短編
名前・一人称の設定
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「な、なんも思いつかん…」
私はサニー号の甲板に寝転びながら、頭を悩ませていた。
「ふらっと、そんな格好で何やってるの?」
ナミちゃんが笑いながら、こちらへ歩いてくる。
「あ、ナミちゃん…」
私は体を起こした。
「あのね、明日ハロウィンじゃん?イタズラ、どうしようかと思って…」
「イタズラ?」
「うん。トリックオアトリート、ってゾロに言ってさ、でもゾロがお菓子持ってるわけないから、先にイタズラ考えておこうと思って…」
「なるほど」
「えー何がいいかな…適度に面白いやつ…刀に何かするのは絶対ダメだし…」
そう呟きながら、離れたところで昼寝をしているゾロの横顔を眺める。
相変わらずカッコいいな。
大きな口開けちゃって…
もう、ほんと大好き。
…そこまで考えて、私の頭にふとひとつの案が浮かんだ。
「いいこと思いついた…!!」
どういう反応が見られるか楽しみで、思わず顔がにやけてしまう。
「その顔…結構面白そうなこと思いついたのね?」
「うん!まだ秘密だよ、明日になったら分かるから…!」
「分かった、楽しみにしてるわ」
「えへへ、ゾロも楽しみにしててね…」
まだ眠っているゾロを見ながら、私はつぶやいた。
翌日、ハロウィン当日。
朝食を食べ終わり、筋トレを始めようとするゾロのところに、私はそそくさと駆け寄った。
「ゾロ!」
「どうした、ふらっと」
「今日がなんの日か知ってる?」
「今日?…ハロウィンだよな」
「そう、だから…トリックオアトリート」
私がそう言った途端、ゾロは待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
「そう言うと思ってたぜ」
「うっ…って、え?」
その笑みを見て、カッコよさに思わず呻き声を漏らした私の前に、ゾロは綺麗にラッピングされた袋を差し出した。
「ほらよ」
「…え?」
まさか、と思いつつ袋を開けると、その中からはチョコにキャンディ、クッキーなどなど…沢山のお菓子が出てきた。
「お菓子…!こんなにたくさん!どうしたのこれ!!」
「少し前に、もうすぐハロウィンだったと思い出してな。お前はお菓子欲しがるだろうと思ったから、チョッパーと一緒に選んで買ってきた」
「わざわざ用意してくれたの?!嬉しい、ありがとう!!!!」
あまりにも嬉しくて、ゾロにぎゅっと抱きつく。
「喜んでもらえてよかった」
「ゾロから何かもらって喜ばないわけないよ!本当にありがとう!!」
ひとしきりゾロに抱きついて満足したあと、私は離れる。
「…ごめん、邪魔しちゃったね。これ、チョッパーにも手伝ってもらったって言ったよね?あの子にもお礼言ってくる」
「あァ、分かった」
私はゾロのもとを離れると、チョッパーの元へ向かった。
「チョッパー!あ、やっぱりここにいた!」
チョッパーは、医務室で何やら作業をしていた。
「おうふらっと!呼んだか?」
「うん、お礼が言いたくて…ほら、これ」
私はチョッパーに、さっきゾロからもらった袋を見せる。
「チョッパーも一緒に選んでくれたんだってね?私の好きなものばっかり。ありがとう!」
「お礼なんて言われても…嬉しくねェぞ、コノヤロー!!」
いつも通り照れ隠しをするチョッパーが可愛いなと思いつつ眺めていると、ナミちゃんが入ってきた。
「あ、いた、ふらっと。トリックオアトリートの結果はどうだったの?」
「それがね、なんとゾロ、お菓子用意してくれてて…!貰っちゃったの!こんなに沢山!!」
「あら、よかったじゃない!」
私が掲げた袋を見て、ナミちゃんも嬉しそうな顔になる。
「だけど残念だわ、どんなイタズラをするのか楽しみにしてたのに…」
