【長編】メランコリック・エンジェル
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「女の子1人に大人が寄ってたかって何してんだ...」
「と、轟くん....!」
冷気と共に現れた轟くんはすごく怒っているようで普段とは別人のように目が据わっていた。
流れて来た冷気は一瞬で私を取り囲んでいた敵 を凍らせる。でも私の周りだけは凍っていない。さすが轟くん、すごいコントロールだ。
「甦世風、大丈夫か?」
現れた時の威圧感は何処へやら。心配そうに私に駆け寄ってきてくれた轟くんは氷を鋭く尖らせ私に巻きついたロープのようなものを切ってくれた。
手足が自由になったことでようやく恐怖からは解放されたけれど、今度は何も出来ずに助けられた不甲斐なさでどうしようもなく恥ずかしくなった。
皆を助けられるヒーローになりたかったのに、自分が助けられてどうするんだ。
これじゃ完全に足手まといじゃないか。
私、何のために此処に居るんだろう........。
「甦世風!!」
またもマイナス思考に頭が支配されて無意識に俯いていたら突然両頬を掴まれグイッと上を向かされた。
ヘルメット越しとはいえ、いきなり視界いっぱいに轟くんの顔が広がってギョッとする。
「どうしたんだ?どこか痛いのか??」
「あ.........いや、どこも痛くないよ。大丈夫。」
安心させるように無理矢理ヘラっと笑ってみせたら「全然大丈夫そうに見えない」とちょっとムスっとされてしまった。
「13号先生の話聞いたあたりから元気無さそうだったが何かあったのか...?」
轟くんは私のことをよく見てくれている。
下手に誤魔化してももっとムッとされてしまいそうなので観念するしかなかった。
「13号先生が『一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を持っていることを忘れるな』って言ってたのを聞いて........昔のこと思い出しちゃって自分の力が怖くなっちゃったの。」
「怖くなった...?」
「昔、風の個性が暴走しちゃったせいで親友に大怪我を負わせてしまったことがあって......13号先生の言う通り一歩間違ってたら殺してたかもしれない。
私の力は危険な、“いきすぎた個性”だからまたあの時みたいに人を傷つけてしまうんじゃないかと思うとすごく...怖くて............」
改めて言葉にしたことで本当に現実になってしまう気しかしなくなって身体中の血が凍るような悪寒に襲われた。
両腕で自身の身体を抱きしめるようにしてその寒さに耐えていると轟くんはそっと左手で私に触れた。
「どうして風の個性が暴走したんだ?」
「それは...敵 に親友が殺されそうになってたのを助けたくて....」
そう言うと轟くんは少し微笑んでくれた。
その優しげな表情と轟くんの左手の暖かさに少しだけ安心することが出来た。
「...お前、13号先生の話ちゃんと聞いてなかっただろ。」
「へ?」
「13号先生は『俺たちの力は人を傷つける為にあるんじゃない。助ける為にあるんだ』って言ってたぞ。
使い方によっては危険な個性になり得るのはお前だけじゃねぇ。俺や他のやつらだって同じだ。
お前はその力を、人を助ける為に使いたいと思ったからヒーローになりたいと思ったんじゃねぇのか?」
そうだ。そうだった。
『あの事件』以降、自分の風の個性がとても怖くて一生使わないつもりでいた。
でも爆豪くんに助けてもらって、その時『強い個性はヒーロー向き』だって教えてもらった。
治癒の力だけじゃ『出来損ない』の私でも、妹やおばあちゃんには無いこの風の力を使えば私も爆豪くんのような敵 を倒して多くの人を助けられるヒーローになれるかもって思ったんだ。
「怖いからって使わなかったらいつまで経っても使えるようにならねぇ。
上手くコントロール出来ないから今、必死に特訓してるんだろう?」
その通りだ。
相澤先生に協力してもらっていっぱい特訓した。
最初はフラッシュバックで何度も吐いて辛かったけど、危なくなったら個性を消すことが出来る相澤先生と一緒だったからなんとか風が出せるようになった。
まだまだコントロールはヘタクソだけど近接格闘術と合わせることでとりあえず戦えるくらいには成長出来たんだ。
「風の力を暴走させちまった時のお前と今のお前は違う。もうお前は風が暴走する前に制御出来るだろ?そんなに怖がらなくても大丈夫だ。お前の力は人を助ける為にある。」
そう言って轟くんは私の頭をそっと撫でてくれた。
その手の優しさに涙腺が緩みそうになるのを必死で堪える。
轟くんが「大丈夫だ」って言うとなんだか本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
「ふふっ....ありがとう轟くん。轟くんも私のヒーローだ」
「...?“も”ってどういう...」
轟くんが何か言いかけた時、轟くんのすぐ後に突然敵 が現れた。
「轟くん!後ろ!!」
こいつ、さっき私の足を引っ張ったやつだ。
下から現れたってことは砂の中で轟くんの氷結を免れて身を隠してたのか...!
