【長編】メランコリック・エンジェル
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雄英高校に入学してから2日目。
今日から普通に授業が行われる。
午前中は英語などの通常授業、お昼は轟くんと共に食堂でランチラッシュの美味しいご飯を食べて午後はいよいよ実践訓練の時間!
...みんな自分に合ったヒーローコスチュームを着ている中、私は1人体操着だった。
クラスメイト達がおニューのコスチュームを褒め合っているのを少し羨ましい気持ちで眺めていると、私の沈んだ気分を察知してくれたのか隣に居た轟くんが話しかけてくれた。
「甦世風はコスチュームじゃないんだな」
「そうなの...。急遽編入が決まったからコスチューム間に合わなくて...今大急ぎで作ってもらってるから来週あたりには出来るみたい」
「そうか。楽しみだな」
「うん...!あ、轟くんのコスチュームかっこいいよね!でも左側のその氷は寒くないの?」
轟くんのコスチュームは左側が丸々氷で覆われていた。なんて言うか迫力がすごい。...かっこいいけど動き辛くないのかな。
「別に大丈夫だ」
「私寒がりだからそんな氷に覆われてたら凍死しちゃうよ〜」
「凍死する前に俺が溶かしてやるから安心しろ」
「そっか、轟くんは熱も操れるんだもんね!」
「冷やすことも温めることも出来るなんてエアコンみたいで便利だね〜」と和やかに会話をしているとヒーロー基礎学を担当することになったオールマイト先生がカンペを見ながら初々しく演習の説明を始めた。
***
今回の演習は屋内での対人戦闘訓練らしい。
くじ引きで2人組を作り敵 役とヒーロー役に分かれて2対2で戦闘を行う。
人数の関係上、1組だけ3人組になってしまうが、訓練初日で各々の実力が未知数ということもあり今回は特にハンデ等は無しでやるみたいだ。
『敵 』がアジトに『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている。という状況設定。
ヒーロー役は制限時間内に『敵 』を捕まえるか『核兵器』にタッチして回収すること
敵 役は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえることが勝利条件らしい。
私のグループは轟くんと障子くんとの3人組。
クラス唯一のお友達である轟くんと一緒のグループになれてテンションが上がってしまう。
「なんという運命力...!」と内心ウッキウキの私とは違い、轟くんと障子くんは二人ともクールだった。
相手役は葉隠さん&尾白くんのグループ。
私達のグループがヒーロー役、葉隠さん達のグループが敵 役となった。
第1回戦は爆豪くん&飯田くんのチームvs緑谷くん&麗日さんのチームで、本当にこれは学校の授業なのか?!とビックリするほど壮絶なバトルが繰り広げられた。
勝ったのは緑谷くん達のチームだけど、緑谷くんは全身ボロボロで保健室に運ばれて行ってしまった。
連日の大怪我でおばあちゃんの治癒があまり使えないだろうからちょっと心配だ。
でも次は私達のグループの番なので一先ず授業の方を優先しないと。
「(さっきの爆豪くん、オールマイト先生にはやりすぎだって注意されてたけど訓練にも一切手を抜かない姿勢は相変わらずカッコ良かったなぁ。私も頑張るぞっ)」
1人でコッソリと気合いを入れ演習場へ向かった。
ーーーーーー
「4階北側の広場に1人。もう1人は同階のどこか...素足だな...。透明な奴が伏兵として捕らえる係か」
腕に耳や口の形をした触手を生やした障子くんがそう教えてくれる。
こんな離れた場所から相手の居場所がわかっちゃうなんて索敵に向いてる個性って便利ですごい!
とりあえず4階までは安全そうだけど、問題は姿が視認できない葉隠さんをどう攻略するかだなぁ...
などと考えていると、轟くんが前に出た。
「外出てろ。危ねぇから。
向こうは防衛戦のつもりだろうが...俺には関係ない」
そう言うやいなや2回戦の演習会場であるビルが一瞬で凍りついた。
「甦世風、轟の言う通り一度外に出よう」
障子くんにそう言われ、私は呆然としたまま障子くんに手を引かれてビルの外に出た。
そして数分もしないうちに「ヒーローチームWIN!!」というアナウンスが流れた。
...わ、私.....何もせず終わった!!!
