リュウトミルユメ
マネージャーから告げられた内容は茉莉にとって驚くべきものでしかなく、数秒、何と答えるか迷ってしまった。
「あの、でも、柚木さん…私、もう」
「うん、勿論わかってるよ。今月一杯で芸能界辞めるのは。だからこそ…最後にやってみない?」
などと言って引き止めるつもりではないのか。
そんな風に穿った考え方をしたくないし、マネージャーの柚木は事務所で唯一の理解者。世話になった分、恩を返したいとは思う。
何となくで始めたモデルの仕事だった。幸運なことに安定して稼げていたから、弟が社会人になるのを機に辞めようと決めていた。
そこに、柚木が仕事を持ってきたのだ。しかも、いつものような雑誌モデルではなく、アイドルのMVの出演者として。かなり人気のあるアイドルグループの名前が出てきた為、更に驚いてしまった。
「MVだからセリフないし、メインじゃないからあんまり映らないらしいんだ。でも記念にはなるかなって思ってさ」
「柚木さん…」
ぱっと見の雰囲気や外見はまるで裏社会の人間のようだが、柚木はとても真面目で気配り上手だ。彼が茉莉のマネージャーでなかったらきっとここまで仕事を続けられなかっただろう。
「わかりました…そういう事でしたら」
「本当!? よかったー…実は、メインの出演者が僕の知り合いでね…昨日一緒に飲んでたんだけど、おすすめしたい子がいるよ!ってすごい推しちゃったんだよねぇ…」
「ふふ、柚木さんったらお酒弱いんですからあんまり飲んじゃダメですよ」
「と、とにかく連絡してくるよ!」
早速電話で話しながら、OKとジェスチャーしてくる柚木に笑みを返して、茉莉は渡された資料に目を落とす。
結婚ソングとなり、結婚式のシーンの撮影となる。私用のドレスを着用して参列者の役をと、柚木の字で書き添えてある。
本当に、最後の記念として気楽に参加できそうだと、茉莉はほっと胸を撫で下ろす。
「ドレス、あったかな…」
あまり着る機会がなかったが、クローゼットの奥にきっと眠っているだろう。家に帰ったらすぐクリーニングに出しておこうと決めて、手帳に仕事の内容を書き写し始めた。
「あの、でも、柚木さん…私、もう」
「うん、勿論わかってるよ。今月一杯で芸能界辞めるのは。だからこそ…最後にやってみない?」
などと言って引き止めるつもりではないのか。
そんな風に穿った考え方をしたくないし、マネージャーの柚木は事務所で唯一の理解者。世話になった分、恩を返したいとは思う。
何となくで始めたモデルの仕事だった。幸運なことに安定して稼げていたから、弟が社会人になるのを機に辞めようと決めていた。
そこに、柚木が仕事を持ってきたのだ。しかも、いつものような雑誌モデルではなく、アイドルのMVの出演者として。かなり人気のあるアイドルグループの名前が出てきた為、更に驚いてしまった。
「MVだからセリフないし、メインじゃないからあんまり映らないらしいんだ。でも記念にはなるかなって思ってさ」
「柚木さん…」
ぱっと見の雰囲気や外見はまるで裏社会の人間のようだが、柚木はとても真面目で気配り上手だ。彼が茉莉のマネージャーでなかったらきっとここまで仕事を続けられなかっただろう。
「わかりました…そういう事でしたら」
「本当!? よかったー…実は、メインの出演者が僕の知り合いでね…昨日一緒に飲んでたんだけど、おすすめしたい子がいるよ!ってすごい推しちゃったんだよねぇ…」
「ふふ、柚木さんったらお酒弱いんですからあんまり飲んじゃダメですよ」
「と、とにかく連絡してくるよ!」
早速電話で話しながら、OKとジェスチャーしてくる柚木に笑みを返して、茉莉は渡された資料に目を落とす。
結婚ソングとなり、結婚式のシーンの撮影となる。私用のドレスを着用して参列者の役をと、柚木の字で書き添えてある。
本当に、最後の記念として気楽に参加できそうだと、茉莉はほっと胸を撫で下ろす。
「ドレス、あったかな…」
あまり着る機会がなかったが、クローゼットの奥にきっと眠っているだろう。家に帰ったらすぐクリーニングに出しておこうと決めて、手帳に仕事の内容を書き写し始めた。
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