『COMPANY's Pawn』短編・番外編
私は先月のバレンタインデーで、ソラに惚れ薬を飲ませた…つもりが、箱の説明書を鵜呑みしたばかりに、割と強めな興奮剤を盛ってしまい…。結果、大変な目に遭ってしまった。いいや、ある意味、美味しい展開だったのかもしれない。あくまで恋人としては、だけど。
そして本日は、3月14日。ホワイトデー。お返しについては特に言及されず、こちらからもせずに過ごしてきた。仕事終わりに、私の部屋までやってきたソラは、スーツを脱いで、ラフなスラックス姿になっている。何も言われなかったけど、お泊まりしていく気だ。…やったぁ!明日はソラの作った朝食が食べられる!
ミートオムレツがいいなあ…なんて、ぼんやりと考えていると。隣に座ったソラが、おもむろに綺麗な化粧箱を差し出してきた。ホワイトデーだ、と短く言いながら。…正直、庶民生まれの庶民育ちで、且つ、その辺のちっちゃい会社でOLしてる私からすれば、これがどこのなんと言うメーカーのものかは一切分からないけれど。…ソラが贈ってくれるものに、間違いなんて無い。開けると、琥珀糖が並んでいた。うわあ…宝石みたい…。と、うっとりしていると、丁寧に切り揃えられた爪の指先が、琥珀糖のひとつを摘まみ上げる。ソラだ。箱から視線を上げると、翡翠の眼とかち合った。ソラの指先に挟まった琥珀糖が、口元へと運ばれる。特別に誘われた訳ではないのに、私は自然と琥珀糖を迎え入れた。シャリ、と奥歯で琥珀糖を噛んだ弾みで、私の口先がソラの指のほんの先を食む。あ、と思ったけれど。そのまま。人差し指の、僅かな先だけを。はむはむと、唇で挟んだ。誘ってくれないなら、誘ってみる。すると、するり、と指が引き抜かれて。
何も考える暇も与えられずに、キスをされた。違う。考えてる。ソラのこと。ソラのことしか、考えられない。甘い琥珀糖の味がする、優しいキスに夢中になった。
ちゅぱ、と絡んでいた舌同士が離れて、銀糸が引く。頭がボーっとするし、心臓はどきどきとしてるし、お腹の奥がじんじんする。もっと欲しいよ…。
ソラの指先が、私の顎下を撫でる。子猫をあやすかのような仕草に、くすぐったいような、それでいて、もどかしいような気持ちになって。お腹の奥が、もっともっと、きゅん、と疼く。
「…どうだ?『メロメロとろとろ』とやらになった気分は?」
ソラが問うてくる。でも、私にはその台詞の意味がよく分からなかった。何言ってるんだろう?もう、ソラの声を聞いてるだけで、胸がはちきれそうなくらい、ドキドキするの。
ソラがフッと笑った。笑うなんて、珍しい。でも、それも、かっこいい。
顎下を撫でていた指先が、耳たぶをつつき、頬を伝って。私の唇を這った。欲しくて堪らなくて。ソラの指先を再度、食んで。舌先でチロチロと舐めた。
「すっかり、子猫みたいになってるな」
「…んぅ…?」
もうソラの言っていることが全く理解できないでいるけれど。それでも、私を構ってくれるソラの瞳が優しくて。声が甘くて。それが、とても嬉しくて。
もっと、もっと。と、ねだるために、ソラの首に手を回した。
――――…。
ふたりが愛し合う音が、室内に密やかに響くなかで。
机に放置したままの、ソラのスマートフォンが、サイレントでメッセージを受信する。
送り主は、安心安全設計で有名な、ラブグッズの大手会社だった。
通知欄から覗けるメッセージの内容、それは…。
【この度は、お菓子ラブポーション『Melty Sugar』を、お買い上げありがとうございます!商品のレビューをしませんか?】
そして本日は、3月14日。ホワイトデー。お返しについては特に言及されず、こちらからもせずに過ごしてきた。仕事終わりに、私の部屋までやってきたソラは、スーツを脱いで、ラフなスラックス姿になっている。何も言われなかったけど、お泊まりしていく気だ。…やったぁ!明日はソラの作った朝食が食べられる!
ミートオムレツがいいなあ…なんて、ぼんやりと考えていると。隣に座ったソラが、おもむろに綺麗な化粧箱を差し出してきた。ホワイトデーだ、と短く言いながら。…正直、庶民生まれの庶民育ちで、且つ、その辺のちっちゃい会社でOLしてる私からすれば、これがどこのなんと言うメーカーのものかは一切分からないけれど。…ソラが贈ってくれるものに、間違いなんて無い。開けると、琥珀糖が並んでいた。うわあ…宝石みたい…。と、うっとりしていると、丁寧に切り揃えられた爪の指先が、琥珀糖のひとつを摘まみ上げる。ソラだ。箱から視線を上げると、翡翠の眼とかち合った。ソラの指先に挟まった琥珀糖が、口元へと運ばれる。特別に誘われた訳ではないのに、私は自然と琥珀糖を迎え入れた。シャリ、と奥歯で琥珀糖を噛んだ弾みで、私の口先がソラの指のほんの先を食む。あ、と思ったけれど。そのまま。人差し指の、僅かな先だけを。はむはむと、唇で挟んだ。誘ってくれないなら、誘ってみる。すると、するり、と指が引き抜かれて。
何も考える暇も与えられずに、キスをされた。違う。考えてる。ソラのこと。ソラのことしか、考えられない。甘い琥珀糖の味がする、優しいキスに夢中になった。
ちゅぱ、と絡んでいた舌同士が離れて、銀糸が引く。頭がボーっとするし、心臓はどきどきとしてるし、お腹の奥がじんじんする。もっと欲しいよ…。
ソラの指先が、私の顎下を撫でる。子猫をあやすかのような仕草に、くすぐったいような、それでいて、もどかしいような気持ちになって。お腹の奥が、もっともっと、きゅん、と疼く。
「…どうだ?『メロメロとろとろ』とやらになった気分は?」
ソラが問うてくる。でも、私にはその台詞の意味がよく分からなかった。何言ってるんだろう?もう、ソラの声を聞いてるだけで、胸がはちきれそうなくらい、ドキドキするの。
ソラがフッと笑った。笑うなんて、珍しい。でも、それも、かっこいい。
顎下を撫でていた指先が、耳たぶをつつき、頬を伝って。私の唇を這った。欲しくて堪らなくて。ソラの指先を再度、食んで。舌先でチロチロと舐めた。
「すっかり、子猫みたいになってるな」
「…んぅ…?」
もうソラの言っていることが全く理解できないでいるけれど。それでも、私を構ってくれるソラの瞳が優しくて。声が甘くて。それが、とても嬉しくて。
もっと、もっと。と、ねだるために、ソラの首に手を回した。
――――…。
ふたりが愛し合う音が、室内に密やかに響くなかで。
机に放置したままの、ソラのスマートフォンが、サイレントでメッセージを受信する。
送り主は、安心安全設計で有名な、ラブグッズの大手会社だった。
通知欄から覗けるメッセージの内容、それは…。
【この度は、お菓子ラブポーション『Melty Sugar』を、お買い上げありがとうございます!商品のレビューをしませんか?】