瞬殺。まさにその一言に尽きる。
障子くんは最初の索敵で活躍していたけど私に至ってはマジで何もしていない。
なんならチームメイトと言葉を交わすことすら出来ずに終わった。
私の存在価値よ.......。
轟くんが思ってた以上に強すぎてお友達としては鼻が高いけれど、やっぱり自分との活躍の差に凹んだ。
そんな私を見て轟くんは「なんか涙目じゃねぇか...?あ、悪ぃ、寒かったよな」と言って左手で私の手を握り温めてくれた。
違う、そうじゃない!!.....けれど轟くんの優しさに何も言えなくなってしまった。ぐすん。
モニタールームに戻り、講評に入る前
轟くんと手を繋いだ状態で帰ってきた私を見てオールマイト先生はなんだかちょっと嬉しそうにニヤニヤしていた。
このやり場の無い気持ちを込めてジトッと恨めしそうな目を向けるとオールマイト先生は慌てて咳払いをし、「(くじ引きの妙とは言え、戦力が偏りすぎてしまっていたな...ドンマイだ、甦世風少女...!)」とでも言いたげに苦笑いでサムズアップされた。
何も出来なかった私は次のチームに混ざるか?と提案されたけれど、完全に戦意を喪失してしまったのと、一回戦目で大怪我を負ってしまった緑谷くんの容態が気になっていたので今回は演習を抜けて保健室で治癒を手伝うこととなった。
私の治癒力は大したことがないけれど、体力を回復させることが出来るのでおばあちゃんの治癒の補助を行うくらいは出来る。
戦闘訓練はいつだって出来るけど、今痛い想いをしている緑谷くんを助けるには今しかない。それに治癒の力を使うことだって訓練といえば訓練だからね。
------
保健室に着くと緑谷くんは点滴を打たれながら眠っていた。
おばあちゃんに事情を説明し、治癒を手伝う許可を貰う。
眠っている緑谷くんの手を取り、治癒の力を送るのに集中する為に目を閉じた。
◆緑谷視点
身体がポカポカと暖かい。
春の優しい日差しを感じながら縁側で眠っているような感じ。
...縁側で眠った経験は無いけれど。
このままずっと眠っていたい欲求に駆られていると右手に柔らかい感触が。誰かが手を握ってくれている...?
ゆっくりと瞼を上げると天使のように美しい少女ー甦世風さんがすぐ近くで僕の手を握っていた。
.........ん?
甦世風さんが?!
僕の手を?!?!
握っていた?!?!?!
「あ、緑谷くん。おはようございます」
無表情を少しだけ微笑みに変えて呑気に挨拶をしてきた甦世風さん。か、可愛すぎる...!
さっきまでポカポカと暖かかった身体が一気にカァアアと熱くなるのを感じた。
っていうかなんで甦世風さんが僕の手を?!?!
あまりの事態にビックリして起き上がろうとしたところでようやく全身の痛覚が仕事を始めた。
「イッ...!」
「み、緑谷くんまだ動いちゃダメですよ...!」
甦世風さんは片手で僕の手を掴んだまま、もう片方の手を慌てて僕の背中に回した。
(ち、近い...!!)
ただでさえ近かった距離が耳元に吐息を感じるくらい更に近づいてしまい内心パニックに陥る。
このままでは僕の心臓がもたない。な、何か別のことを考えて落ち着かないと...!!
そういえば昨日は甦世風さんに嫌われてしまったと落ち込んでいたけど、
リカバリーガールの言う通り嫌われてはいなかったみたいで安心した。
彼女は、『憂いを帯びた天使 』はヒーローではないけどヒーローと同じくらい僕の憧れの存在だった。
僕だけじゃない。
彼女は大人から子供までどの世代にも絶大な人気を誇っている。
もちろん顔の美しさも人気の一因ではあるけれどそれだけじゃない。
幼いながら圧倒的な治癒力で人々を癒すその姿は本物の天使か女神様のように神々しかった。思わず信仰してしまいたくなるくらいに。
しかしそんなにすごい力を持っているにも関わらず本人はあまり『憂いを帯びた天使 』として接されるのが好きではないらしい。
リカバリーガールはたしか「『普通の女の子』として接してあげな」と言っていた。
『普通の女の子』かぁ...。
普通の.....
女の子...............
そう意識してみると甦世風さんの手の温かさや背中に伝わる柔らかい感触、仄かに香る爽やかなシャンプーの香りなどを今まで以上に鮮明に感じてしまった。
急速に体温が上昇するのが自分でもよく分かった。
これは、ヤバイ。
プシュ〜〜〜〜〜〜と完全に頭がショートした
「み、緑谷くん?!急にどうしたんですか?!?!
