短編
名前・一人称の設定
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サニー号の展望室。
おれは黙々と筋トレに励んでいた。
ふらっとはベンチへ腰掛け、本を読んでいる。
甲板からの喧騒とは対照的に、ここで聞こえるのは、自分の息遣いと、ふらっとが時折ページを捲る音だけ。
外から聞こえる笑い声や足音は、どこか遠い世界のもののようだった。ここだけが切り離されたような静けさで満たされている。
ふらっとの存在を感じながらも筋トレに集中し…ふと視線を感じて顔を上げると、もう読み終えたのだろうか、閉じた本を膝の上に乗せて彼女がこちらをじっと見つめていた。
「…どうした」
「あ、邪魔しちゃった?ごめん」
「別に邪魔じゃねェよ、ちょうどひと段落ついたところだ」
おれはダンベルを置くと、首にかけたタオルで汗を拭きながらふらっとへ近寄る。
「で?一体おれの何がそんなに気になるんだ」
「ん〜?ゾロがカッコいいなって思って…」
「…っ、お前な…」
揶揄うつもりでの問いかけに対して返ってきた素直な言葉に、思わず面食らう。
ふふ、と笑いながら、こちらを見上げるふらっと。
その丸くてキラキラ輝く瞳が、まっすぐな視線が、とても愛しいと感じた。
この瞳に映り込んでいるのは自分だけだという事実にほくそ笑む。
「ゾロ…?」
不思議そうに見上げるふらっとの頬に、右手をそっと添えた。
手のひらに伝わる温もりが心地いい。
ふらっとは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑むと、おれの手にそっと顔を擦り寄せる。…なんだこの可愛い生き物は…。
「ゾロの手、大きくて、あったかくて、大好き」
「…そうか」
胸の中に、温かい感情が広がる。
目線の高さを合わせるように屈むと、その瞳はわずかに揺れた。
それを見ておれの心臓は、妙に跳ねる。
…こんな顔、誰にも見せるな。おれだけが知っていればいい。
胸の中でそう思いながら、無意識に手が伸びて彼女の髪をそっと撫でた。
ふんわりと微笑んだまま見上げてくる顔がまた愛おしくて、自然と顔を近づける。
「...ふらっと」
名前を呼ぶ声が、自分でも驚くほど低く響いた。
なあに、といつものように返事が帰ってくる前に、何も考えずにそのまま唇を重ねた。
軽く触れるだけのつもりだったのが、この温もりを離したくなくなり、角度を変えて何度も口づける。髪を撫でた手は、いつの間にか後頭部へ回っていた。
二人きりの静かな空間に、ただお互いの呼吸音だけが響く。
ふらっとの頬が赤く染まるのを見て、おれは心が静かに満たされるのを感じた。
この表情も、この瞬間も、全てがおれだけのものだ。その事実がやけに心地よかった。
ただひたすらキスを繰り返していたその時。
展望室へ続く梯子を誰かが登ってくる音がした。
おれは心の中で舌打ちをする。
邪魔されてたまるかよ…おれはキスを中断するどころか、さらに深く口づけた。
ふらっとは驚いたかのように少し目を見開いたかと思うと、すぐに身を任せるように目を閉じる。近づく足音には気づいていないようだ。
その足音の持ち主に見られないように、おれは首にかけたタオルでふらっとの横顔をそっと隠す。
この顔を見られるのは、おれだけだ。
…と、ふいに足音が止んだかと思うと、声が聞こえた。
「ゾロ、ふらっと、そろそろ…って、おわァ?!お、おれはなんも見てねェぞ?!」
…チョッパーか。
その声を聞いて、ビクッと身をこわばらせるふらっと。
慌てて離れようとするふらっとの後頭部を押さえ、さらに2、3回口付けた後に、名残惜しさを感じながら唇を離す。
ほわ、と惚けたふらっとの顔をチョッパーに見せたくないので、彼女を自分の胸に押し付けるかの様に抱きしめる。
「…何の用だ」
チョッパーの方を向きながら、冷静に優しく問いかけたつもりだが、その裏に隠れたキスを邪魔されたことに対する不満はうまく隠せていただろうか。
「ご、ご飯できたから呼びにきたんだ!」
「そうか、ありがとう。もう少ししたら行く」
