お礼話
名前・一人称の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雲の切れ間から、月が顔を出す。
これ以上はないほどまん丸な満月だ。
見たこともない色に輝いている。
月が完全に姿を現した頃には、麦わらの一味は全員視線が釘付けになり、あまりの素晴らしさに言葉を失っていた。
かろうじてチョッパーが訳した「ね?すごいでしょ?」というキツネの言葉も届かないほどに。
ずっと辺りを漂っていた無数の蛍が、月の光をうけ輝き出す。
その光はそこら中を飛び回り、降り注ぐ。
まるで星空の中にいるかのようだ。
「ヨホホホ…!この光景を見ていると、曲がいくつも頭の中に降ってきます!」
ブルックはそう言うと、バイオリンを構えて演奏を始める。
今の情景にピッタリなメロディだった。
「今ここで酒を飲んだら美味ェだろうな」
ゾロも呟く。
しかし生憎、現在酒は手元にない。
仕方なく月見団子を口に咥え、さらにもう一つ手に持って再び月を見上げた。
そこから少し離れたところで、ウソップは何やら振り回していた。
「ウソップ、一体何してるんだ?」
ルフィの問いかけに、ウソップは先ほど作ったばかりの虫取り網とカゴを示してみせた。
「サニーで飼おうと思って、蛍を捕まえてたんだ!まさか月の光でこんなに輝くとは思ってなかったけどな!」
腰に提げたカゴは、溢れんばかりの光でいっぱいだった。
蛍たちは嫌がるそぶりも逃げるそぶりも見せず、ふわふわきらきらと輝いている。
「それいいな!」
ルフィは両手を広げ、笑顔で跳び上がった。
「おいお前ら!サニー号に来ねェか?おれの仲間になれ!!」
チョッパーも真似して声をかける。
「サニー号は楽しいぞ!」
「…どんな捕まえ方だよ」
近くでその様子を見ていたサンジが苦笑しながら、そばに腰を下ろすロビンに問う。
「ロビンちゃん、コーヒーはいかが?寒くなるだろうと思って、持ってきたんだ」
「あら、ありがとう。いただくわ」
ロビンはサンジから湯気の立つコーヒーカップを両手で受け取ると、ゆっくりと味わうように目を閉じる。
その上に、サンジはどこからともなく取り出した傘をさす。
「蛍達、くれぐれもロビンちゃんの上には降り掛からないでくれよ。…しっかし見事な光景だなこれは」
サンジは改めて月をまじまじと見つめる。
相変わらず月は煌々と輝き、蛍も一層輝きを増しながらそこら中を飛び回っていた。
「ブルックが言っていた“お宝”ってのはこれのことだったのね」
膝を抱えて座るナミが、さほどがっかりした様子を見せずに言う。
「お金になるようなお宝が手に入らなかったのは残念だけど…この景色はお金には変え難いものだものね。いい経験したわ」
その言葉を分かってか分からずか、キツネが自慢げにニコニコと笑う。
「『この月は、1年に一度の特別な満月なんだ。ちょうど今日島に着いた君たちはとても運がいいね!来てくれてありがとう!』…だってさ!」
こちらこそ、素敵な景色を見てくれてありがとう───そんなことをそれぞれが思いながら、みんなはもう一度、さらに輝きを増した月を見上げた。
(終)
これ以上はないほどまん丸な満月だ。
見たこともない色に輝いている。
月が完全に姿を現した頃には、麦わらの一味は全員視線が釘付けになり、あまりの素晴らしさに言葉を失っていた。
かろうじてチョッパーが訳した「ね?すごいでしょ?」というキツネの言葉も届かないほどに。
ずっと辺りを漂っていた無数の蛍が、月の光をうけ輝き出す。
その光はそこら中を飛び回り、降り注ぐ。
まるで星空の中にいるかのようだ。
「ヨホホホ…!この光景を見ていると、曲がいくつも頭の中に降ってきます!」
ブルックはそう言うと、バイオリンを構えて演奏を始める。
今の情景にピッタリなメロディだった。
「今ここで酒を飲んだら美味ェだろうな」
ゾロも呟く。
しかし生憎、現在酒は手元にない。
仕方なく月見団子を口に咥え、さらにもう一つ手に持って再び月を見上げた。
そこから少し離れたところで、ウソップは何やら振り回していた。
「ウソップ、一体何してるんだ?」
ルフィの問いかけに、ウソップは先ほど作ったばかりの虫取り網とカゴを示してみせた。
「サニーで飼おうと思って、蛍を捕まえてたんだ!まさか月の光でこんなに輝くとは思ってなかったけどな!」
腰に提げたカゴは、溢れんばかりの光でいっぱいだった。
蛍たちは嫌がるそぶりも逃げるそぶりも見せず、ふわふわきらきらと輝いている。
「それいいな!」
ルフィは両手を広げ、笑顔で跳び上がった。
「おいお前ら!サニー号に来ねェか?おれの仲間になれ!!」
チョッパーも真似して声をかける。
「サニー号は楽しいぞ!」
「…どんな捕まえ方だよ」
近くでその様子を見ていたサンジが苦笑しながら、そばに腰を下ろすロビンに問う。
「ロビンちゃん、コーヒーはいかが?寒くなるだろうと思って、持ってきたんだ」
「あら、ありがとう。いただくわ」
ロビンはサンジから湯気の立つコーヒーカップを両手で受け取ると、ゆっくりと味わうように目を閉じる。
その上に、サンジはどこからともなく取り出した傘をさす。
「蛍達、くれぐれもロビンちゃんの上には降り掛からないでくれよ。…しっかし見事な光景だなこれは」
サンジは改めて月をまじまじと見つめる。
相変わらず月は煌々と輝き、蛍も一層輝きを増しながらそこら中を飛び回っていた。
「ブルックが言っていた“お宝”ってのはこれのことだったのね」
膝を抱えて座るナミが、さほどがっかりした様子を見せずに言う。
「お金になるようなお宝が手に入らなかったのは残念だけど…この景色はお金には変え難いものだものね。いい経験したわ」
その言葉を分かってか分からずか、キツネが自慢げにニコニコと笑う。
「『この月は、1年に一度の特別な満月なんだ。ちょうど今日島に着いた君たちはとても運がいいね!来てくれてありがとう!』…だってさ!」
こちらこそ、素敵な景色を見てくれてありがとう───そんなことをそれぞれが思いながら、みんなはもう一度、さらに輝きを増した月を見上げた。
(終)
3/3ページ