おばあちゃーーん!緑谷くんが大変だよぉ!!助けて〜〜〜!!!」
薄れゆく意識の中で、パニック状態の甦世風さんが慌ててリカバリーガールを呼ぶ声が聞こえた。
なるほど、確かに憂いを帯びていない彼女は今までテレビで見てきた神々しい感じではなく、
年相応に可愛い普通の女の子だった。
でもリカバリーガール...。
『有名人』の『ファン』としてならまだしも、
『同級生の女の子』と仲良くなるのは僕にはまだハードルが高すぎるみたいです........。
今日から普通に授業が行われる。
午前中は英語などの通常授業、お昼は轟くんと共に食堂でランチラッシュの美味しいご飯を食べて午後はいよいよ実践訓練の時間!
...みんな自分に合ったヒーローコスチュームを着ている中、私は1人体操着だった。
クラスメイト達がおニューのコスチュームを褒め合っているのを少し羨ましい気持ちで眺めていると、私の沈んだ気分を察知してくれたのか隣に居た轟くんが話しかけてくれた。
「甦世風はコスチュームじゃないんだな」
「そうなの...。急遽編入が決まったからコスチューム間に合わなくて...今大急ぎで作ってもらってるから来週あたりには出来るみたい」
「そうか。楽しみだな」
「うん...!あ、轟くんのコスチュームかっこいいよね!でも左側のその氷は寒くないの?」
轟くんのコスチュームは左側が丸々氷で覆われていた。なんて言うか迫力がすごい。...かっこいいけど動き辛くないのかな。
「別に大丈夫だ」
「私寒がりだからそんな氷に覆われてたら凍死しちゃうよ〜」
「凍死する前に俺が溶かしてやるから安心しろ」
「そっか、轟くんは熱も操れるんだもんね!」
「冷やすことも温めることも出来るなんてエアコンみたいで便利だね〜」と和やかに会話をしているとヒーロー基礎学を担当することになったオールマイト先生がカンペを見ながら初々しく演習の説明を始めた。
***
今回の演習は屋内での対人戦闘訓練らしい。
くじ引きで2人組を作り
人数の関係上、1組だけ3人組になってしまうが、訓練初日で各々の実力が未知数ということもあり今回は特にハンデ等は無しでやるみたいだ。
『
ヒーロー役は制限時間内に『
私のグループは轟くんと障子くんとの3人組。
クラス唯一のお友達である轟くんと一緒のグループになれてテンションが上がってしまう。
「なんという運命力...!」と内心ウッキウキの私とは違い、轟くんと障子くんは二人ともクールだった。
相手役は葉隠さん&尾白くんのグループ。
私達のグループがヒーロー役、葉隠さん達のグループが
第1回戦は爆豪くん&飯田くんのチームvs緑谷くん&麗日さんのチームで、本当にこれは学校の授業なのか?!とビックリするほど壮絶なバトルが繰り広げられた。
勝ったのは緑谷くん達のチームだけど、緑谷くんは全身ボロボロで保健室に運ばれて行ってしまった。
連日の大怪我でおばあちゃんの治癒があまり使えないだろうからちょっと心配だ。
でも次は私達のグループの番なので一先ず授業の方を優先しないと。
「(さっきの爆豪くん、オールマイト先生にはやりすぎだって注意されてたけど訓練にも一切手を抜かない姿勢は相変わらずカッコ良かったなぁ。私も頑張るぞっ)」
1人でコッソリと気合いを入れ演習場へ向かった。
ーーーーーー
「4階北側の広場に1人。もう1人は同階のどこか...素足だな...。透明な奴が伏兵として捕らえる係か」
腕に耳や口の形をした触手を生やした障子くんがそう教えてくれる。
こんな離れた場所から相手の居場所がわかっちゃうなんて索敵に向いてる個性って便利ですごい!
とりあえず4階までは安全そうだけど、問題は姿が視認できない葉隠さんをどう攻略するかだなぁ...
などと考えていると、轟くんが前に出た。
「外出てろ。危ねぇから。
向こうは防衛戦のつもりだろうが...俺には関係ない」
そう言うやいなや2回戦の演習会場であるビルが一瞬で凍りついた。
「甦世風、轟の言う通り一度外に出よう」
障子くんにそう言われ、私は呆然としたまま障子くんに手を引かれてビルの外に出た。
そして数分もしないうちに「ヒーローチームWIN!!」というアナウンスが流れた。
...わ、私.....何もせず終わった!!!