轟くんが応戦しようとするも、敵 は左側に現れたので轟くんは一瞬攻撃を躊躇した。
そういえばいつだったか「戦闘で左は使わない」って言ってたっけ。
「ガキだと思って手加減してたらつけ上がりやがって...!ここで死ねぇえええ!!!!」
轟くんは身を反転させながら右側で氷を出そうとしているけれど敵 の攻撃の方が早い。
でも私の方がもっと早い...!!
敵 の方に一歩踏み込み、手のひらに風を集中させ突きと同時に放つ。
襲ってきた敵 は風圧を纏った私の突きで勢いよく後方に吹っ飛んだ。
「轟くん!凍らせて!」
地中に逃げられる前にすかさず轟くんに凍らせてもらう。
「ふぅ...助かった、甦世風。ちゃんと風使えたな。」
「えへへ、轟くんのお陰だよ」
ようやっと自分もまともに戦えたことが嬉しくて思わず満面の笑みでお礼を言うと、轟くんもつられた様に表情を少し緩めてくれた。
◆轟視点
13号先生の話を聞いてからずっと暗い雰囲気だった甦世風がようやく迷いが晴れたみたいに笑顔になった。
...と言っても甦世風はヘルメットをしているので表情はよく見えない。でも花が咲いたようなオーラが見える気がするので喜んでいることは間違いなさそうだ。
甦世風と合流した時、敵 にやられていたのはかなりヒヤッとしたがもう大丈夫そうで安心した。
敵 といえば...
「そういえばここへ来る途中敵 からオールマイト殺しを実行する役は広場に居るって聞いた。
ここに居る連中は大したことねぇやつばかりだが広場には何人かヤバそうな奴が居そうだな。」
「広場って...相澤先生が一人で守ってるところだよね?!」
「あぁ。だから早く助けに行かねぇとやべぇかもしれねぇ。」
そう伝えると甦世風は「こんなところでうだうだしてる場合じゃなかった...!」とショックを受けていた。
しかし甦世風はすぐに気持ちを切り替えたらしく、いつも下がり気味な眉を珍しく上げ、キリッと頼もしい表情に変わると「ちょっと上空から広場の様子見てみる!」と言って風圧を利用して飛び上がった。
上空で静止する技術は無いみたいで、『飛ぶ』というより『ジャンプ』したみたいに、浮き上がった身体はすぐに重力に従って落下してくる。
地面までまだ数メートルある状態で甦世風は「なんか脳みそ剥き出しの敵 に相澤先生がやられててヤバそう...!私急いで助けに行くから轟くんも後から来て!!」と叫んだかと思うと俺が制止する暇もなく、まさに風の如くものすごいスピードで広場の方へと駆けて行ってしまった。
さっきまで雑魚敵 に捕まってたくせに元気を取り戻した途端コレかよ。
甦世風が元気になったのは良いが1人で勝手に突っ走られるとは思わなかった。あいつ意外と人の話聞かねぇタイプだったのか。
とにかく、甦世風1人で広場に居る敵 を相手に出来るとは思えない。俺も急いで広場に向かわなければ。
舌打ちを一つ零し、俺も広場へと駆け出した。
「と、轟くん....!」
冷気と共に現れた轟くんはすごく怒っているようで普段とは別人のように目が据わっていた。
流れて来た冷気は一瞬で私を取り囲んでいた
「甦世風、大丈夫か?」
現れた時の威圧感は何処へやら。心配そうに私に駆け寄ってきてくれた轟くんは氷を鋭く尖らせ私に巻きついたロープのようなものを切ってくれた。
手足が自由になったことでようやく恐怖からは解放されたけれど、今度は何も出来ずに助けられた不甲斐なさでどうしようもなく恥ずかしくなった。
皆を助けられるヒーローになりたかったのに、自分が助けられてどうするんだ。
これじゃ完全に足手まといじゃないか。
私、何のために此処に居るんだろう........。
「甦世風!!」
またもマイナス思考に頭が支配されて無意識に俯いていたら突然両頬を掴まれグイッと上を向かされた。
ヘルメット越しとはいえ、いきなり視界いっぱいに轟くんの顔が広がってギョッとする。
「どうしたんだ?どこか痛いのか??」
「あ.........いや、どこも痛くないよ。大丈夫。」
安心させるように無理矢理ヘラっと笑ってみせたら「全然大丈夫そうに見えない」とちょっとムスっとされてしまった。
「13号先生の話聞いたあたりから元気無さそうだったが何かあったのか...?」
轟くんは私のことをよく見てくれている。
下手に誤魔化してももっとムッとされてしまいそうなので観念するしかなかった。
「13号先生が『一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を持っていることを忘れるな』って言ってたのを聞いて........昔のこと思い出しちゃって自分の力が怖くなっちゃったの。」
「怖くなった...?」
「昔、風の個性が暴走しちゃったせいで親友に大怪我を負わせてしまったことがあって......13号先生の言う通り一歩間違ってたら殺してたかもしれない。
私の力は危険な、“いきすぎた個性”だからまたあの時みたいに人を傷つけてしまうんじゃないかと思うとすごく...怖くて............」
改めて言葉にしたことで本当に現実になってしまう気しかしなくなって身体中の血が凍るような悪寒に襲われた。
両腕で自身の身体を抱きしめるようにしてその寒さに耐えていると轟くんはそっと左手で私に触れた。
「どうして風の個性が暴走したんだ?」
「それは...