「分かった!…お、おれは本当に何も見てねェからな!!!」
そう言うと、チョッパーは慌てた様子で展望室から去っていった。
足音が遠ざかると同時に、おれはふらっとを抱きしめていた腕の力をそっと緩めて、彼女の顔を覗き込む。
「…おい、大丈夫か?」
問いかけると、落ち着かない様子であっちこっちと視線を彷徨わせる。
「だ、大丈夫…」
そう答えたものの、その頬は先ほどよりもさらに赤く火照っていた。
「お前、顔真っ赤だぞ?」
からかうように言うと、彼女は両手で顔を覆い隠す。
「だって…!ゾロ、急にキスしてくるし、いやそれはまだ我慢できたんだけど、なんか沢山してくるし、チョッパーに見られるし、しまいには上半身裸で抱きしめてくるし…」
…さっきまで筋トレをしていたので、上半身を脱いでいるのは当然だ。
「別に嫌じゃねェだろ?」
「嫌じゃないよ!だけど、は、恥ずかしい…」
顔を隠したまま恥ずかしがるふらっとが可愛くて、再び抱きしめる。
「この様子だと、下行くのはもう少し落ち着いてからのほうが良さそうだな?」
「お、落ち着けるわけないじゃん?!せめて服着て…!」
おれはフッと笑いながら、抱きしめたままふらっとの頭を撫でる。
「お前、可愛すぎるだろ…」
「ば、ばか…」
抱きしめていると、ふらっとの心音が伝わってくる。最初はとても速かったその音が、少しずつ落ち着いてきて、やがておれの鼓動と重なって同じリズムを刻み始めるのを感じた。
そのタイミングで、おれは彼女に問いかける。
「…落ち着いたか?」
「うん…」
「そろそろ下行くか?」
ふらっとは顔を上げると、おれと視線を合わせて言う。
「…ううん、もう少しだけこうしていたい…どう?」
「…賛成だ」
「…ありがと」
ふらっとはそう言って、再び顔をおれの胸に埋める。
それからしばらくの間、おれたちは展望室のベンチで抱き合っていた。
結局、おれたちがダイニングへ行ったのはそれからかなりの時間が経ってからで。
「何のためにチョッパーに呼びに行ってもらったんだ」とアホコックからの小言をもらう羽目になった。
おれは黙々と筋トレに励んでいた。
ふらっとはベンチへ腰掛け、本を読んでいる。
甲板からの喧騒とは対照的に、ここで聞こえるのは、自分の息遣いと、ふらっとが時折ページを捲る音だけ。
外から聞こえる笑い声や足音は、どこか遠い世界のもののようだった。ここだけが切り離されたような静けさで満たされている。
ふらっとの存在を感じながらも筋トレに集中し…ふと視線を感じて顔を上げると、もう読み終えたのだろうか、閉じた本を膝の上に乗せて彼女がこちらをじっと見つめていた。
「…どうした」
「あ、邪魔しちゃった?ごめん」
「別に邪魔じゃねェよ、ちょうどひと段落ついたところだ」
おれはダンベルを置くと、首にかけたタオルで汗を拭きながらふらっとへ近寄る。
「で?一体おれの何がそんなに気になるんだ」
「ん〜?ゾロがカッコいいなって思って…」
「…っ、お前な…」
揶揄うつもりでの問いかけに対して返ってきた素直な言葉に、思わず面食らう。
ふふ、と笑いながら、こちらを見上げるふらっと。
その丸くてキラキラ輝く瞳が、まっすぐな視線が、とても愛しいと感じた。
この瞳に映り込んでいるのは自分だけだという事実にほくそ笑む。
「ゾロ…?」
不思議そうに見上げるふらっとの頬に、右手をそっと添えた。
手のひらに伝わる温もりが心地いい。
ふらっとは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑むと、おれの手にそっと顔を擦り寄せる。…なんだこの可愛い生き物は…。
「ゾロの手、大きくて、あったかくて、大好き」
「…そうか」
胸の中に、温かい感情が広がる。
目線の高さを合わせるように屈むと、その瞳はわずかに揺れた。
それを見ておれの心臓は、妙に跳ねる。
…こんな顔、誰にも見せるな。おれだけが知っていればいい。
胸の中でそう思いながら、無意識に手が伸びて彼女の髪をそっと撫でた。
ふんわりと微笑んだまま見上げてくる顔がまた愛おしくて、自然と顔を近づける。
「...ふらっと」