「うん、私もイタズラしたかったな…」
そして、私はふと思った。
「あのさ、別にお菓子貰えたからってイタズラしたらダメなわけじゃないよね…?」
「ん?」
「というか、別にハロウィン関係なくイタズラしてもいいよね?…うん決めた」
「えっとふらっと、つまり?」
「トリックオアトリートでお菓子は貰えたけど、それとは関係なくゾロにイタズラする!決めた!!」
そう言ってニヤッと笑った私の顔は、きっと誰かさんにそっくりだったんだろうなと思った。
午後。
私は気持ちよさそうに壁に持たれて昼寝をしているゾロに、こっそりと近づいた。
「起こさないように慎重に…って、敵襲じゃない限り起きないかゾロは」
そんなことを呟きながら、ゾロの体にまたがるようにして座る。
手に持ったペンの蓋をポンと取ると、ゾロの顔に落書きをしていった。
「えへへ、ごめんね〜ゾロがカッコ良すぎるのが悪いんだからね?」
そう言いながら、ゾロの顔にペンを走らせる。
「…よし、できた!」
我ながら、ちょっとびっしり書きすぎたかもしれない。
「それにしても、ここまでしても起きないのすごいな…なのに敵が来たらすぐ目を覚ますんでしょ?カッコいいけど、少し妬けちゃうな…」
そう言いながら、ゾロの顔をじっと見つめる。
「イタズラに気づいたら、どんな反応するかな?…大好きだよ、ゾロ」
ゾロの唇にそっとキスをすると、私は静かにその場を離れた。
目を覚ますと、近くにふらっとの姿はなかった。
さっきまで近くにいる気配がしたのだが。
探しにいくか、と立ち上がり、ダイニングへ向かう。
ドアを開けて、そこにいる人物に問いかけた。
「おい、アイツはどこ行った」
「ふらっとちゃんなら、さっき向こうに…」
キッチンで何やら作業をしていたアホコックが、そこまで言って顔を上げる。
そして、おれの顔を見るやいなや吹き出した。
「おい、お前、それ…!派手にやられたなァ!!」
「あ?おれの顔に何かついてるって言うのか?」
「ついてるも何も…!気づいてねェのかよ!!」
そこまで言うとコックは、床にうずくまると苦しそうに笑い始めた。
「なんだこいつ…頭でもイカれたのかよ」
やれやれと肩をすくめつつ部屋から出ようとすると、反対側の扉からナミとロビンが入ってきた。
「あらゾロ、ふらっとのイタズラって…」
おれがその声に反応して振り返ると同時に、ナミはおれの顔を見て驚いたような顔を見せたあと、壁を叩きながら笑い始めた。
「ふらっと、全くあんた、やってくれるじゃない…!!」
コックと同じような反応をするナミの姿に困惑しながら、ロビンを見る。
ロビンも笑いを堪えながら、「…あなた、愛されているのね」と呟いた。
「はァ?お前らさっきからなんのことを言ってるんだよ…ふらっとが何かしたのか?」
「き、気づいてないの?ほら、自分で見てみなさい」
ナミが震えながら差し出した手鏡を受け取る。
…そこに映った自分の顔には、びっしりと文字が書き込まれていた。
『この、灰色の瞳、すごくカッコよくて好き!!』『眉毛がカクッてなってるの好きだよ…』『隻眼なの、すごくすごく好き!!』『縦に走る傷跡、カッコイイね…』『二重なんだよね…好き…好き…』『普段、口がむんってなってるの好きなの』『口角上げてニヤッて笑顔が大好き。ほんと好き。愛してる』『三連ピアスが揺れるの、すごく綺麗でカッコよくて好き』『お酒を前にするとにっっこにこの笑顔になるの、ほんと好きだよー!』『真ん中だけ前髪ぴょんって出てるの、好きです』
鏡に映る文字なので読みにくいが、こんなところだろう。
「アイツ…」
鏡の向こうの自分の顔が、少し赤くなるのが分かった。
「ナミ、鏡ありがとう。ふらっとのところ行ってくる」
鏡を返すと、おれはふらっとを探しにいつもの場所へ向かった。
