第一部
name change
name change後退トリップ(25→16)男主
根っからのゲーオタ。父親はライトアニオタで母親は元レイヤー、姉と妹は腐女子というハイブリッド家族。姉は界隈では有名絵師だとかなんとか。妹のCP談義にも付き合える教養(違う)の持ち主。
(デフォルト:古渓 諒(こたに りょう))
※妹も後退トリップしてキャラに絡み出します。
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水無怜奈を匿っている杯戸中央病院に組織の一員が患者として潜伏していることが明らかになり、顔の知られていないコナンが疑わしい三人の患者に探りを入れる算段になった。いろいろと部屋を引っかき回して患者を怒らせたくらいにしか見えないが、無駄のない収穫を得られていると分かるのは、相当頭のキレる人間くらいだろう。諒も初見ではまるで分からなかった訳だが、持ち合わせている知識は紛れもなくチートである。
コナンは三人目の患者への探りを終え病室を出る。動きを見てきた三人の中で、誰が目当ての人間かというのは大体読めた。あとは撮った映像と共に標的を明らかにすれば良いだけだ。
『大分わざとらしいな』
唐突に降ってきた、この場に、この件に関わってはいけないはずの人物の声に、コナンは目を丸くした。
「諒兄ちゃん……なんでここに」
『ん、知り合いの見舞い……ってのは二秒でバレる嘘だな。ちょっと本堂を探しに、ついでに坊主の動向観察』
「え?」
『毛利が気にしてたんだよ。最近フラっと出かけるし、本堂がいなくなったことに妙に興味持ってたから、危ないことに首突っ込んでんじゃないかって』
我ながらよく出来た建前だ。何となく気にしているという話は聞いていたが、別に何を頼まれたわけでもない。ただの口実に過ぎないため、即座に話題をすり替える。わざとらしく見ず知らずの他人の病室に入り込む様子は何だったのか、と。
「前に、諒兄ちゃんを攫った悪い人の仲間が、患者に成り済ましてるかもしれないんだ」
『……ほー、あの組織の』
普通、今の説明で「組織」なんて単語は出てこない。この一言で察してくれと言わんばかりに納得したように呟いた。コナンは思惑通り例の組織の存在を諒が知っているのだと認識し、標的を「組織の一員」と呼び方を改めた。そして探りを入れるという目的を終えたコナンは諒を連れ立ったまま、協力態勢にあるFBIの待つ車へと向かった。
「お疲れ、コナン君。遅かったわね」
「うん……ちょっとね」
扉を閉めずに後ろを伺えば、諒が身をかがめて車内にいるジョディに顔を見せた。
『どーも』
「古渓君じゃない! どうして……」
「さっき偶然……あの患者さん達にカマかけてるの聞かれてたみたいで」
『組織の下っ端が彷徨いてると聞いて。うまく行けば姉の居場所吐いてくれるかもって思ったり』
「え、諒兄ちゃんのお姉さん!? 組織にいるの?」
再び驚愕の色を浮かべるコナンに、諒は口を閉じた。これはまだ名探偵には明かしていなかったことだ。どう切り抜けるかと思案に走ったところ、赤井が口を開いた。
「ボウヤも会っているんじゃないか? イエーガーマイスターと名乗る、組織の人間に」
「うん……でもあの時は諒兄ちゃんに変装して……まさかあれが諒兄ちゃんのお姉さんだったなんて」
『それより、この坊主が探ってきた患者、見るんじゃないんですか』
「そうだわ。イエーガーの件は、一旦置いておきましょう」
その一声により、一先ず録画した映像を確認することになった。入りは目の前で転び携帯を落とし、それを拾わせて操作させると言ったベタな手口。だが、子供のいたずらのような立ち回りにより全て明らかになっていた。
「全員、上手くはぐらかしているようにも見えますね」
「ふむ。となると、しばらくこの三人に見張りをつけねば」
「……いや、見張りをつけるのはたった一人。なぁ、そうだろうボウヤ」
示し合わせるように問いかける赤井に、コナンは頷いた。
『……二人目、だろ』
「え?」
諒が零したその標的に、ジョディは説明を求めるように聞き返した。コナンは意外そうに見上げるが、ややあって不敵に笑った。一先ず車を降り、会議室と化している病院内の一室に移動してその真相を明らかにすることにした。