名前を呼ぶ声が、自分でも驚くほど低く響いた。
なあに、といつものように返事が帰ってくる前に、何も考えずにそのまま唇を重ねた。
軽く触れるだけのつもりだったのが、この温もりを離したくなくなり、角度を変えて何度も口づける。髪を撫でた手は、いつの間にか後頭部へ回っていた。
二人きりの静かな空間に、ただお互いの呼吸音だけが響く。
ふらっとの頬が赤く染まるのを見て、おれは心が静かに満たされるのを感じた。
この表情も、この瞬間も、全てがおれだけのものだ。その事実がやけに心地よかった。
ただひたすらキスを繰り返していたその時。
展望室へ続く梯子を誰かが登ってくる音がした。
おれは心の中で舌打ちをする。
邪魔されてたまるかよ…おれはキスを中断するどころか、さらに深く口づけた。
ふらっとは驚いたかのように少し目を見開いたかと思うと、すぐに身を任せるように目を閉じる。近づく足音には気づいていないようだ。
その足音の持ち主に見られないように、おれは首にかけたタオルでふらっとの横顔をそっと隠す。
この顔を見られるのは、おれだけだ。
…と、ふいに足音が止んだかと思うと、声が聞こえた。
「ゾロ、ふらっと、そろそろ…って、おわァ?!お、おれはなんも見てねェぞ?!」
…チョッパーか。
その声を聞いて、ビクッと身をこわばらせるふらっと。
慌てて離れようとするふらっとの後頭部を押さえ、さらに2、3回口付けた後に、名残惜しさを感じながら唇を離す。
ほわ、と惚けたふらっとの顔をチョッパーに見せたくないので、彼女を自分の胸に押し付けるかの様に抱きしめる。
「…何の用だ」
チョッパーの方を向きながら、冷静に優しく問いかけたつもりだが、その裏に隠れたキスを邪魔されたことに対する不満はうまく隠せていただろうか。
「ご、ご飯できたから呼びにきたんだ!」
「そうか、ありがとう。もう少ししたら行く」
「分かった!…お、おれは本当に何も見てねェからな!!!」
そう言うと、チョッパーは慌てた様子で展望室から去っていった。
足音が遠ざかると同時に、おれはふらっとを抱きしめていた腕の力をそっと緩めて、彼女の顔を覗き込む。
「…おい、大丈夫か?」
問いかけると、落ち着かない様子であっちこっちと視線を彷徨わせる。
「だ、大丈夫…」
そう答えたものの、その頬は先ほどよりもさらに赤く火照っていた。
「お前、顔真っ赤だぞ?」
からかうように言うと、彼女は両手で顔を覆い隠す。
「だって…!ゾロ、急にキスしてくるし、いやそれはまだ我慢できたんだけど、なんか沢山してくるし、チョッパーに見られるし、しまいには上半身裸で抱きしめてくるし…」
…さっきまで筋トレをしていたので、上半身を脱いでいるのは当然だ。
「別に嫌じゃねェだろ?」
「嫌じゃないよ!だけど、は、恥ずかしい…」
顔を隠したまま恥ずかしがるふらっとが可愛くて、再び抱きしめる。
「この様子だと、下行くのはもう少し落ち着いてからのほうが良さそうだな?」
「お、落ち着けるわけないじゃん?!せめて服着て…!」
おれはフッと笑いながら、抱きしめたままふらっとの頭を撫でる。
「お前、可愛すぎるだろ…」
「ば、ばか…」
抱きしめていると、ふらっとの心音が伝わってくる。最初はとても速かったその音が、少しずつ落ち着いてきて、やがておれの鼓動と重なって同じリズムを刻み始めるのを感じた。
そのタイミングで、おれは彼女に問いかける。
「…落ち着いたか?」
「うん…」
「そろそろ下行くか?」
ふらっとは顔を上げると、おれと視線を合わせて言う。
「…ううん、もう少しだけこうしていたい…どう?」
「…賛成だ」
「…ありがと」
ふらっとはそう言って、再び顔をおれの胸に埋める。
それからしばらくの間、おれたちは展望室のベンチで抱き合っていた。
結局、おれたちがダイニングへ行ったのはそれからかなりの時間が経ってからで。
「何のためにチョッパーに呼びに行ってもらったんだ」とアホコックからの小言をもらう羽目になった。
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