「やっぱりここだったか」
私がサニー号後方、下側のバルコニーで海を眺めていると、ゾロが近づいてくる気配がした。
「あ、ゾロ…って、あはは…」
やったのは私だけど、びっしり文字が書き込まれている顔面を見ると、やっぱり笑ってしまう。
「これはなんだ一体」
「え?ゾロの顔で好きなところを直接書き込んだだけだけど…あ、もしかして体にもやってほしかった?」
分かっているけど、私はわざとすっとぼける。
「そうじゃねェよ…なんでこんなことしたのかって聞いてんだ」
「え?ハロウィンのイタズラで…せっかく考えたのに、ゾロがお菓子用意してくれちゃうもんだから。でも関係なくイタズラすればいっか!って思って!!」
ゾロは呆れたように笑う。
「ったく、ガキかよお前は」
「この船ではチョッパーと並んで最年少です〜それよりさ、なんかゾロ、顔赤くない?」
「…気のせいだろ」
ゾロはそう言って私の横へ並ぶと、手すりにもたれて海を眺める。
私はその横顔をじっと見つめた。
やっぱりゾロってすごくすごくカッコいいな。
こんなに近くで見つめられるの、私だけなんだ。
そう思うと、じんわりと胸が熱くなる。
…だけど。
「…ごめんゾロ、その落書き落としていい?」
「別に構わねェが…なんでだ?」
「やっぱり面白すぎるな、って思って。あと…」
こっちを向いたゾロの灰色の瞳を、じっと見つめながら言う。
「ゾロのカッコいいところは、私だけが知っておけばいいかな、って…」
「…そうか」
そう言って、ゾロがふっと笑う。
ああ、この笑い方も好きだなあ…
「そうと決めたら、さっさと落としにいくぞ」
「う、うん!」
「で、これどうすれば落ちるんだ?」
「えっと…分からん…」
「…は?」
「だって、そこら辺にあった適当なペンで書いたから…」
「全くお前は…そんなところも嫌いじゃねェけどな」
「えへへ…」
それからしばらくの間、ゾロと私は落書きを落とそうと、泡と格闘することになるのであった。
私はサニー号の甲板に寝転びながら、頭を悩ませていた。
「ふらっと、そんな格好で何やってるの?」
ナミちゃんが笑いながら、こちらへ歩いてくる。
「あ、ナミちゃん…」
私は体を起こした。
「あのね、明日ハロウィンじゃん?イタズラ、どうしようかと思って…」
「イタズラ?」
「うん。トリックオアトリート、ってゾロに言ってさ、でもゾロがお菓子持ってるわけないから、先にイタズラ考えておこうと思って…」
「なるほど」
「えー何がいいかな…適度に面白いやつ…刀に何かするのは絶対ダメだし…」
そう呟きながら、離れたところで昼寝をしているゾロの横顔を眺める。
相変わらずカッコいいな。
大きな口開けちゃって…
もう、ほんと大好き。
…そこまで考えて、私の頭にふとひとつの案が浮かんだ。
「いいこと思いついた…!!」
どういう反応が見られるか楽しみで、思わず顔がにやけてしまう。
「その顔…結構面白そうなこと思いついたのね?」
「うん!まだ秘密だよ、明日になったら分かるから…!」
「分かった、楽しみにしてるわ」
「えへへ、ゾロも楽しみにしててね…」
まだ眠っているゾロを見ながら、私はつぶやいた。
翌日、ハロウィン当日。
朝食を食べ終わり、筋トレを始めようとするゾロのところに、私はそそくさと駆け寄った。
「ゾロ!」
「どうした、ふらっと」
「今日がなんの日か知ってる?」
「今日?…ハロウィンだよな」
「そう、だから…トリックオアトリート」
私がそう言った途端、ゾロは待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
「そう言うと思ってたぜ」
「うっ…って、え?」
その笑みを見て、カッコよさに思わず呻き声を漏らした私の前に、ゾロは綺麗にラッピングされた袋を差し出した。
