【長編】メランコリック・エンジェル
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ついに私のヒーロースーツが届いた。
ノースリーブのYシャツに短めのネクタイ、動きやすいよう短パンにタイツ、ショートブーツ。
腰には包帯などの応急処置グッズの他に酸っぱいグミやエナジーバーなどが入ったポーチを装着し、白衣をマントのようにはためかせる。
イメージはそう、女医さん!
クラスメイトの峰田くんが「露出が少ないのに肩周りだけ出てるのが逆にエロい」と言っているのが聞こえ、ちょっと恥ずかしくなったけど可愛いし動きやすいしで大満足の仕上がりである。
あとはおばあちゃんと同じようなヘルメットをかぶる予定だけどこれからバスに乗って移動なので今は被らず手に持っていた。
今日はレスキュー訓練があるらしい。
今まで救護活動を手伝っていたのは安全な病院の中でだけだったけど、ここでしっかりと訓練を受ければ今後病院に運ばれてくる前の段階の救護を手伝えるようになって、もっと多くの人を助けられるかもしれない。
つまり、私の目標に一歩近づくということ。
自分のやりたいことに直接繋がる授業はテンションが上がる...!
でも
バスの心地良い揺れの前ではそんなワクワクさんよりも睡魔が勝ってしまった。
「甦世風、眠そうだけど大丈夫か...?」
こっくりこっくりと船をこいでいるとお隣に座っている轟くんが心配そうに声をかけてくれた。
「んー...だいぶ眠たい...バスとか電車ってなんでこんな眠くなるんだろう...」
最近校内でも色んな人から視線を感じるようになった為か、ちょっとだけ疲れているのかもしれない。
「演習場に着くまで少し寝たらどうだ?」
「ん。そうしよっかな...」
「俺の肩貸すか?」
「ん。ありがとぉ〜」
眠すぎて何も考えず、轟くんのお言葉に甘えてポスリと轟くんの肩に頭を預ける。
自分から提案しておきながら轟くんは一瞬驚いたみたいだったけど、すぐにポンポンと私の頭を軽く撫で自身も寝る体勢になった。
先日のお昼休みマスコミ侵入騒動以来、轟くんは私の頭を撫でるのがマイブームになっているみたいだ。
バスの揺れと轟くんの肩から伝わる心地の良い体温に数秒も立たず微睡みの中に落ちていた。
***
治烏と轟が仲良く眠りについたのをクラスメイト達はバッチリ目撃していた。
「これで付き合ってないって言うんだから意味がわからないよねぇ...」
2人を起こさないよう、いつもより気持ち小声で芦戸が呟く。
「もういっそ恋人繋ぎでもさせてみる?」
「さすがに起こしてしまいますわ。そっとしておきましょう」
2人の前の席に座る耳郎がからかい気味に言うと少し離れた後ろの席に座っている八百万がたしなめた。
「せめて写真撮りたい!美男美女カップルなんて目の保養だよ~」
葉隠が何処からともなく携帯を取り出し、耳郎に「撮って〜」と渡す。
そのまま『眠りの憂いを帯びた天使 撮影会』が開催された。
女子たちが色めき立っている中、爆豪は青筋を立てていた。
「わかるぜ爆豪...自分の真後ろでリア充たちがイチャイチャしてたらそりゃ頭にくるよな...」
上鳴も便乗して治烏の写真を撮りながら爆豪に同情すると「うるせぇ...」と敵 顔負けのデスボイスで返された。
そこで上鳴はふとあることを思い出す。
「そういえば入試の時、お前天使ちゃんのこと爆破して大怪我させたって噂、本当?」
初めて聞く噂に一同は「えっ!?」と爆豪と上鳴に注目した。
「いや、いくらかっちゃんでも流石にそんなことは...」
「えーでも俺、入試の帰り道で他の受験生達が話してたの聞いたぜー?
