【長編】メランコリック・エンジェル
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握力、立ち幅跳び、反復横跳び、ボール投げ...などなど。スポーツテストは順調に進み結果発表の時間となった。
最下位はボール投げくらいしか好成績が出せなかった緑谷くんだったけど、除籍というのはウソ。私たちの最大限を引き出す為の『合理的虚偽』だったらしい。
今回のテストで見事1位をとった八百万さんが「あんなのウソに決まってるじゃない...ちょっと考えればわかりますわ...」と呟いていたけど果たして本当に最初から嘘だったのだろうか。
相澤先生は『見込みなし』と判断したら本当に除籍してしまうと思う。
別に意地悪がしたいわけではない。
見込みが無いのならば下手な希望を持たせず、早急に他の道を歩ませようという相澤先生なりの優しさだ。...たぶん。
今回『除籍者無し』になったということは、ここに居る全員ヒーローを目指すに足る素質があると認められたということだろう。...きっと。
最終的に私はクラスで上から4番目という自分でもビックリの好成績を修めた。
風の個性が活かせる種目が多かったのと、得意な柔軟性を活かせる長座体前屈でもクラス1位を取れたのが大きい。
...でも握力と上体起こしはクラス最下位だった...。
特に握力は酷いもので、15kgという小学生ほどの記録しか出せなかった。
クラスメイトからの「マジかよ...」と言いたげな視線に耐えきれず穴掘って埋まりたい気分になった...。
これでも一応中学の頃よりは記録伸びてるんだよ!最近は自力でペットボトルの蓋も開けられるようになったし...!
余談だけど中学の頃はペットボトルを自力で開けられなかったので飲み物は専ら紙パックタイプのものを飲んでいた。
筋力強化、課題だなぁ...。
改めて自分の課題を再認識していたところ、遠くで小さめの男の子...峰田くん?が「非力で身体の柔らかい美少女とかエロすぎダロォオオ!!!」となにやら興奮気味に叫んで周りの人たちにドン引きされていた。
結果発表が終わり、教室に戻ってカリキュラム等の書類に目を通すよう指示を受けた。
そして相澤先生は緑谷くんを呼び止め、保健室に行くようにと保健室利用書を渡していた。
ボール投げの際、緑谷くんは自身の個性の反動で指に大怪我を負ってしまったのだ。
「それから甦世風、お前も保健室行ってこい。」
轟くんと一緒に更衣室へ移動しようとしていたところ、なぜか私まで呼び止められた。
おばあちゃんの治癒を手伝えということだろうか?
仕方がないので轟くんに一言断ってから緑谷くんの後を追った。
「緑谷くん。私も保健室付き添います。」
小走りで緑谷くんに追いつき、声をかける。
まだ大人数相手は怖いけど、相手が1人ならちゃんとお話出来るかもしれない。
ちょうどいい機会だし自然な感じにテストの話とかをして緑谷くんともお友達に....
「え...うわぁああメランkじゃなかった、甦世風さん?!?!」
私が声をかけると緑谷くんはものすごい勢いで顔を真っ赤にして硬直してしまった。
怪我だけじゃなくてもしかしたらお熱もあるのかな...?大変だ。
それにしても勢いが凄すぎてこっちまでビックリしてしまう。
轟くんのお陰で少し和らいでいた表情筋が一気に引き締まってしまった。
数秒の沈黙の後、正気を取り戻した緑谷くんはワタワタと興奮気味に語り出した。
「あの、ぼぼぼぼ僕、ずっと君の大ファンで...!クラスに君が居てすごくビックリしたんだ!!5年前からぱったり活躍を聞かなくなって療養中説とか行方不明説とか勉学専念説とか色々噂されていたけどまさかヒーローを目指してたなんて...!」
『憂いを帯びた天使 』のファン。
その一言で私は頭から冷水をかけられたような感覚をおぼえた。
話しかけるなオーラを発してしまっていたとはいえ、今みたいに熱烈に話しかけてくる人が居なかったので完全に油断していた。
