「まさかお前、記憶が戻って…！」


ジェロは目を見開く。


「ああ、完っ璧に戻った…」


言いながらふらっとは二本の刀を構え直す。


「私の、そしてこの島全員の記憶を奪ったこと、後悔させてやるよ…！」


そういうとジェロに飛びかかろうとしたのだが…


「お前たち！私を守れ！」

「ふらっと、危ねェ！！」


危険を察知してルフィが叫ぶ。

ドガッッ…

四方八方から、男たちが飛び出してきた。


「これは…！今までに城に連れ込んだ奴ら…！」

「そうだ！記憶を書き換えた後、すぐに売るのも惜しかろう？暇つぶしがてら、決闘でもさせるために置いておいたのだが…それが功を奏すとはな」


一気に周りを囲まれた。

ふらっとは構わず刀を振るおうとしたのだが。


「こいつらがどうなってもいいのか？」


声のする方を見ると、エルベとトウェルの首に刀が当てられていた。


「…っ…！」

「サティ…？これは一体何が起こって…？」


わけがわからず、ぽかんとしている2人。

それも当然だろう。
いつもと同じように島に着いた人を連れてきただけなのだ。
刀を突きつけられてもなお、状況を把握できずにいた。


「そいつらに手を出すな！」

「フフッ…わずか数週間共に過ごしただけで情でも移ったか？」

「数週間？何を言っているのです、私たちはずっと前から…」

「トウェル。その記憶は“ニセモノ”だ」

「え…？」

「ええい！うるさい！」


ジェロが大声を上げた。


「余計なことは言うな！…お前たち！あとは任せた！」


ジェロがそう言うと、集まった男たちの半数がふらっとと麦わらの一味に飛びかかる。
記憶を抜かれたとはいえ、新世界の荒波をここまでは乗り越えてきた海賊たちである。
いくら麦わらの一味でも一筋縄とはいかず、なんとか倒し終わった頃にはジェロの姿は見えなかった。


「ふらっと！おれはあいつを追っかける！」

「ああルフィ、任せた！」


ルフィが急いで追いかけた。
それを見やり、ふらっとも声を上げる。


「他にも捕まってる奴らがいるはずだ！そいつらを助けに行くぞ！」

「そうはさせないよ！」


走り出した一味の目の前に飛び降りる影があった。


「オーネ、てめェッ…！」

「逃がしゃしないよ…！」

「はッ…確かてめェの記憶は書き換えられたわけじゃなかったんだよなァ？」

「なぜ知っているんだい…！」


調べた、とふらっとはオーネを睨みつつ言った。


「昨日記憶を取り戻してから、こっそりこっちに戻ってあらかた調べた…」


そう言うと睨みを聞かせたまま、懐から手配書を取り出す。


「ジェロとてめェは賞金首。そうだろ？」

「だ、だからなんだって言うんだい！」


取り乱すオーネを無視して、ふらっとは続ける。


「てめェらの目的はこの島に眠る地下資源。掘り出すには、たいそうな技術がいる。その研究のために金が必要だった。だから2人で手を組んで、海賊をヒューマンショップにでも売って金稼ぎをしていたんだろ？」

「そんなのがバレたところでどうってことないさ！今ここで、お前たちを、消す！」


そういうと、刀を手にして飛びかかってきた。


「ふらっとッ…」


ゾロが応戦しようと進み出たが。


「大丈夫だ、任せろ」


ふらっとはそれを遮る。
それでもさらに何か言おうとしたゾロだったが、ふらっとが刀に武装色を込めたのを見て口を閉じた。