そう言うと轟くんは少し微笑んでくれた。
その優しげな表情と轟くんの左手の暖かさに少しだけ安心することが出来た。
「...お前、13号先生の話ちゃんと聞いてなかっただろ。」
「へ?」
「13号先生は『俺たちの力は人を傷つける為にあるんじゃない。助ける為にあるんだ』って言ってたぞ。
使い方によっては危険な個性になり得るのはお前だけじゃねぇ。俺や他のやつらだって同じだ。
お前はその力を、人を助ける為に使いたいと思ったからヒーローになりたいと思ったんじゃねぇのか?」
そうだ。そうだった。
『あの事件』以降、自分の風の個性がとても怖くて一生使わないつもりでいた。
でも爆豪くんに助けてもらって、その時『強い個性はヒーロー向き』だって教えてもらった。
治癒の力だけじゃ『出来損ない』の私でも、妹やおばあちゃんには無いこの風の力を使えば私も爆豪くんのような
「怖いからって使わなかったらいつまで経っても使えるようにならねぇ。
上手くコントロール出来ないから今、必死に特訓してるんだろう?」
その通りだ。
相澤先生に協力してもらっていっぱい特訓した。
最初はフラッシュバックで何度も吐いて辛かったけど、危なくなったら個性を消すことが出来る相澤先生と一緒だったからなんとか風が出せるようになった。
まだまだコントロールはヘタクソだけど近接格闘術と合わせることでとりあえず戦えるくらいには成長出来たんだ。
「風の力を暴走させちまった時のお前と今のお前は違う。もうお前は風が暴走する前に制御出来るだろ?そんなに怖がらなくても大丈夫だ。お前の力は人を助ける為にある。」
そう言って轟くんは私の頭をそっと撫でてくれた。
その手の優しさに涙腺が緩みそうになるのを必死で堪える。
轟くんが「大丈夫だ」って言うとなんだか本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
「ふふっ....ありがとう轟くん。轟くんも私のヒーローだ」
「...?“も”ってどういう...」
轟くんが何か言いかけた時、轟くんのすぐ後に突然
「轟くん!後ろ!!」
こいつ、さっき私の足を引っ張ったやつだ。
下から現れたってことは砂の中で轟くんの氷結を免れて身を隠してたのか...!
轟くんが応戦しようとするも、
そういえばいつだったか「戦闘で左は使わない」って言ってたっけ。
「ガキだと思って手加減してたらつけ上がりやがって...!ここで死ねぇえええ!!!!」
轟くんは身を反転させながら右側で氷を出そうとしているけれど
でも私の方がもっと早い...!!
襲ってきた
「轟くん!凍らせて!」
地中に逃げられる前にすかさず轟くんに凍らせてもらう。
「ふぅ...助かった、甦世風。ちゃんと風使えたな。」
「えへへ、轟くんのお陰だよ」
ようやっと自分もまともに戦えたことが嬉しくて思わず満面の笑みでお礼を言うと、轟くんもつられた様に表情を少し緩めてくれた。
◆轟視点
13号先生の話を聞いてからずっと暗い雰囲気だった甦世風がようやく迷いが晴れたみたいに笑顔になった。
...と言っても甦世風はヘルメットをしているので表情はよく見えない。でも花が咲いたようなオーラが見える気がするので喜んでいることは間違いなさそうだ。
甦世風と合流した時、
「そういえばここへ来る途中
ここに居る連中は大したことねぇやつばかりだが広場には何人かヤバそうな奴が居そうだな。」
「広場って...相澤先生が一人で守ってるところだよね?!」
「あぁ。だから早く助けに行かねぇとやべぇかもしれねぇ。」
そう伝えると甦世風は「こんなところでうだうだしてる場合じゃなかった...!」とショックを受けていた。
しかし甦世風はすぐに気持ちを切り替えたらしく、いつも下がり気味な眉を珍しく上げ、キリッと頼もしい表情に変わると「ちょっと上空から広場の様子見てみる!」と言って風圧を利用して飛び上がった。
上空で静止する技術は無いみたいで、『飛ぶ』というより『ジャンプ』したみたいに、浮き上がった身体はすぐに重力に従って落下してくる。
地面までまだ数メートルある状態で甦世風は「なんか脳みそ剥き出しの
さっきまで雑魚
甦世風が元気になったのは良いが1人で勝手に突っ走られるとは思わなかった。あいつ意外と人の話聞かねぇタイプだったのか。
とにかく、甦世風1人で広場に居る
舌打ちを一つ零し、俺も広場へと駆け出した。