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トキ春


「楽しかったですね、パーティー」

いつになくはしゃいだ様子で、春歌が振り返る。
窓辺に立ち、月明かりに照らされキラキラ輝く笑顔はとても愛らしく、頬はきっとピンク色に咲き染まっているのでしょう。

「ええ。愛島さんも喜んでくれたようで何よりです」
「はい!」

今日は、愛島さんの誕生日とハロウィンパーティーを同時に行いました。皆でスケジュールを合わせるのは大変でしたが、あの盛り上がりならば大成功と言えます。苦労のしがいがあったというものです。

「……あの、一ノ瀬さん…?」
「なんです?」
「どうして…さっきから電気をつけないのでしょう…」

不安の色が混じった目で私を見上げる春歌。
私はすぐには答えず、彼女の頬に手を添えました。

パーティーが終わり、今は私の部屋です。
当然のように彼女を連れてきましたが、確かに私は部屋の明かりを落としたまま。

「実は…君に言っていなかったことがあります」
「は…はい…」

真剣な声を出したからでしょうか。彼女は途端に緊張してガチガチに固まりました。

「実は…」

たっぷりと時間をおく。
春歌がこくりと小さく喉を鳴らしました。

「私は吸血鬼なのです」
「…………えっ!?」

大きな目を更に丸くして、春歌は一心に私を見詰めてきます。

さて、どんな反応が返ってくるでしょう。

「ずっと我慢していましたが…愛しい君の血がほしいと、どうしても…今日ばかりは衝動が抑えられず…葛藤している顔を君に見せたくなかったのです」
「あ、あの…その…」

狼狽えた目が左右に動き、ぎゅっと瞼を閉じた後、現れた目は泣きそうに潤んでいます。

込み上げるものを感じ、つい力いっぱい抱き締めてしまいました。

「一ノ瀬さん…」
「怖がらせてすみません」
「い、いえ…急だったもので驚きましたが…あの……私でよければ、どうぞ…」

と言うと彼女は恥じらいながらも首筋を晒して此方に見せてくれる。
白く細い首は美しく、彼女の手に導かれるまま指を乗せるとすべらかで心地好い感触が私の胸を躍らせた。

「……良いのですか?」
「はい。一ノ瀬さんになら…私、何だって差し上げます」
「……っ、…」

なんという殺し文句を言い放っているのでしょうか君は。

いえ、私になら、と言ってくれたのは非常に嬉しいのですが…

心配です。
こうもあっさり信じられてしまうと、ええ、とてもとても心配です。
このことはレンや寿さんには絶対に知られないようにしましょう。調子に乗って何を仕掛けてくるか分かりません。

というか、今更冗談ですと言えない雰囲気になってきましたね。
美風さんに『ドッキリは仕掛ける相手を選ばないと自分が辛くなる』とアドバイスされたのを今まさに痛感しています。

何より、大胆に首を差し出してくれた春歌を前にして何もせず終われません。

どうやら、演じきるしかなさそうです。

「ありがとうございます。では、遠慮なく…」
「はぃ…っ」

幸い、彼女を美味しく頂く方法は心得ていますしね。






☆HAPPY HALLOWEEN☆
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