第一部
name change
name change後退トリップ(25→16)男主
根っからのゲーオタ。父親はライトアニオタで母親は元レイヤー、姉と妹は腐女子というハイブリッド家族。姉は界隈では有名絵師だとかなんとか。妹のCP談義にも付き合える教養(違う)の持ち主。
(デフォルト:古渓 諒(こたに りょう))
※妹も後退トリップしてキャラに絡み出します。
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また一段と険しい顔をされているようだ。灰原にはもう心配はないと言っておきながら、こちらへの疑いはまだ残っているらしい。偶然鉢合わせた際には警戒するような眼差しで見られていたものだが、諒としては、つい先日まで監禁状態にあったのだから非はない訳で、よもや自分に成り済ましていた組織の人間が自分の姉などと明かすには不自然な間柄である。
十何年も続けてきた同人活動をしていない姉というのもとても斬新なのだが、あの空き家で交わしたやりとりの中で、彼女の根本が記憶にある通りのものであると言う事を確信した。
監禁中の生活で、赤井に話していないことが一つだけある。それが姉の本質に関わることなのだが、諒が本当に何も知らない少年だったのならドン引きだったことだろう。諒の動向から考慮され監視や枷が外された頃、姉は遊び半分で訪ねて来た。
「生きてるー?」
『見ての通り』
「ピンピンしてるね。ちょっとこれ被ってくれない?」
『なにこれ』
鞄からしれっと取り出したのは黒いニット帽。そのアイテムでどこぞのシルバーブレッドを思い出したのはあながち間違いではなかった。
「うん、思ってたけど割と似てる」
『意味が分からないよ』
「元仕事仲間? まぁ辞めちゃったんだけど」
ぼかしてはいるようだが、残念ながら知っているのであまり意味は無い。つまり、ニット帽を被らせてみたら赤井秀一に似てたという事だろう。
「そこで、あたしのメイキングの本気を出してみようと思う」
『は?』
「母さん直伝のレイヤー魂」
『おいまさか』
「ちょっと撮りたい写真があって」
かくして、諒は人生初のコス写を撮らされるハメになった。ついでに姉もハイテンションで別の人物へと変貌した。コスプレもある意味では変装という訳か。聞けば、諒に成り済ますべくメイクを施していたら、何となく面影を見出したらしい。これなら本人を使えば容易に再現できると踏んで、趣味優先でこんなとこまで来たようだが、このフットワークに感心すればいいのか呆れればいいのか、実に破天荒な姉である。
「本当は本人達を嵌めて撮りたかったんだけど、片方は辞めるしもう片方はその人嫌ってるし……そこがまたメシウマなんだけどね」
『職場の人間をなんだと思ってんだ』
「え? 目の保養」
悪びれもなく言う辺り、安定のお腐れ様である。と言うか、今この女が立ち振舞っている人物も実在しているのか、と思いながら諒は記憶の中を探った。だが、その特徴と一致する登場人物が引っかからず、既知の範囲外だったのだろうと片付けた。
おかげで諒の携帯には、絶対に誰にも見せられないような写真が収まることになった。消しても良かったのだが、のちに使いどころが見つかるかもしれないと前向きに捉え、隠しフォルダを作ってそこに保存した。
因みにこの話は杏樹にもしていない。諒が置かれていた状況については、赤井を自宅に招いていた時に丁度帰宅した杏樹が錯乱する前にあらましを説明した。本人はそれどころじゃなく、困惑のような感動のような、奇声と共に悶えており、話半分だっただろう。終始「スパダリがおる……スーパーなダーリンがおる……」と呟いていた。その後、赤井さんに助け出されるとかお前はヒロインか! などと理不尽な八つ当たりをされたのは言うまでもなく。
『それより話聞いてたか?』
「あー、姉ちゃん見つかったんだって?」
『組織の人間らしいけどな』
「そもそもあたしがしばらく顔つき合わせてた兄ちゃんが姉ちゃんの変装って方にびっくりだわ。全く気付かなかった」
そう、そのため組織の人間と接触した諒と杏樹に、証人保護プログラムの話が出ているのだ。命の危険があるとまでは及んでいないのだが、今後の彼らからの接触次第では、それを受けてもらう可能性があると赤井は言っていた。
「まぁでも親族にも関わらずあたしらの存在が向こうに知られてない以上、こっちは何も知らない一般人だし、さすがに命の危険まではねぇ」
『それもそうだが』