爆破の個性なんて爆豪くらいしかいねぇと思うけど」
すかさずフォローを入れようとした緑谷を制して上鳴が続けた。
クラスメイト達が爆豪の返答を無言でジッと待っていると爆豪は少しバツが悪そうに「...もう解決済みだからほっとけ」と吐き捨て、逃げるように窓の外へ視線を向けた。
その言葉にいち早く緑谷が反応する。
「解決済みって...かっちゃんまさか謝ったの?!?!」
「あのかっちゃんが...」と、ぶつぶつ失礼なことを言う緑谷に爆豪は「るせぇ!誰が謝るか!!」と目を釣り上げながら怒鳴ったので一同は思わず「いや、そこは謝れよ...」と声を揃えてつっこんだ。
「まぁ当人が解決済みって言ってるならあんま詮索すんのはやめてそっとしておこうぜ皆!」
切島がまとめたのに対し上鳴は「でも気になるじゃーん」と食い下がったが、爆豪はそれ以上何も語る気が無いらしく無言になってしまったので上鳴も諦め、バスの中は他の話題で再び喧騒を取り戻した。
***
ガタンッとバスが少し大きめに揺れた衝撃で私は目を覚ました。
まだ若干頭が覚醒していないのかボーッとするのでポーチから酸っぱいグミを一つ取り出して口に入れる。
お隣の轟くんはまだ眠っているみたいだ。演習場に着く頃に起こしてあげよう。
ボーッとしながらモキュモキュとグミを噛んでいると前の方の席の会話が聞こえてきた。
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」
何の話をしているんだろう...派手で強い...個性、かな?
轟くんも爆豪くんもとっても強くてかっこいい自慢のお友達なので誰かに褒められていると私まで嬉しくなってしまう。
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそう」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
むぅ...蛙吹さんと上鳴くんはまだ爆豪くんの良さがわかっていないみたいだ。
「(爆豪くんだってそのうちきっとエンデヴァーさんみたいにファンサなんてしなくても実力でトップヒーローの座を勝ち取るんだからね!見とけよ〜!)」
実際口を出すことは出来なかったけど心の中でひっそりと謎の対抗心を燃やす。
すると相澤先生が「もう着くぞいい加減にしとけよ...」と声をかけたので各々バスを降りる準備を始めた。
もうすぐ着くなら轟くんを起こしてあげなきゃ。
でもその前に...
「爆豪くん、爆豪くん」と前の席にいる爆豪くんにコッソリ話しかける。
「爆豪くんは絶対人気のトップヒーローになれるよ!なんたって既にここにファン第1号が居るんだからねっ」
ドヤ顔で小さくガッツポーズしながらそう言うと爆豪くんは「ったりめーだろアホ」とだけ呟いてそっぽを向いてしまった。
当たり前かぁ。そうだよね、私が言うまでもなかったか。
相変わらずな爆豪くんの態度に何となく頬が緩むのを感じながら、私は轟くんのことを起こすべく、轟くんの肩をそっと揺すった。
この時、爆豪くんの隣で今のやりとりを聞いていた耳郎さんがオバケでも見たかのようにギョッとした顔をしていたことを私は知らなかった。
ノースリーブのYシャツに短めのネクタイ、動きやすいよう短パンにタイツ、ショートブーツ。
腰には包帯などの応急処置グッズの他に酸っぱいグミやエナジーバーなどが入ったポーチを装着し、白衣をマントのようにはためかせる。
イメージはそう、女医さん!
クラスメイトの峰田くんが「露出が少ないのに肩周りだけ出てるのが逆にエロい」と言っているのが聞こえ、ちょっと恥ずかしくなったけど可愛いし動きやすいしで大満足の仕上がりである。
あとはおばあちゃんと同じようなヘルメットをかぶる予定だけどこれからバスに乗って移動なので今は被らず手に持っていた。
今日はレスキュー訓練があるらしい。
今まで救護活動を手伝っていたのは安全な病院の中でだけだったけど、ここでしっかりと訓練を受ければ今後病院に運ばれてくる前の段階の救護を手伝えるようになって、もっと多くの人を助けられるかもしれない。
つまり、私の目標に一歩近づくということ。
自分のやりたいことに直接繋がる授業はテンションが上がる...!