瞬殺。まさにその一言に尽きる。
障子くんは最初の索敵で活躍していたけど私に至ってはマジで何もしていない。
なんならチームメイトと言葉を交わすことすら出来ずに終わった。
私の存在価値よ.......。
轟くんが思ってた以上に強すぎてお友達としては鼻が高いけれど、やっぱり自分との活躍の差に凹んだ。
そんな私を見て轟くんは「なんか涙目じゃねぇか...?あ、悪ぃ、寒かったよな」と言って左手で私の手を握り温めてくれた。
違う、そうじゃない!!.....けれど轟くんの優しさに何も言えなくなってしまった。ぐすん。
モニタールームに戻り、講評に入る前
轟くんと手を繋いだ状態で帰ってきた私を見てオールマイト先生はなんだかちょっと嬉しそうにニヤニヤしていた。
このやり場の無い気持ちを込めてジトッと恨めしそうな目を向けるとオールマイト先生は慌てて咳払いをし、「(くじ引きの妙とは言え、戦力が偏りすぎてしまっていたな...ドンマイだ、甦世風少女...!)」とでも言いたげに苦笑いでサムズアップされた。
何も出来なかった私は次のチームに混ざるか?と提案されたけれど、完全に戦意を喪失してしまったのと、一回戦目で大怪我を負ってしまった緑谷くんの容態が気になっていたので今回は演習を抜けて保健室で治癒を手伝うこととなった。
私の治癒力は大したことがないけれど、体力を回復させることが出来るのでおばあちゃんの治癒の補助を行うくらいは出来る。
戦闘訓練はいつだって出来るけど、今痛い想いをしている緑谷くんを助けるには今しかない。それに治癒の力を使うことだって訓練といえば訓練だからね。
------
保健室に着くと緑谷くんは点滴を打たれながら眠っていた。
おばあちゃんに事情を説明し、治癒を手伝う許可を貰う。
眠っている緑谷くんの手を取り、治癒の力を送るのに集中する為に目を閉じた。
◆緑谷視点
身体がポカポカと暖かい。
春の優しい日差しを感じながら縁側で眠っているような感じ。
...縁側で眠った経験は無いけれど。
このままずっと眠っていたい欲求に駆られていると右手に柔らかい感触が。誰かが手を握ってくれている...?
ゆっくりと瞼を上げると天使のように美しい少女ー甦世風さんがすぐ近くで僕の手を握っていた。
.........ん?
甦世風さんが?!
僕の手を?!?!
握っていた?!?!?!
「あ、緑谷くん。おはようございます」
無表情を少しだけ微笑みに変えて呑気に挨拶をしてきた甦世風さん。か、可愛すぎる...!
さっきまでポカポカと暖かかった身体が一気にカァアアと熱くなるのを感じた。
っていうかなんで甦世風さんが僕の手を?!?!
あまりの事態にビックリして起き上がろうとしたところでようやく全身の痛覚が仕事を始めた。
「イッ...!」
「み、緑谷くんまだ動いちゃダメですよ...!」
甦世風さんは片手で僕の手を掴んだまま、もう片方の手を慌てて僕の背中に回した。
(ち、近い...!!)
ただでさえ近かった距離が耳元に吐息を感じるくらい更に近づいてしまい内心パニックに陥る。
このままでは僕の心臓がもたない。な、何か別のことを考えて落ち着かないと...!!
そういえば昨日は甦世風さんに嫌われてしまったと落ち込んでいたけど、
リカバリーガールの言う通り嫌われてはいなかったみたいで安心した。
彼女は、『
僕だけじゃない。
彼女は大人から子供までどの世代にも絶大な人気を誇っている。
もちろん顔の美しさも人気の一因ではあるけれどそれだけじゃない。
幼いながら圧倒的な治癒力で人々を癒すその姿は本物の天使か女神様のように神々しかった。思わず信仰してしまいたくなるくらいに。
しかしそんなにすごい力を持っているにも関わらず本人はあまり『
リカバリーガールはたしか「『普通の女の子』として接してあげな」と言っていた。
『普通の女の子』かぁ...。
普通の.....
女の子...............
そう意識してみると甦世風さんの手の温かさや背中に伝わる柔らかい感触、仄かに香る爽やかなシャンプーの香りなどを今まで以上に鮮明に感じてしまった。
急速に体温が上昇するのが自分でもよく分かった。
これは、ヤバイ。
プシュ〜〜〜〜〜〜と完全に頭がショートした
「み、緑谷くん?!急にどうしたんですか?!?!
おばあちゃーーん!緑谷くんが大変だよぉ!!助けて〜〜〜!!!」
薄れゆく意識の中で、パニック状態の甦世風さんが慌ててリカバリーガールを呼ぶ声が聞こえた。
なるほど、確かに憂いを帯びていない彼女は今までテレビで見てきた神々しい感じではなく、
年相応に可愛い普通の女の子だった。
でもリカバリーガール...。
『有名人』の『ファン』としてならまだしも、
『同級生の女の子』と仲良くなるのは僕にはまだハードルが高すぎるみたいです........。