすあの瞳






本当は僕は、陸の人間が鳥を閉じ込めておくように、貴女をそれこそ鳥籠にでも閉じ込めてしまいたかった。逃げ出さないように、ずっと縛ってやりたかった。そうしなかったのは、一重に貴女に嫌われたくなかった僕の弱さであることを、僕だけがただ一人知っている。だから貴女に、僕の恋が執着だったなんて決めつける権利などあるものか。
この弱さこそ、あの想いが執着なんかじゃなかった証明に違いないのだ。



僕は貴女が好きだった。
苦しいほどに、これはまさしく恋だった。





[身を焦がすような恋でした]


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