姉がどうやって家族の情報を誤魔化したのかは定かではないが、こちらに手を回させない事くらいはやってくれているだろう。
近頃学校で耳にするようになった噂話、過去にこの学校で命を落とした生徒の幽霊騒動だ。まぁそれは当然何らかの仕掛けがあるのだろうと言うことで気にしなかったのだが、クラスメイトのお化け嫌いが解決すべきと息巻いておりそれに付き合わされることになった。放課後助っ人が来るというのだが、話は読めている。
「なんで調査の助っ人がこのガキンチョなのよ」
「だって、お父さん来てくれないんだもん」
『……この坊主が来るなら俺帰っても良いだろ』
小声でそう呟いたところで誰にも聞こえなかったようで、コナンを連れて校舎に戻ることになった。昇降口で帰りがけのクラスメイトと鉢合わせ多少の会話をしたのだが、蚊帳の外になる小学生は何とも言えない顔をしていた。まさかこれが本当に工藤などと誰も思いつきもしないだろう。からかい半分で、生意気そうな顔がそっくりだとは言われているが。
『無駄に博識なとこも似てるぞ』
「あー確かに、変なことよく知ってるわね」
ひとしきり話した後それぞれ別れ、本題の噂の現場に向かうのだが、その途中で遭遇した校医の新出にコナンは驚愕の表情を浮かべ、恐る恐る彼の頬を引っ張った。動揺しすぎでは、と思いつつ、その様子を見下ろした。
「ちょっとコナンくん! 古渓くんと同じ事しないの! すみません先生……」
蘭が零した注意の言葉に、見開いた双眸がこちらを見上げた。そう言えば今朝会ったときに、随分とアメリカから戻ってくるのが早いなと思いながらそんな事をした気がする。コナンは新出が変装でなく本物だと分かり安心していたが、諒が自分と同じ行動をした理由を蘭に尋ねた。
「直接見た訳じゃなくて、園子が写真部の子に聞いたみたいで。ねぇ」
「ええ! 何でも、古渓くんが新出先生に気が付いて立ち止まると、先生も同じように向かい合って立ち止まって、二人の距離が徐々に縮まり、古渓くんの右手が先生の頬に添えられて……! そのまま二人は禁断の口づけを……!」
『おい、事実をねじ曲げんな』
「冗談よ、冗談。まぁ写真部の子はがっかりしてたけど、古渓くんは何食わぬ顔で先生のほっぺたを引っ張っただけよ」
「なんで諒兄ちゃん、そんな事したの?」
『何って、また被り物だったら嫌だろ』
蘭と園子は不可解そうに首を傾げているが、コナンは、自分と全く同じ理由で確認をとった諒に衝撃を受けた。新出の反応が薄いのは、悪い人が自分に成り済ましていたというところだけ伝えられていたからだろう。
それより今は幽霊騒動だろ、と話を逸らせば、ようやく問題の体育倉庫に歩を進めた。
「君は、僕に成り代わっていた悪い人を知っていたのかい?」
潜めた声でそう尋ねる新出に、同じトーンで返答する。その会話を、名探偵が聞き耳を立てている事には気付かないふりをしてだ。
『その仲間に、俺も成り済まされてましたから』
「じゃあ、君も海外へ逃がされていたのか」
『いや、俺の場合はそいつに拉致監禁されてました。まぁこの前、あんたを逃がしたFBIのお仲間さんに助け出されたんですけど』
「へぇ……心の傷になっていないといいけど」
『それは無いですよ、メンタルはそれなりに硬いんで』
こちらとしてはニート生活を満喫していただけなので、別段恐怖することもなかったし、相手は立場はどうあれ姉なので精神を疲弊させる必要もなかったのだ。とはいえそんな事をこの名探偵の前で言えるはずもないので適当にぼかすのだが。
コナンは二人の会話から、ようやく真実に行き着いた。ベルモットと行動を共にしていたイエーガーマイスターは、あの時諒に変装していただけで中身は別人。当の本人はどこかで閉じこめられていただけだった。赤色の目が引っかかってはいたが、諒本人の瞳は黒に近いブラウン。恐らくイエーガーの本来の目の色が赤なのだろう。蘭が見た、たまに赤い瞳をした諒とは、何らかの理由でブラウンのカラーコンタクトを入れられなかったと思われる。
イエーガーと諒が別人なら、少しばかり張り詰めていた気持ちもようやく休まる。クラスメイトを疑うのは心苦しかったし、何よりこんな身近に組織の人間が居座っていなくて安堵した。
その後、他の噂が出ている場所を巡ったり、事故にあった生徒の噂を聞いたりと情報を集め、にわか雨のあと突然姿を現した机の謎を解き明かした。そして誤解が生んだ幽霊騒動は幕を閉じ、例の生徒の事故の真相が明らかになった。
End