トキ春
自分の出番までまだ時間があるようだ。
スタジオ内の流れを確認して、邪魔にならないよう、トキヤは台本を手に隅へ移動する。
すると、そこには先客がいた。トキヤに気付いて、その先客がぱっと笑顔になる。
「あ、トキヤ! おはよう」
「おはようございます」
音也であった。共演しているので、彼がいること自体は不思議ではない。が、今日の入り時間はもっと遅いはずだった。
「どうしたのですか? 撮影順の変更は聞いていませんが…」
「あー、うん、変更とかじゃなくて、前の仕事が早く終わったから、ここで見学させてもらってたんだ」
「そういう事ですか…隣、宜しいですか?」
「もちろん!」
勉強熱心なのは良い事なので、トキヤも隣に並んでセットの中へ目を向ける。
今はそこで、名だたる俳優陣がリハーサルを続けている。予定より少し押しているものの、この調子であれば良いものが出来上がるだろうという予感がある。
「皆、凄いね」
「ええ。皆さん、他の方々の台詞や動きまで把握しているようです。それだけに、お互いの拘りも強いみたいですけれどね」
「うん…」
アドリブに笑いが起こり、カットがかかる。時間が押している理由はこの辺りだろう。しかし、より良いものをという気持ちがとても伝わるので、誰も止めようとはしない。
暫く見ていると休憩になり、不意に音楽が流れ出した。
聞き覚えのある旋律に驚き、台本を落としそうになる。
「あ、これ…出来たんだ!」
「え、ええ」
今回、この映画のテーマ曲として作られたものだ。作曲は春歌、そして歌詞は監督、脚本家と話し合いながらトキヤが書き下ろした。
先日レコーディングを終えたばかりの出来立てほやほやである。まさかこのタイミングでお披露目になるとは思わなかったが。
「七海の曲ってやっぱり綺麗だなー」
「綺麗…ですか」
「うん、この曲は特に…温かくてキラキラしてて、幸せな気持ちになるよ」
素直な性格というのはこういう時羨ましい。
恋人の曲を褒められて嬉しいのだが自分が礼を言うのもおかしいので、トキヤは微笑むだけにとどめた。
「映画の雰囲気にもすごく合ってるね」
「ストーリーを聞いて作りましたからね」
「そっか…そうだよね」
曲が終わると、自然と拍手が起き、和やかな雰囲気で撮影が再開される。
じっとその様子を見つめていたかと思えば、音也は何か思い付いたようでトキヤに向き直った。
「ねえ、トキヤ…」
「別室で練習、したいですか?」
「!」
何故分かったのだと言いたげに音也が目を見開く。トキヤは人差し指を立てて静かに、とジェスチャーをしながら答えを返した。
「何年一緒にいると思っているんです? それに、私も同じことを考えていましたから」
「えへへ…じゃあ、行こう?」
「ええ」
周りのスタッフに外に出る事を告げて、二人はスタジオを飛び出す。
トキヤの中で、今聞いたばかりの自分たちの歌が優しく奏でられていた。
20160109
─────
なんというかこう…もう少し書き足したほうがいいんじゃないかみたいな寸止めで終わらせると個人的には妄想広がって好きなんですけど、どうなんでしょうね…。
トキ春前提なので、トキ春のページに置かせていただきます…無理矢理。
スタジオ内の流れを確認して、邪魔にならないよう、トキヤは台本を手に隅へ移動する。
すると、そこには先客がいた。トキヤに気付いて、その先客がぱっと笑顔になる。
「あ、トキヤ! おはよう」
「おはようございます」
音也であった。共演しているので、彼がいること自体は不思議ではない。が、今日の入り時間はもっと遅いはずだった。
「どうしたのですか? 撮影順の変更は聞いていませんが…」
「あー、うん、変更とかじゃなくて、前の仕事が早く終わったから、ここで見学させてもらってたんだ」
「そういう事ですか…隣、宜しいですか?」
「もちろん!」
勉強熱心なのは良い事なので、トキヤも隣に並んでセットの中へ目を向ける。
今はそこで、名だたる俳優陣がリハーサルを続けている。予定より少し押しているものの、この調子であれば良いものが出来上がるだろうという予感がある。
「皆、凄いね」
「ええ。皆さん、他の方々の台詞や動きまで把握しているようです。それだけに、お互いの拘りも強いみたいですけれどね」
「うん…」
アドリブに笑いが起こり、カットがかかる。時間が押している理由はこの辺りだろう。しかし、より良いものをという気持ちがとても伝わるので、誰も止めようとはしない。
暫く見ていると休憩になり、不意に音楽が流れ出した。
聞き覚えのある旋律に驚き、台本を落としそうになる。
「あ、これ…出来たんだ!」
「え、ええ」
今回、この映画のテーマ曲として作られたものだ。作曲は春歌、そして歌詞は監督、脚本家と話し合いながらトキヤが書き下ろした。
先日レコーディングを終えたばかりの出来立てほやほやである。まさかこのタイミングでお披露目になるとは思わなかったが。
「七海の曲ってやっぱり綺麗だなー」
「綺麗…ですか」
「うん、この曲は特に…温かくてキラキラしてて、幸せな気持ちになるよ」
素直な性格というのはこういう時羨ましい。
恋人の曲を褒められて嬉しいのだが自分が礼を言うのもおかしいので、トキヤは微笑むだけにとどめた。
「映画の雰囲気にもすごく合ってるね」
「ストーリーを聞いて作りましたからね」
「そっか…そうだよね」
曲が終わると、自然と拍手が起き、和やかな雰囲気で撮影が再開される。
じっとその様子を見つめていたかと思えば、音也は何か思い付いたようでトキヤに向き直った。
「ねえ、トキヤ…」
「別室で練習、したいですか?」
「!」
何故分かったのだと言いたげに音也が目を見開く。トキヤは人差し指を立てて静かに、とジェスチャーをしながら答えを返した。
「何年一緒にいると思っているんです? それに、私も同じことを考えていましたから」
「えへへ…じゃあ、行こう?」
「ええ」
周りのスタッフに外に出る事を告げて、二人はスタジオを飛び出す。
トキヤの中で、今聞いたばかりの自分たちの歌が優しく奏でられていた。
20160109
─────
なんというかこう…もう少し書き足したほうがいいんじゃないかみたいな寸止めで終わらせると個人的には妄想広がって好きなんですけど、どうなんでしょうね…。
トキ春前提なので、トキ春のページに置かせていただきます…無理矢理。