「ほらよ」
「…え?」
まさか、と思いつつ袋を開けると、その中からはチョコにキャンディ、クッキーなどなど…沢山のお菓子が出てきた。
「お菓子…!こんなにたくさん!どうしたのこれ!!」
「少し前に、もうすぐハロウィンだったと思い出してな。お前はお菓子欲しがるだろうと思ったから、チョッパーと一緒に選んで買ってきた」
「わざわざ用意してくれたの?!嬉しい、ありがとう!!!!」
あまりにも嬉しくて、ゾロにぎゅっと抱きつく。
「喜んでもらえてよかった」
「ゾロから何かもらって喜ばないわけないよ!本当にありがとう!!」
ひとしきりゾロに抱きついて満足したあと、私は離れる。
「…ごめん、邪魔しちゃったね。これ、チョッパーにも手伝ってもらったって言ったよね?あの子にもお礼言ってくる」
「あァ、分かった」
私はゾロのもとを離れると、チョッパーの元へ向かった。
「チョッパー!あ、やっぱりここにいた!」
チョッパーは、医務室で何やら作業をしていた。
「おうふらっと!呼んだか?」
「うん、お礼が言いたくて…ほら、これ」
私はチョッパーに、さっきゾロからもらった袋を見せる。
「チョッパーも一緒に選んでくれたんだってね?私の好きなものばっかり。ありがとう!」
「お礼なんて言われても…嬉しくねェぞ、コノヤロー!!」
いつも通り照れ隠しをするチョッパーが可愛いなと思いつつ眺めていると、ナミちゃんが入ってきた。
「あ、いた、ふらっと。トリックオアトリートの結果はどうだったの?」
「それがね、なんとゾロ、お菓子用意してくれてて…!貰っちゃったの!こんなに沢山!!」
「あら、よかったじゃない!」
私が掲げた袋を見て、ナミちゃんも嬉しそうな顔になる。
「だけど残念だわ、どんなイタズラをするのか楽しみにしてたのに…」
「うん、私もイタズラしたかったな…」
そして、私はふと思った。
「あのさ、別にお菓子貰えたからってイタズラしたらダメなわけじゃないよね…?」
「ん?」
「というか、別にハロウィン関係なくイタズラしてもいいよね?…うん決めた」
「えっとふらっと、つまり?」
「トリックオアトリートでお菓子は貰えたけど、それとは関係なくゾロにイタズラする!決めた!!」
そう言ってニヤッと笑った私の顔は、きっと誰かさんにそっくりだったんだろうなと思った。
午後。
私は気持ちよさそうに壁に持たれて昼寝をしているゾロに、こっそりと近づいた。
「起こさないように慎重に…って、敵襲じゃない限り起きないかゾロは」
そんなことを呟きながら、ゾロの体にまたがるようにして座る。
手に持ったペンの蓋をポンと取ると、ゾロの顔に落書きをしていった。
「えへへ、ごめんね〜ゾロがカッコ良すぎるのが悪いんだからね?」
そう言いながら、ゾロの顔にペンを走らせる。
「…よし、できた!」
我ながら、ちょっとびっしり書きすぎたかもしれない。
「それにしても、ここまでしても起きないのすごいな…なのに敵が来たらすぐ目を覚ますんでしょ?カッコいいけど、少し妬けちゃうな…」
そう言いながら、ゾロの顔をじっと見つめる。
「イタズラに気づいたら、どんな反応するかな?…大好きだよ、ゾロ」
ゾロの唇にそっとキスをすると、私は静かにその場を離れた。
目を覚ますと、近くにふらっとの姿はなかった。
さっきまで近くにいる気配がしたのだが。
探しにいくか、と立ち上がり、ダイニングへ向かう。
ドアを開けて、そこにいる人物に問いかけた。
「おい、アイツはどこ行った」
「ふらっとちゃんなら、さっき向こうに…」
キッチンで何やら作業をしていたアホコックが、そこまで言って顔を上げる。
そして、おれの顔を見るやいなや吹き出した。
「おい、お前、それ…!派手にやられたなァ!!」
「あ?おれの顔に何かついてるって言うのか?」
