『COMPANY's Pawn』短編・番外編
今年のバレンタインチョコレートは、特別だ。甘いものが苦手なソラのために、高カカオチョコレートを手作りしたのもある。でも、それだけじゃない。この、恋人特製手作りチョコレートには、『媚薬』が混ぜ込んであるのだ。
媚薬、すなわち、惚れ薬。これを食べれば、あのクールで厳格でツンツンしてるソラだって、撫でられた猫のように、私にメロメロとろとろになる…らしい。パッケージには、そんなことが書いてあるんだもん…。私はそれを信じる。信じて、ソラにこの媚薬入りチョコレートを食べさせる。そして、メロメロとろとろになったソラを、一晩中、愛でてやるのだ。
そんな私の邪な想いなど知りもせず。目の前でソラはチョコレートを口にしている。甘すぎない高カカオのおかげか、香り付けのベルガモットが良かったのか、それとも単にお腹が空いていたのか。6枚あったプレートチョコをペロリと平らげて貰えた。どうだった?と聞くと、来年もこれがいいと実直な答えが返ってきた。言外に美味しいと評されたことと、来年も一緒にいてくれると宣言して貰えたことが嬉しくて、思わず抱きついた。けれど、仕事明けで私の部屋まで来てくれたせいか、まだシャワーを浴びていないことを理由に、引きはがされてしまった。
シャワーに行ってしまったソラのシャツと下着を洗濯機に投げ込み、スーツには消臭抗菌スプレーを吹きかける。
さて、薬がいつ効くのかは分からないけれど…。とりあえず、メロメロとろとろになったソラを愛でる準備はしておこ……―――
「―――……なるほど。こいつを盛ったのか…」
……、…。低い、とても低い。そして、冷たい、冷たすぎる声が。私の耳を掠めた。身体の芯まで凍るかのような感覚に陥る。
震えながら背後を振り向くと。髪もロクに乾かさずに、ボクサーだけを履いたソラが、例の惚れ薬のパッケージを持っていた。しまった…!ゴミ箱にそのまま捨てちゃってたんだ…!
え……?あれ、ソラ…、あの……その…、下半身、的なところ、…大変なことになってません…??
私の凝視する目線に気が付いたらしいソラが、薬のパッケージをゴミ箱に投げ捨ててから、こちらに歩み寄る。慄いて後ずさりした私は、―――後ろにあったベッドに尻もちをついた状態で、ぼふん、と座り込む。と思ったら、すぐにソラが覆い被さってきた。
その翡翠の両目は、ギラギラと光る飢えた獣のそれ。うそ…!惚れ薬には、撫でられた猫のように、メロメロとろとろになるって…!
「あまり、あの手のグッズの説明書は、鵜呑みにしない方がいい。
惚れ薬や媚薬と銘打ってはいるが、要するに発情を促進する、ただの興奮剤だ。…腰回りが熱くて、たまらない…。
…で?俺を『メロメロとろとろ』とやらにして、お前は何を期待している?」
今は眼前にいるのは猫なんて可愛いものじゃない。飢えた肉食動物だ。ライオン的なやつだ。普段がクールなソラがだからこそ、ギラついたその眼にギャップを感じて、それはそれで美味しいけれど…
「考え事か?余裕があるようで、何よりだ」
そう呻くようにソラが言うや否や。噛みつくようなキスをされる。僅かに感じる、チョコレートの味。
舌を深く絡め合うキスの後。一度、唇が離れた。至近距離で、ソラが囁く。
「…今夜は、眠れると思うな」
ああ。私、いまから一晩かけて、メロメロとろとろにされちゃうんだ…。
媚薬、すなわち、惚れ薬。これを食べれば、あのクールで厳格でツンツンしてるソラだって、撫でられた猫のように、私にメロメロとろとろになる…らしい。パッケージには、そんなことが書いてあるんだもん…。私はそれを信じる。信じて、ソラにこの媚薬入りチョコレートを食べさせる。そして、メロメロとろとろになったソラを、一晩中、愛でてやるのだ。
そんな私の邪な想いなど知りもせず。目の前でソラはチョコレートを口にしている。甘すぎない高カカオのおかげか、香り付けのベルガモットが良かったのか、それとも単にお腹が空いていたのか。6枚あったプレートチョコをペロリと平らげて貰えた。どうだった?と聞くと、来年もこれがいいと実直な答えが返ってきた。言外に美味しいと評されたことと、来年も一緒にいてくれると宣言して貰えたことが嬉しくて、思わず抱きついた。けれど、仕事明けで私の部屋まで来てくれたせいか、まだシャワーを浴びていないことを理由に、引きはがされてしまった。
シャワーに行ってしまったソラのシャツと下着を洗濯機に投げ込み、スーツには消臭抗菌スプレーを吹きかける。
さて、薬がいつ効くのかは分からないけれど…。とりあえず、メロメロとろとろになったソラを愛でる準備はしておこ……―――
「―――……なるほど。こいつを盛ったのか…」
……、…。低い、とても低い。そして、冷たい、冷たすぎる声が。私の耳を掠めた。身体の芯まで凍るかのような感覚に陥る。
震えながら背後を振り向くと。髪もロクに乾かさずに、ボクサーだけを履いたソラが、例の惚れ薬のパッケージを持っていた。しまった…!ゴミ箱にそのまま捨てちゃってたんだ…!
え……?あれ、ソラ…、あの……その…、下半身、的なところ、…大変なことになってません…??
私の凝視する目線に気が付いたらしいソラが、薬のパッケージをゴミ箱に投げ捨ててから、こちらに歩み寄る。慄いて後ずさりした私は、―――後ろにあったベッドに尻もちをついた状態で、ぼふん、と座り込む。と思ったら、すぐにソラが覆い被さってきた。
その翡翠の両目は、ギラギラと光る飢えた獣のそれ。うそ…!惚れ薬には、撫でられた猫のように、メロメロとろとろになるって…!
「あまり、あの手のグッズの説明書は、鵜呑みにしない方がいい。
惚れ薬や媚薬と銘打ってはいるが、要するに発情を促進する、ただの興奮剤だ。…腰回りが熱くて、たまらない…。
…で?俺を『メロメロとろとろ』とやらにして、お前は何を期待している?」
今は眼前にいるのは猫なんて可愛いものじゃない。飢えた肉食動物だ。ライオン的なやつだ。普段がクールなソラがだからこそ、ギラついたその眼にギャップを感じて、それはそれで美味しいけれど…
「考え事か?余裕があるようで、何よりだ」
そう呻くようにソラが言うや否や。噛みつくようなキスをされる。僅かに感じる、チョコレートの味。
舌を深く絡め合うキスの後。一度、唇が離れた。至近距離で、ソラが囁く。
「…今夜は、眠れると思うな」
ああ。私、いまから一晩かけて、メロメロとろとろにされちゃうんだ…。