中学の時と違ってヒーロー科の最高峰、雄英高校に入学出来たような人たちは『憂いを帯びた天使 』なんて大して興味ないんだろうなって安心していた。
ここなら私は私のままでいられるかもしれない。なんて思い違いをしていた。
だって私は...。
私は.......。
私は『憂いを帯びた天使 』ではない。
私にも治癒の力はある。
でもそれはおばあちゃん達 のように重傷の怪我を一瞬で治せるような強い力ではなく、相手の体力を少し回復させたり、応急処置程度に傷を塞ぐくらいの力しかない。
今まで必死に治癒の個性を伸ばそうと頑張ってきたけれど許容上限が増えたくらいで個性自体の強さはそれほど伸びてはくれなかった。
私にあるのは少し残念な治癒の能力と.....親友を傷つけてしまった強すぎる風の能力だけ。
『憂いを帯びた天使 』と呼ばれて皆から慕われ、必要とされているのは
5年前から行方不明の私の双子の妹。
私は人見知りが発動している時、表情筋が固まり伏し目がちに俯いてしまう癖がある。
その姿は『憂いを帯びた天使 』と呼ばれた妹にそっくりみたいで。
よく勘違いされてしまう。
でもそうなってしまってはもうダメだった。
人違いだとわかったら失望させてしまう。
なんだ偽者かと、なんで妹の方じゃないんだと、お前は必要ないと言われるのが...とても怖い。
皆が求めているのは出来損ないの私ではなく、奇跡の力を持った完璧な妹なのだから。
だから私は......
その期待を裏切らないように、本当の私を出さないように、妹のように振舞うしかなかった。
中学の時は勘違いされたまま結局3年間を過ごしてしまい友達も出来ずひたすら妹の仮面を被り続けた。
とても、息苦しかった。
....ここでも同じなのか。
「さっきのスポーツテストでもすごい成績だったし.......甦世風さん?」
私の雰囲気が暗く落ちたことを察したのか、早口で色々と捲し立てていた緑谷くんは心配そうに私の様子を伺ってきた。
「...なんでもありません。早く保健室へ行きましょう」
妹のように、世間的なイメージを壊さないように努めてクールでミステリアスな感じに振る舞う。
緑谷くんは少し気まずそうな顔になってしまったけど大人しく私の後をついてきてくれた。
初めて自分からお友達を作ることが出来て舞い上がっていたけれど、やっぱりここでもクラスの人たちは『私』ではなく『憂いを帯びた天使 』を求めているようだから不用意に接するのは控えた方が良さそうだ。
大丈夫。寂しくない。
今の私には轟くんという心強いお友達がいるし、まだ話せていないけれどクラスには私のヒーロー だって居るんだ。
それだけで十分。寧ろ恵まれている。そう心に言い聞かせた。
最下位はボール投げくらいしか好成績が出せなかった緑谷くんだったけど、除籍というのはウソ。私たちの最大限を引き出す為の『合理的虚偽』だったらしい。
今回のテストで見事1位をとった八百万さんが「あんなのウソに決まってるじゃない...ちょっと考えればわかりますわ...」と呟いていたけど果たして本当に最初から嘘だったのだろうか。
相澤先生は『見込みなし』と判断したら本当に除籍してしまうと思う。
別に意地悪がしたいわけではない。
見込みが無いのならば下手な希望を持たせず、早急に他の道を歩ませようという相澤先生なりの優しさだ。...たぶん。
今回『除籍者無し』になったということは、ここに居る全員ヒーローを目指すに足る素質があると認められたということだろう。...きっと。
最終的に私はクラスで上から4番目という自分でもビックリの好成績を修めた。
風の個性が活かせる種目が多かったのと、得意な柔軟性を活かせる長座体前屈でもクラス1位を取れたのが大きい。
...でも握力と上体起こしはクラス最下位だった...。
特に握力は酷いもので、15kgという小学生ほどの記録しか出せなかった。
クラスメイトからの「マジかよ...」と言いたげな視線に耐えきれず穴掘って埋まりたい気分になった...。
これでも一応中学の頃よりは記録伸びてるんだよ!最近は自力でペットボトルの蓋も開けられるようになったし...!