「ついてるも何も…!気づいてねェのかよ!!」
そこまで言うとコックは、床にうずくまると苦しそうに笑い始めた。
「なんだこいつ…頭でもイカれたのかよ」
やれやれと肩をすくめつつ部屋から出ようとすると、反対側の扉からナミとロビンが入ってきた。
「あらゾロ、ふらっとのイタズラって…」
おれがその声に反応して振り返ると同時に、ナミはおれの顔を見て驚いたような顔を見せたあと、壁を叩きながら笑い始めた。
「ふらっと、全くあんた、やってくれるじゃない…!!」
コックと同じような反応をするナミの姿に困惑しながら、ロビンを見る。
ロビンも笑いを堪えながら、「…あなた、愛されているのね」と呟いた。
「はァ?お前らさっきからなんのことを言ってるんだよ…ふらっとが何かしたのか?」
「き、気づいてないの?ほら、自分で見てみなさい」
ナミが震えながら差し出した手鏡を受け取る。
…そこに映った自分の顔には、びっしりと文字が書き込まれていた。
『この、灰色の瞳、すごくカッコよくて好き!!』『眉毛がカクッてなってるの好きだよ…』『隻眼なの、すごくすごく好き!!』『縦に走る傷跡、カッコイイね…』『二重なんだよね…好き…好き…』『普段、口がむんってなってるの好きなの』『口角上げてニヤッて笑顔が大好き。ほんと好き。愛してる』『三連ピアスが揺れるの、すごく綺麗でカッコよくて好き』『お酒を前にするとにっっこにこの笑顔になるの、ほんと好きだよー!』『真ん中だけ前髪ぴょんって出てるの、好きです』
鏡に映る文字なので読みにくいが、こんなところだろう。
「アイツ…」
鏡の向こうの自分の顔が、少し赤くなるのが分かった。
「ナミ、鏡ありがとう。ふらっとのところ行ってくる」
鏡を返すと、おれはふらっとを探しにいつもの場所へ向かった。
「やっぱりここだったか」
私がサニー号後方、下側のバルコニーで海を眺めていると、ゾロが近づいてくる気配がした。
「あ、ゾロ…って、あはは…」
やったのは私だけど、びっしり文字が書き込まれている顔面を見ると、やっぱり笑ってしまう。
「これはなんだ一体」
「え?ゾロの顔で好きなところを直接書き込んだだけだけど…あ、もしかして体にもやってほしかった?」
分かっているけど、私はわざとすっとぼける。
「そうじゃねェよ…なんでこんなことしたのかって聞いてんだ」
「え?ハロウィンのイタズラで…せっかく考えたのに、ゾロがお菓子用意してくれちゃうもんだから。でも関係なくイタズラすればいっか!って思って!!」
ゾロは呆れたように笑う。
「ったく、ガキかよお前は」
「この船ではチョッパーと並んで最年少です〜それよりさ、なんかゾロ、顔赤くない?」
「…気のせいだろ」
ゾロはそう言って私の横へ並ぶと、手すりにもたれて海を眺める。
私はその横顔をじっと見つめた。
やっぱりゾロってすごくすごくカッコいいな。
こんなに近くで見つめられるの、私だけなんだ。
そう思うと、じんわりと胸が熱くなる。
…だけど。
「…ごめんゾロ、その落書き落としていい?」
「別に構わねェが…なんでだ?」
「やっぱり面白すぎるな、って思って。あと…」
こっちを向いたゾロの灰色の瞳を、じっと見つめながら言う。
「ゾロのカッコいいところは、私だけが知っておけばいいかな、って…」
「…そうか」
そう言って、ゾロがふっと笑う。
ああ、この笑い方も好きだなあ…
「そうと決めたら、さっさと落としにいくぞ」
「う、うん!」
「で、これどうすれば落ちるんだ?」
「えっと…分からん…」
「…は?」
「だって、そこら辺にあった適当なペンで書いたから…」
「全くお前は…そんなところも嫌いじゃねェけどな」
「えへへ…」
それからしばらくの間、ゾロと私は落書きを落とそうと、泡と格闘することになるのであった。