悠々自適な彼らの備忘録
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name change後退トリップ(25→16)男主
根っからのゲーオタ。父親はライトアニオタで母親は元レイヤー、姉と妹は腐女子というハイブリッド家族。姉は界隈では有名絵師だとかなんとか。妹のCP談義にも付き合える教養(違う)の持ち主。
(デフォルト:古渓 諒(こたに りょう))
※妹も後退トリップしてキャラに絡み出します。
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夏休みも本番に差し掛かり、納涼イベントと称して地域で肝試しが行われることになった。それだけならさしたる問題は無いのだが、本来であれば参加者側に回るはずの杏樹が脅かし役に名乗り出て、それが通ってしまったのが厄介なのだ。一体何を企んでいるのかと疑う諒を誰が責められようか。ついでにその話が探偵団の子供らに流れたとあってはまさに百害あって一利なし、大変に面倒な事態になること必至である。
この日は阿笠邸に集まってそれぞれが持ち寄った衣装のお披露目会をすることになっている。当然のように脅かし役に回る気満々の探偵団は親達の手伝いを借りながら完成させたようで、クオリティはそこそこ。半分くらいハロウィンと混同しているようなセレクションだが、そこはまぁ子供の発想ということで目を瞑ろう。
「コナンくんは?」
話をふられた名探偵はと言えば、まさか自分が頭数に入っているとは思わず「え、俺もやんの?」と困惑し、当たり前だと口を揃える便乗組に乾いた笑いを零していた。
「今から衣装作るんじゃ本番に間に合わないよコナンくん」
「そうだぞ!」
「けどよ、肝試しなんだから何も飛び出してって脅かすんじゃなくてもいいんだろ? だったら提灯を釣るとかでも……」
「そんな子供騙しじゃ誰も驚きませんよー」
いや、子供騙しで十分だろうと思うのだが、流石にそれは言えないので肩を落とした。
「杏樹ちゃんはー? どんなお化けになるの?」
「……見たいの?」
「えっ」
忠告じみた杏樹の返答にただならぬ気配を感じる探偵団は覚悟を決めたように頷いた。
「じゃあちょっと着てくるけど、ほんとに見たい?」
「だって、気になるし……」
「そんなに念を押されると余計に、ねぇ」
「おう……」
怖いもの見たさというものか、そわそわし始めた子供達の要望に応え、杏樹は居間から見えないキッチンスペースの裏に引っ込んだ。それを冷ややかに見送るコナンは我関せずとアイスコーヒーに口をつけた。
「どんなのだろうね、杏樹ちゃんのお化け」
「きっと泣く子も黙る怪物とかですよ、こういうのにはいつも全力ですから」
「それならヤイバーの怪人とかだぜきっと!」
それは無い、とコナンが心の中で突っ込みを入れた時、彼らの後に白い影がのそりと忍び寄るのが視界に入り、啜っていたコーヒーを吹き出してしまった。
「ちょっと大丈夫ですか、コナンくん!」
「何やってんだよー」
噎せながらも背後を指し示せば、探偵団は不思議そうに顔を見合わせた後、後方を振り返った。
メジェドである。
「うわぁぁあああああああ!!!?」
ここが地区センターや一般的な住居であれば近所迷惑にもなり得る子供達の大絶叫が阿笠邸に響き渡った。シンプルなフォルムだが不安感を煽る深淵のような目がシンメトリーについており、それ以外の顔のパーツは無く虚無のような出で立ちがそこはかとなく得体が知れない。落ち着いてみればそこまで怖いものではないがあまり見続けるとじわじわ怖さがぶり返してくる辺りが印象深く、とんだトラウマメーカーである。
「出ませい」
「杏樹ちゃん、だよね?」
「出ませい」
「増えた!!」
反対方向からもう一体のメジェドが現われ、子供達の座っているソファーの周りをぐるぐると回り始めると、何かの儀式のような光景になる。友人かと尋ねた言葉に返答がなく、別固体が現れたとあっては子供の豊かな想像力によってこの白布の物体に乗っ取られてしまったのではと勘繰って青くなって震えてしまっている。
「どうしようコナンくん、杏樹ちゃん、きっとお化けに操られちゃったんだよ」
「んな訳ねーだろ」
「でも様子が変だし……!」
「それに増殖したんですよ!?」
「きっともっと仲間を呼ぼうとしてんだよ!」
確かに召喚の儀式の様にも見えるが、タネが分かりきっているコナンはため息をつきつつ、ぐるぐると周りを走るメジェドに真名を突きつけた。
「あんまりコイツらをからかうなよ杏樹、それと灰原」
「え!?」
驚くのも当然、今回の話題に総スルーを決め込みこのリビングルームにすらいなかった人物が予想外の形で登場したのだ。片方のメジェドがもぞりと内側を動かし、被った白い布を放り出せば、正体を現したのはコナンの言う通りの赤みがかった茶髪。
「哀ちゃん!」
「全く……変な事に付き合わせないでくれる?」
「ごめーんでもなんだかんだ付き合ってくれる哀ちゃんが最高に好き! 結婚して」
「お断り」
「秒でフられたー」
もう一方の白布が内側でケラケラ笑っている声は間違いなく杏樹である。いつもの調子にすっかり安心した歩美が言葉を投げた。
「杏樹ちゃん! もう、びっくりしたんだからー」
「普通に登場したんじゃびっくりしないだろうからね」
「確かに見た目はただ白いシーツ被っただけですもんね……」
「つーかいつまでそれ被ってんだよ」
そう、杏樹は白布を被ったままなのである。
「あ、ごめんごめん」
特に謝る気もないような口調で答えるともぞもぞと纏った布を剥ぐと、杏樹の顔には黒い楕円が二つ付いただけの面が貼り付いていた。
「うわぁぁぁぁあああああああ!!!!」
再びの子供達の絶叫に混じって、杏樹がけたけたと笑う声が響いた。
因みに肝試し大会の本番でもメジェド姿で現れ、じっと見つめたりぴたぴたと背後を暫く歩くなどして「じわじわ怖い」と評判だったという。
End