余談だけど中学の頃はペットボトルを自力で開けられなかったので飲み物は専ら紙パックタイプのものを飲んでいた。
筋力強化、課題だなぁ...。
改めて自分の課題を再認識していたところ、遠くで小さめの男の子...峰田くん?が「非力で身体の柔らかい美少女とかエロすぎダロォオオ!!!」となにやら興奮気味に叫んで周りの人たちにドン引きされていた。
結果発表が終わり、教室に戻ってカリキュラム等の書類に目を通すよう指示を受けた。
そして相澤先生は緑谷くんを呼び止め、保健室に行くようにと保健室利用書を渡していた。
ボール投げの際、緑谷くんは自身の個性の反動で指に大怪我を負ってしまったのだ。
「それから甦世風、お前も保健室行ってこい。」
轟くんと一緒に更衣室へ移動しようとしていたところ、なぜか私まで呼び止められた。
おばあちゃんの治癒を手伝えということだろうか?
仕方がないので轟くんに一言断ってから緑谷くんの後を追った。
「緑谷くん。私も保健室付き添います。」
小走りで緑谷くんに追いつき、声をかける。
まだ大人数相手は怖いけど、相手が1人ならちゃんとお話出来るかもしれない。
ちょうどいい機会だし自然な感じにテストの話とかをして緑谷くんともお友達に....
「え...うわぁああメランkじゃなかった、甦世風さん?!?!」
私が声をかけると緑谷くんはものすごい勢いで顔を真っ赤にして硬直してしまった。
怪我だけじゃなくてもしかしたらお熱もあるのかな...?大変だ。
それにしても勢いが凄すぎてこっちまでビックリしてしまう。
轟くんのお陰で少し和らいでいた表情筋が一気に引き締まってしまった。
数秒の沈黙の後、正気を取り戻した緑谷くんはワタワタと興奮気味に語り出した。
「あの、ぼぼぼぼ僕、ずっと君の大ファンで...!クラスに君が居てすごくビックリしたんだ!!5年前からぱったり活躍を聞かなくなって療養中説とか行方不明説とか勉学専念説とか色々噂されていたけどまさかヒーローを目指してたなんて...!」
『
その一言で私は頭から冷水をかけられたような感覚をおぼえた。
話しかけるなオーラを発してしまっていたとはいえ、今みたいに熱烈に話しかけてくる人が居なかったので完全に油断していた。
中学の時と違ってヒーロー科の最高峰、雄英高校に入学出来たような人たちは『
ここなら私は私のままでいられるかもしれない。なんて思い違いをしていた。
だって私は...。
私は.......。
私は『
私にも治癒の力はある。
でもそれはおばあちゃん
今まで必死に治癒の個性を伸ばそうと頑張ってきたけれど許容上限が増えたくらいで個性自体の強さはそれほど伸びてはくれなかった。
私にあるのは少し残念な治癒の能力と.....親友を傷つけてしまった強すぎる風の能力だけ。
『
5年前から行方不明の私の双子の妹。
私は人見知りが発動している時、表情筋が固まり伏し目がちに俯いてしまう癖がある。
その姿は『
よく勘違いされてしまう。
でもそうなってしまってはもうダメだった。
人違いだとわかったら失望させてしまう。
なんだ偽者かと、なんで妹の方じゃないんだと、お前は必要ないと言われるのが...とても怖い。
皆が求めているのは出来損ないの私ではなく、奇跡の力を持った完璧な妹なのだから。
だから私は......
その期待を裏切らないように、本当の私を出さないように、妹のように振舞うしかなかった。
中学の時は勘違いされたまま結局3年間を過ごしてしまい友達も出来ずひたすら妹の仮面を被り続けた。
とても、息苦しかった。
....ここでも同じなのか。
「さっきのスポーツテストでもすごい成績だったし.......甦世風さん?」
私の雰囲気が暗く落ちたことを察したのか、早口で色々と捲し立てていた緑谷くんは心配そうに私の様子を伺ってきた。
「...なんでもありません。早く保健室へ行きましょう」
妹のように、世間的なイメージを壊さないように努めてクールでミステリアスな感じに振る舞う。
緑谷くんは少し気まずそうな顔になってしまったけど大人しく私の後をついてきてくれた。
初めて自分からお友達を作ることが出来て舞い上がっていたけれど、やっぱりここでもクラスの人たちは『私』ではなく『
大丈夫。寂しくない。
今の私には轟くんという心強いお友達がいるし、まだ話せていないけれどクラスには
それだけで十分。寧ろ恵まれている。そう心に言い聞かせた。