短編
名前・一人称の設定
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『酔った〜あたまふわふわする』
そうゾロにLINEを送ったのは、飲み会も終盤に近づいた時だった。
『は?』
返信が返ってきたと思ったら、バイブ音と共にスマホの画面に「着信中 ゾロ」と表示される。
「あ…」
今は思いっきり会社の飲み会の最中だし、隣に同僚もいる。
今出ていいのかぼーっとする頭で考えていると、すぐに電話が切れ、追加でLINEが送られてきた。
『悪い、まだ飲み会終わってねェか』
『一杯だけって約束だったよな?どれくらい飲んだんだ』
『飲み会いつ終わる』
矢継ぎ早に飛んできたメッセージに、動きが鈍くなった頭で返信する。
『二杯目少し飲んじゃった…ごめん。あとすこしでおわりそう』
すぐに既読がつき、返信が返ってきた。
『終わったらすぐ電話しろ』
『はーい』
…と返したはいいものの、やっぱり今すぐゾロの声が聞きたくなって。
少しふらつく足で立ち上がると、そっと抜け出してゾロへと電話をかける。
1コール目が鳴り終わる前に、ゾロの声が電話口から聞こえてきた。
少し怒っているのが伝わるような声だ。
『ふらっと、何で二杯目飲んだ』
「あ、えっと」
『おれが許したのは一杯だけだぞ?』
「あの、だって、みたことなくて、めずらしくて、おいしそうで」
我ながら、子供みたいな言い訳だなと思う。
はァ、とため息が電話口の向こうから聞こえてきた気がした。
『強かったのか?どれくらい飲んだ』
「つよかった…さんぶんのいち?ぐらいで、だめ」
『そうか…一杯目は?』
「かしすうーろん」
『まあそれがいつも通りならいいか…歩けるか?』
「あるける、でもちょっとだけふらふら」
まったく、と今度は呆れたような声が聞こえる。
『店どこだ?位置情報送れ』
「え?」
思わず間抜けな声が出る。
『迎えに行く』
「え、でも」
『でもじゃねェよ…まさか2軒目行こうとしてねェよな?』
「…はなしはでてる、みたい」
『まさか行く気か?』
「あ、えっと」
『行くなよ』
…見抜かれていた。
「いっていいか、きこうとしてた…」
『酔ってねェならいいが、今日はダメだ』
「わかった…」
『よし、いい子だ』
ふと優しくなったゾロの声に、胸がきゅんとする。
『今いる店は、最後までいていいから。その代わり、終わったらさっさと出てこい。外で待ってる』
「ん…わかった。ありがとう」
『じゃあ、また後でな』
「うん」
そう言って、電話を切る。
ゾロが迎えにきてくれる…
その嬉しい気持ちを抱えながら、席に戻った。
──────────────
しばらくして、飲み会はお開きになった。
外へ出ると、目立たないところに腕を組んで立っている人影が見える。
今日はお疲れ様でした、と挨拶をして解散をした後、二次会へ向かう人たちに背を向け、私は小走りでゾロの元へと向かった。
「ぞろ〜!」
ふらふらとよろけてしまったが、転ぶ前にゾロが抱き止めてくれた。
「おい、酔ってんのに走ると危ねェだろ」
「ごめんごめん〜ぞろがきてくれたのがうれしくて、えへへ」
「ったく…」
ゾロもまんざらでもなさそうな顔をしている。
「ぞろのにおい〜…」
私は、ゾロの胸に顔をすりすりしながら深呼吸をする。
そんな私の頭を、ゾロはぽんぽんと軽く撫でた。
「ほら、帰るぞ。風邪ひく」
「ん…」
このままだと歩きにくいから、私は渋々ゾロから離れる。
大通りの方に向かおうとすると、ゾロが「こっちじゃねェのか?」と真逆の方向を指差した。
「え…いや、こっちのほうがちかい、はず…」
いつもならゾロの示す方など無視して進むのだが…なにぶん今は酔っているので、私も私で自信がない。
大通りから一本入っただけの道のはずだけど、ゾロが自分が来た方を示しているのなら、そっちの方が正しい、のかな…?
