音駒との練習試合が終わり、五月も中旬を迎えた。
少しずつ夏の気配が漂って来ると同時に、運動部の彼らにとっては、インターハイ予選が間近に迫った大切な時期。
それは烏野高校排球部も例外ではない。
音駒からたくさんの飛躍のヒントを得た日向達はより一層練習に熱を上げる。
そのためドリンクの消費も早かった。
桜と清水は今日も何往復目とも知らぬ水道で、部員たちのスクイズの洗浄と消毒をする。
今日は一本だけでは足らず、二本のスクイズを交互に使うほどに、練習に気合いが入っていたように感じた。
「そういえば、そろそろインターハイ予選の組み合わせが出る頃だね」
「そっか。もう間近ですもんね。ちょっとドキドキします……」
「
桜ちゃんにとっては初めてだもんね」
「はい。……何か、私に出来ることがあればいいんですけど」
「
桜ちゃんは、今のままで十分力になれてる」
ふんわりと笑ってそう言った清水を見て、
桜は微かに頬を染め「ありがとうございます……」と小さく感謝をこぼした。
穏やかな空気で片付けを終えた
桜達が体育館に戻ってくると、日向達がある雑誌を見て声を上げていた。
桜も気になって、輪にとことこと近づく。
「あの、皆さん何見てるんですか?」
「
桜!見てこれ!」
日向から雑誌を受け取ると、飛び込んできたのは「今年特に注目の三人はこいつらだ!」という見出しと共に、ある選手が載っていた。
「あれ?この人白鳥沢なんだね」
「そうそう!影山が落ちたとこ!」
「うるせえ!!」
一言余計な日向を影山は鬼の形相でツッコムが、後ろでプスーと笑っている月島と山口の方が気に障ったようで、今度は二人に噛み付いていた。
「てめぇ月島何笑ってる!!」
「笑ってませーん」
「嘘つけゴラァ!!」
「あはは!笑ってませーん!!」
「だよねーツッキー!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ三人を後目に、
桜はじーっとページを読む。
「全国の三大エースの一人が、宮城にいるんですね……」
「んー……これぞまさにエースって感じだよなぁ」
そう呟いた澤村の目線の先にいた東峰は「おい!なんでこっち見てる!?」とショックを受けるものの、西谷に励まされるようにバシバシ!!と肩を叩かれていた。
「影山、こんなやついるとこ行こうとしてたんだな」
「そんであれだろ?超高校級エースに向かって、「もっと速く動け下手くそ!」とか言っちゃうんだろ?」
「言いませんよ!」
「……翔君?」
「これを倒さないと、音駒とは戦えない」
「こらこら。白鳥沢だけが強敵じゃねぇぞ」
そんな日向の声が聞こえたのか、烏養がやってくる。
「他は、去年のベスト4とかですか?」
「それももちろんだが、今年は他にも強敵がいる」
守りと連携に優れたー和久谷南ー
鉄壁のひと言に尽きるー伊達工業ー「どこよりも高いブロックを誇るチームだ。
伊達工には確か、今年三月の県民大会で、2対0で負けてるな」
桜はそれを聞いて、隣にいた影山にそっと声をかける。
「ひぃ君、もしかして……」
「ああ。菅原さんが言っていたのは、伊達工業との試合か……?」
あの時菅原は東峰のスパイクは徹底的にブロックに止められたと言っていた。高いブロックを誇る伊達工業なら、それが出来てもおかしくないだろう。
「伊達工は本来ならベスト4レベルのチームだが、去年は三回戦で優勝校の白鳥沢と当たって、ベスト16で終わってる。だから今年はシードじゃない。
つまり、組み合わせによっては一回戦で当てることも無きにしも非ずだ。
そんで次……ああ、こことはこの間練習試合したんだってな」
「!」
「セッターながら、攻撃力もチーム1。もちろんセッターとしても優秀。恐らく総合力では県内トッププレイヤーの……」
及川徹率いる
青葉城西