「私はこの2週間、無我夢中で特訓してたんだ…」


そう言うと、姿勢を低くして刀を構える。


「以前の私とは、違う！二刀流 “剣舞”」


舞うように刀を振り抜く。


「“花吹雪”！！」


オーネは、そのまま吹っ飛んでいった。


─────キンッ


ふらっとは手を交差させて刀を鞘に納める。


「お前、覇気使えんのか…」


ゾロが驚いてその後ろ姿に声をかける。
ふらっとは振り向き、ゾロの目を真っ直ぐに見据えると言った。


「あァ…もう弱いなんて言わせねェよ？」

「もちろんだ」


そういうと顔を見合わせニヤッと笑う。
片方の口角だけを上げたその笑い方は、2人ともよく似ていた。

「────って、ボケッとしてる場合じゃねェよ！早くルフィを追いかけねェと…！」


ウソップの指摘で、一味は走り出そうとしたのだが。


「大丈夫だ、そんなに焦る必要はねェよ」


ふらっとのその言葉で、みんなの足が止まる。


「あいつが賞金首なのは、強さよりもその厄介な能力故…ルフィにかかれば一発だろ。」


その言葉通り、


「ゴムゴムの象銃！！！」


ルフィの叫び声が聞こえたかと思うと、、どこからかジェロが飛び込んできた。


「結局この部屋に戻ってきたのかよ…」

「無事ぶっ飛ばしたみてェだな…んじゃ“戦闘モード”解除、ってことで」


じゃあ船に戻ろっか、とふらっとが普段の調子で言ったその時。

島全体が大きくどよめいた。

歓喜の声や叫び声、泣き声など様々な声が聞こえてくる。

一味は、慌てて窓の側へ駆け寄った。


「なんだ？何が起こったんだ？」

「こうなるのも当然ね…だって、記憶が突然戻ったんだもの」


慌てるチョッパーに、ロビンが説明する。

記憶が戻って良かった…とみんなの顔に笑顔が浮かぶ。

優しげな顔で微笑むふらっとに、後ろから抱きついた者がいた。


「エルベ、トウェル！びっくりしたぁ…って、本名は違うんだっけ」

「ふふ、私はツボミ、こっちは妹のワカバよ。ね、サティ…じゃなくてふらっと、私たちの記憶を取り戻してくれてありがとう！」


エルベ、もといツボミは、満面の笑みでふらっとに言った。
ふらっとは慌てて顔の前で手を振る。


「そんな、私はみんなにお世話になったからほっとけないって思っただけだよ…」

「ふふ…ふらっと、さっきまではとてもカッコよかったのに元に戻るととても可愛いんですね」

「へっ？そ、そんな可愛くなんか…」

「でしょでしょ？ふらっとはすっごく可愛いんだから！」


トウェルが言った言葉にナミも便乗して言う。


「もう、ナミちゃんたら…」

「それよりよ、なんか地響きがしねェか？」


ウソップがビクビクしながら言う。


「地響き？」


みんなの視線が一気に窓の外へと向けられる。
そこから目にしたのは。
お城へとかけてくる人々の群れだった。