そんなことを考えようとすると、また足元がふらついてしまう。
「おっと」
腰を支えてくれるゾロ。
「…相当酔ってんな」と呟くと、そのまま腰に腕を回し、もう一方の腕を膝裏に滑り込ませ…そのまま、ひょいと抱き上げた。
「わ、ぞろ…?!ちょっと、これ…!」
「あ?歩けねェなら、こうするしかねェだろ」
さも当然のように抱き上げられ、私は顔が熱くなるのを感じる。
ただでさえお酒のせいで熱を持っていたというのに。
普段は適当に担ぎ上げるくせに、こういう時だけお姫様抱っこ…ずるい。
「で?こっちでいいよな?」
「うん…」
本当は違うけれど、どう考えても遠回りだけど、私は黙って頷いた。
だって、少しでも長く、ゾロに抱かれていたかったから。
ゾロが歩き出す。
足を踏み出すたびに伝わってくる振動と、微かに聞こえるゾロの心臓の音、伝わってくるゾロの体温。
その全てが心地よくて、だんだんとまぶたが重くなってくる。
それを察したのか、ゾロが口を開いた。
「眠ィなら、寝ていいぞ」
「ん…」
でも、寝る前に一つだけ言いたくて。
「ねえ、ぞろ」
「ん?」
「だいすき」
「…おれもだ」
そうこたえたゾロの心臓の音が少しだけ速くなるのを感じながら。私は目を閉じた。
そうゾロにLINEを送ったのは、飲み会も終盤に近づいた時だった。
『は?』
返信が返ってきたと思ったら、バイブ音と共にスマホの画面に「着信中 ゾロ」と表示される。
「あ…」
今は思いっきり会社の飲み会の最中だし、隣に同僚もいる。
今出ていいのかぼーっとする頭で考えていると、すぐに電話が切れ、追加でLINEが送られてきた。
『悪い、まだ飲み会終わってねェか』
『一杯だけって約束だったよな?どれくらい飲んだんだ』
『飲み会いつ終わる』
矢継ぎ早に飛んできたメッセージに、動きが鈍くなった頭で返信する。
『二杯目少し飲んじゃった…ごめん。あとすこしでおわりそう』
すぐに既読がつき、返信が返ってきた。
『終わったらすぐ電話しろ』
『はーい』
…と返したはいいものの、やっぱり今すぐゾロの声が聞きたくなって。
少しふらつく足で立ち上がると、そっと抜け出してゾロへと電話をかける。
1コール目が鳴り終わる前に、ゾロの声が電話口から聞こえてきた。
少し怒っているのが伝わるような声だ。
『ふらっと、何で二杯目飲んだ』
「あ、えっと」
『おれが許したのは一杯だけだぞ?』
「あの、だって、みたことなくて、めずらしくて、おいしそうで」
我ながら、子供みたいな言い訳だなと思う。
はァ、とため息が電話口の向こうから聞こえてきた気がした。
『強かったのか?どれくらい飲んだ』
「つよかった…さんぶんのいち?ぐらいで、だめ」
『そうか…一杯目は?』
「かしすうーろん」
『まあそれがいつも通りならいいか…歩けるか?』
「あるける、でもちょっとだけふらふら」
まったく、と今度は呆れたような声が聞こえる。
『店どこだ?位置情報送れ』
「え?」
思わず間抜けな声が出る。
『迎えに行く』
「え、でも」
『でもじゃねェよ…まさか2軒目行こうとしてねェよな?』
「…はなしはでてる、みたい」
『まさか行く気か?』
「あ、えっと」
『行くなよ』
…見抜かれていた。
「いっていいか、きこうとしてた…」
『酔ってねェならいいが、今日はダメだ』
「わかった…」
『よし、いい子だ』
ふと優しくなったゾロの声に、胸がきゅんとする。
『今いる店は、最後までいていいから。その代わり、終わったらさっさと出てこい。外で待ってる』
「ん…わかった。ありがとう」
『じゃあ、また後でな』
「うん」
そう言って、電話を切る。
ゾロが迎えにきてくれる…
その嬉しい気持ちを抱えながら、席に戻った。
──────────────
しばらくして、飲み会はお開きになった。
外へ出ると、目立たないところに腕を組んで立っている人影が見える。
今日はお疲れ様でした、と挨拶をして解散をした後、二次会へ向かう人たちに背を向け、私は小走りでゾロの元へと向かった。
「ぞろ〜!」
ふらふらとよろけてしまったが、転ぶ前にゾロが抱き止めてくれた。
「おい、酔ってんのに走ると危ねェだろ」
「ごめんごめん〜ぞろがきてくれたのがうれしくて、えへへ」
「ったく…」
ゾロもまんざらでもなさそうな顔をしている。
「ぞろのにおい〜…」
私は、ゾロの胸に顔をすりすりしながら深呼吸をする。
そんな私の頭を、ゾロはぽんぽんと軽く撫でた。
「ほら、帰るぞ。風邪ひく」
「ん…」
このままだと歩きにくいから、私は渋々ゾロから離れる。
大通りの方に向かおうとすると、ゾロが「こっちじゃねェのか?」と真逆の方向を指差した。
「え…いや、こっちのほうがちかい、はず…」
いつもならゾロの示す方など無視して進むのだが…なにぶん今は酔っているので、私も私で自信がない。
大通りから一本入っただけの道のはずだけど、ゾロが自分が来た方を示しているのなら、そっちの方が正しい、のかな…?
そんなことを考えようとすると、また足元がふらついてしまう。
「おっと」
腰を支えてくれるゾロ。
「…相当酔ってんな」と呟くと、そのまま腰に腕を回し、もう一方の腕を膝裏に滑り込ませ…そのまま、ひょいと抱き上げた。
「わ、ぞろ…?!ちょっと、これ…!」
「あ?歩けねェなら、こうするしかねェだろ」
さも当然のように抱き上げられ、私は顔が熱くなるのを感じる。
ただでさえお酒のせいで熱を持っていたというのに。
普段は適当に担ぎ上げるくせに、こういう時だけお姫様抱っこ…ずるい。
「で?こっちでいいよな?」
「うん…」
本当は違うけれど、どう考えても遠回りだけど、私は黙って頷いた。
だって、少しでも長く、ゾロに抱かれていたかったから。
ゾロが歩き出す。
足を踏み出すたびに伝わってくる振動と、微かに聞こえるゾロの心臓の音、伝わってくるゾロの体温。
その全てが心地よくて、だんだんとまぶたが重くなってくる。
それを察したのか、ゾロが口を開いた。
「眠ィなら、寝ていいぞ」
「ん…」
でも、寝る前に一つだけ言いたくて。
「ねえ、ぞろ」
「ん?」
「だいすき」
「…おれもだ」
そうこたえたゾロの心臓の音が少しだけ速くなるのを感じながら。私は目を閉じた。