でも
バスの心地良い揺れの前ではそんなワクワクさんよりも睡魔が勝ってしまった。
「甦世風、眠そうだけど大丈夫か...?」
こっくりこっくりと船をこいでいるとお隣に座っている轟くんが心配そうに声をかけてくれた。
「んー...だいぶ眠たい...バスとか電車ってなんでこんな眠くなるんだろう...」
最近校内でも色んな人から視線を感じるようになった為か、ちょっとだけ疲れているのかもしれない。
「演習場に着くまで少し寝たらどうだ?」
「ん。そうしよっかな...」
「俺の肩貸すか?」
「ん。ありがとぉ〜」
眠すぎて何も考えず、轟くんのお言葉に甘えてポスリと轟くんの肩に頭を預ける。
自分から提案しておきながら轟くんは一瞬驚いたみたいだったけど、すぐにポンポンと私の頭を軽く撫で自身も寝る体勢になった。
先日のお昼休みマスコミ侵入騒動以来、轟くんは私の頭を撫でるのがマイブームになっているみたいだ。
バスの揺れと轟くんの肩から伝わる心地の良い体温に数秒も立たず微睡みの中に落ちていた。
***
治烏と轟が仲良く眠りについたのをクラスメイト達はバッチリ目撃していた。
「これで付き合ってないって言うんだから意味がわからないよねぇ...」
2人を起こさないよう、いつもより気持ち小声で芦戸が呟く。
「もういっそ恋人繋ぎでもさせてみる?」
「さすがに起こしてしまいますわ。そっとしておきましょう」
2人の前の席に座る耳郎がからかい気味に言うと少し離れた後ろの席に座っている八百万がたしなめた。
「せめて写真撮りたい!美男美女カップルなんて目の保養だよ~」
葉隠が何処からともなく携帯を取り出し、耳郎に「撮って〜」と渡す。
そのまま『眠りの
女子たちが色めき立っている中、爆豪は青筋を立てていた。
「わかるぜ爆豪...自分の真後ろでリア充たちがイチャイチャしてたらそりゃ頭にくるよな...」
上鳴も便乗して治烏の写真を撮りながら爆豪に同情すると「うるせぇ...」と
そこで上鳴はふとあることを思い出す。
「そういえば入試の時、お前天使ちゃんのこと爆破して大怪我させたって噂、本当?」
初めて聞く噂に一同は「えっ!?」と爆豪と上鳴に注目した。
「いや、いくらかっちゃんでも流石にそんなことは...」
「えーでも俺、入試の帰り道で他の受験生達が話してたの聞いたぜー?
爆破の個性なんて爆豪くらいしかいねぇと思うけど」
すかさずフォローを入れようとした緑谷を制して上鳴が続けた。
クラスメイト達が爆豪の返答を無言でジッと待っていると爆豪は少しバツが悪そうに「...もう解決済みだからほっとけ」と吐き捨て、逃げるように窓の外へ視線を向けた。
その言葉にいち早く緑谷が反応する。
「解決済みって...かっちゃんまさか謝ったの?!?!」
「あのかっちゃんが...」と、ぶつぶつ失礼なことを言う緑谷に爆豪は「るせぇ!誰が謝るか!!」と目を釣り上げながら怒鳴ったので一同は思わず「いや、そこは謝れよ...」と声を揃えてつっこんだ。
「まぁ当人が解決済みって言ってるならあんま詮索すんのはやめてそっとしておこうぜ皆!」
切島がまとめたのに対し上鳴は「でも気になるじゃーん」と食い下がったが、爆豪はそれ以上何も語る気が無いらしく無言になってしまったので上鳴も諦め、バスの中は他の話題で再び喧騒を取り戻した。
***
ガタンッとバスが少し大きめに揺れた衝撃で私は目を覚ました。
まだ若干頭が覚醒していないのかボーッとするのでポーチから酸っぱいグミを一つ取り出して口に入れる。
お隣の轟くんはまだ眠っているみたいだ。演習場に着く頃に起こしてあげよう。
ボーッとしながらモキュモキュとグミを噛んでいると前の方の席の会話が聞こえてきた。
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」
何の話をしているんだろう...派手で強い...個性、かな?
轟くんも爆豪くんもとっても強くてかっこいい自慢のお友達なので誰かに褒められていると私まで嬉しくなってしまう。
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそう」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
むぅ...蛙吹さんと上鳴くんはまだ爆豪くんの良さがわかっていないみたいだ。
「(爆豪くんだってそのうちきっとエンデヴァーさんみたいにファンサなんてしなくても実力でトップヒーローの座を勝ち取るんだからね!見とけよ〜!)」
実際口を出すことは出来なかったけど心の中でひっそりと謎の対抗心を燃やす。
すると相澤先生が「もう着くぞいい加減にしとけよ...」と声をかけたので各々バスを降りる準備を始めた。
もうすぐ着くなら轟くんを起こしてあげなきゃ。
でもその前に...
「爆豪くん、爆豪くん」と前の席にいる爆豪くんにコッソリ話しかける。
「爆豪くんは絶対人気のトップヒーローになれるよ!なんたって既にここにファン第1号が居るんだからねっ」
ドヤ顔で小さくガッツポーズしながらそう言うと爆豪くんは「ったりめーだろアホ」とだけ呟いてそっぽを向いてしまった。
当たり前かぁ。そうだよね、私が言うまでもなかったか。
相変わらずな爆豪くんの態度に何となく頬が緩むのを感じながら、私は轟くんのことを起こすべく、轟くんの肩をそっと揺すった。
この時、爆豪くんの隣で今のやりとりを聞いていた耳郎さんがオバケでも見たかのようにギョッとした顔をしていたことを私は知らなかった。