青城の名前が出た途端、日向はビクッ!と震え、田中は苦虫を噛み潰したように舌打ちをし、山口に至ってはサーブで月島が狙われまくった事を未だに許していないようで青筋を立てていた。
……たった一度でこれだけ敵意むき出しにされるのもある意味凄い。
「……あとは言わずもがな……」
超高校級エースの牛島若利擁する
ー王者・白鳥沢ー
「こんな感じか……。詳しいことは、その内な」
((烏養さん……ズボラっぽいのに……!))
「……お前らなんか失礼なこと考えてねぇか?」
澤村と菅原のにこやかな顔に何かを察した烏養だったが、二人はそのにこやかな顔を保ったままブンブンと首を横に振る。
「とまぁ、この辺が俺的今年の四強だ。と言ってみたものの、上ばっか見てると足を掬われる事になる。大会に出てくる以上、負けに来るチームなんかいねぇ。全員勝ちに来るんだ。」
俺達が必死こいて練習してる時は、当然他の連中も必死こいて練習してる。
弱小だろうが強豪だろうが、勝つつもりの奴らはな。
「それを忘れんなよ?
ーそんで。もう誰にも、“飛べない烏”なんで呼ばせるな!」
「「オーッス!!」」
「みんなまだいる!?遅くなってごめん!!」
体育館へと息切らして入ってきた武田は、一枚のプリントを差し出した。
「出ました!インターハイ予選の組み合わせ!!」
「「おお!!」」
プリントを受け取った澤村を中心に、皆が覗き込む。
烏野の名前の下には、“伊達工”の文字が。
「一回戦勝てば、二回戦伊達工も勝ち上がってくれば当たりますね」
「……それだけじゃないですよね?うちのブロックのシードにいるの、青葉城西ですよ」
月島の声に全員がシードへと目を向ける。
そこには確かに青葉城西がいた。
伊達工と青城。烏野にとって一番目を向ける相手が、両方自分達と同じブロック……。
影山と日向はゾワッと震えが立つ。
その様子に烏養は堅い声で「おい」と呼びかけた。
「さっき俺が言ったこと、忘れてねぇよな?
上ばっか見てると……」
「分かってます」
烏養の言葉を遮るように強く断言すると、澤村はプリントをじっと見る。
そして一呼吸置くと、真っ直ぐに前を見据えた。
「目の前の一戦。絶対に取ります!」
※ここから、本誌連載(3月23日号)のネタバレが入ります。
翌日。飲み物を買うために、
桜が自動販売機に向かうと、そこには見慣れた仁王立ちが。
「ひぃく……」
話しかけようとした声はガタン!!という音に遮られ、その勢いは
桜の後ろを通りかかった生徒達が「何あれ……」「怖っ」と声を零すほどだった。
その音の正体は、影山の自動販売機のボタンを押す音なのだが、両方とも同じ飲み物なのに指2本で目潰しの如く押すのは何故なのか。
そして後ろから見ても気迫がすごい。普通ならば話しかけるのを躊躇うが、長年の付き合いで慣れている
桜はそのまま普通にその背中に声をかける。
「いつもやってるけど、それなにか意味あるの?」
「あ?……何となく」
「毎回突き指しないかハラハラするよ」
そう漏らしつつ、
桜も自販機にお金を入れてポチっとミルクティーのボタンを押す。
その隣で、影山はズコーっと牛乳を飲み干した。
「……ねぇひぃ君」
「なんだよ」
「試合前に、寄っていこうか」
「?どこに」
「一与さんのところ」
「………………」
影山にバレーの世界を教えてくれた祖父・一与。
今こうしてセッターとしての道を歩けているのは、他でもない祖父がいてくれたから。
桜のことも、本当の孫のように可愛がってくれていた。
「ね?きっとひぃ君の活躍見たいと思うから」
「………うん」
桜の言葉に、影山はまるで祖父と話していた時のように、少し幼さの残る表情で頷いたのだった。