一人目の急性腰痛で入院している患者は今も腰を痛めており、病気を偽って潜伏している線はないと見てシロだ。完治しているにも関わらず怪我を偽っている残り二人だが、三人目はペースメーカーをつけており、電子機器を嫌っている。大方、ただの保険金目的の老人に過ぎない。残るは二人目のみということだ。
『まぁそいつ、気配も普通の人とは異質だったしな』
「気配って……」
灰原の言う組織の人間に染み付いた匂いとやらだろうか、とコナンはぼんやり思った。
『ま、その楠田よりもっとやべー気配は赤井さんからしてるけど』
視線を他所へやりながらそんなことを呟く。画面越しにこの世界を傍観していた身としては、彼らの関係者の匂いとやらを組織センサーなどと呼んで軽んじていた訳だが、実際は意外にも分かるものだ。末端の人間でさえ、おや、と思えるものがあるのだから、中枢に関わっている者なら一目で分かるはずだ。イエーガーに対しては恐らく姉としか思っていなかったから感じなかったのだろうが、前に新出に変装していたベルモットからも似たようなものは感じ取れたので、その感覚を持ち合わせているという事だろう。
日も暮れてきたところで、さすがに妹を放ったらかしてこの病院にとどまることは出来ないので諒は帰宅することにした。
『何か進展あったら連絡ください』
「あぁ……だが、いいのか諒君。我々と行動すれば、組織と接触する可能性もある。そうなれば、君はまた証人保護プログラムを受けることになるかもしれない。上手く焼死扱い出来た前回とは状況も違うだろ」
また、とはどう言う事か。諒は表情を変えずに心の内で呟いた。この世界でのことは、高校に入る頃からしか記憶にない。それ以前の話をされても今の諒にそれを知る術はないのだ。そんな考えなど露ほども気付かない者達は、諒の返答を待った。しかし、今し方諒と同じ疑問を持った名探偵がそれを問う。
「また、って、どういう事?」
赤井は返答を留め、一度諒に視線を向けた。捨てている過去について他人の口から語られるのはあまりいい気はしないだろうと推測しているようだが、他人の口からしかそれを知る術を持たない諒に気兼ねする理由はなかった。
『別にいいですよ』
ふい、と目を伏せながらそう答えれば、赤井は諒の過去を語った。
「彼は元々日系ドイツ人でね。六年前までは家族と共に向こうに籍を置いていたんだが、ある時両親が何者かに銃殺され、家屋も全焼する事件が起きた。焼け残った骨は三人分、地下室の耐火シェルターに身を隠していた少年だけが生き残ったんだ。まぁ、その後の彼の証言で、事実は伏せられることになったんだがな」
「証言……?」
「家族を殺害した男の特徴は、銀髪を長く伸ばし、黒いハットを被り真っ黒な服装だったそうだ」
「それって……!」
コナンにとっては、到底忘れ得ぬ人物の姿と一致する視覚情報だった。その予測は事実であり、諒の生存を伏せる必要があると判断された要因だ。
「奴らが関わっているのも理由の一つだが、彼はこうも言っていた。姉はその男に仲間になると言って着いて行った、とな。もう察しは付くだろう」
「イエーガー……古渓の姉さんが組織にいる理由……」
どさくさに紛れて素で呼び捨てされたのは置いておくとして、なんとも壮絶な過去を持っていたようだ、と他人事のように思った。実際それを体験した自分とは別人なので、結局は他人事なのだが。
「あれ、でも確か焼け跡から見つかった骨は三人分って……」
「あぁ……それは恐らく、父親の方が研究していた人骨の複製の副産物だろう。誰のものでも無い、人間の物によく似た骨だったんで、焼死したように事実を隠蔽できたというわけだ」
一体何の研究だったのかと思うものもあるが、結果的にそのおかげで生き延びているのだから良しとしよう。意外な過去も明らかになったところで、諒は離脱の意を伝えた。これ以上長居すると、さすがに帰ってから夕飯の支度をするのも億劫になるというもの。気になるところもまだいくつかあるが、別人になって生きている以上知っていてもプラスにはなり得ないと見てその場から撤退した。
後日、動きを見せた楠田にFBIが奇襲をしかけるも取り逃がし、あの世に逃げられたと伝えられた。
End