3章 魔女、そして…
名前・一人称の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ゾロの教え方は厳しかったけど優しくて分かりやすくて。
次の日には鉄が斬れるようになり、…3日後には斬撃が飛ばせるようになった。
「剣術使えないとかいう次元の問題じゃなかったんだよね…」
芝生に座ってカラフルなジュースを飲みながら、ふらっとはため息をついた。
その横のビーチチェアではナミとロビンが話を聞いている。
午後のおやつの時間、パラソルの下での出来事であった。
「なんで落ち込んでいるのよ…良いことじゃないの?」
「それはそうだけど…」
「もしかして、ゾロとうまく話せてないとか?」
ニヤリ、と笑いながら言うナミに慌てて手を振る
「違っ、そんなんじゃなくて…」
「あら、ちゃんと話せてるの?」
「いや話せてるわけでもないけど全くってわけでも…」
実際、以前よりはだいぶ話せるようになっていた。
それでも、会話が止まって気まずく思うこともあるのだ。
「今話してるのはそういうことじゃなくて…なんというか、申し訳ないっていうか…」
「「申し訳ない?」」
2人の声が重なる。
「うん…うまく言えないんだけどね、ゾロとか、あとブルックとかも、剣士達は強くなるために沢山修行してるわけでしょ?剣術は、一朝一夕で身につけるものじゃない。なのにそれを、私は一週間足らずで使えるようになっちゃって…なんかずるい気がして…」
「だから申し訳ない、か…妙なこと考えるんだな」
「うん…って、えっ?」
頭上から降ってきた低音に驚いて顔を上げると、そこにはゾロがいた。
「なっっ…?」
驚きで言葉も出ないふらっとに代わり、ナミがどうしたのよ、と問いかける。
「昼寝してたんじゃないの?」
「いや、ついさっき起きた。たまたま通りかかったら話が聞こえてよ…」
そういうとその場にどかっと座り、ふらっとを見据えた。
「もともとお前には才能があったってことだろ、得したって思っとけ」
「…う、うん」
ゾロに射抜かれるような視線で見られて顔が赤くなるのを感じたふらっとは、顔を逸らしつつそう答えた。
それをまたしてもニヤニヤしながら見ていたナミは、ふらっとに問いかけた。
「ね、ふらっと。なんで剣術を使えるようになりたいと思ったの?」
「えっとそれは…」
おそらくナミは「ゾロに近づきたかったから」とかいう理由を想像しているんだろう。
もちろんそれもあるのだが、まさかここで本人の前で言うわけにはいかない。
それに、もっと大きな理由が別にあった。
「一番の理由は…強くなりたいから、かな」
「ほんとに?」
「ほんとだよ〜他にもあるっちゃあるけど、これが一番の理由だよ」
そっか、とジュースをすすったナミは、ちょっと残念そう。
「この前海賊が来たとき… 私は何もせず隠れていることしかできなかったでしょ?」
机の下で息を潜めているしかなかった。
しかも、見つかった。
ふらっとはその時のことを思い出し、唇を噛んだ。
「あの時はゾロが助けてくれたけど…また同じようなことがあった時は、誰も助けに来られないかもしれない」
麦わらの一味に来たからには、戦える術を少しぐらいは身につけておかないと。ふらっとはそう考えていた。
「来た時からぼんやりと思ってはいたんだけどね、あの時やっぱり早めになんとかしないと、って思って…」
「だからその日のうちに行動に移したわけね」
うん、とふらっとは大きくうなずく。
「運が良かったよ、すぐに刀が手に入れられて…」
「守られるのは嫌?」
ロビンがグラスを手に問いかけた。
ふらっとはジュースを傍に置いて、芝生に寝転がる。
「嫌っていうか…何もしないのに守ってもらうだけなのは、嫌。少しでも自分のできることをしたい」
寝転んだまま、伸びをする。
「それでも無理な時は助けてほしいけど…」
ナミとロビンを見上げながら、そう言った。
「もっちろん!ふらっとが危ない時は、いつでも助けに行くわよ!」
「へへっ、ありがとう!」
そのまま目をつぶって昼寝でもしようと思ったのだが。
「じゃ、午後の特訓でもすっか」
「う、うんっ」
ゾロの声に慌てて起き上がる。
「頑張ってね」
ロビンが立ち上がったふらっとの背に声をかけると、ふらっとは振り向いて満面の笑みでいった。
「うん!もっと強くなるために…」
「そっちもそうだけど」
ナミがふらっとの言葉を遮る。
「ゾロと、ほら…ね?」
「…っ、そのことは今はいいからっ…」
ふらっとは恥ずかしそうに顔を背けると走っていった。